今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

シンガポール外交に蜜月をもたらした安倍政権を、当時の記事で振り返る

うにうに @ シンガポールウォッチャーです。
安倍晋三首相が辞職します。2012年12月26日に第二次安倍内閣が発足し、このブログの開始が2012年9月です。安倍政権をシンガポールから見てきたブログでもあります。

安倍首相とリー・シェンロン首相は仲良し

リー・シェンロン首相は安倍首相退任に、コメントを出しました。


リー・シェンロン首相のFacebook投稿を全訳します。「ミスター安倍」と「安倍 san」を使い分けています。

健康事情で、日本の安倍晋三首相が公務から退くことを聞いて残念に思っています。
9年間に渡って、安倍氏 (Mr Abe) と私は緊密に働いてきました。彼のリーダーシップのもとで、我々の二国間関係は深まりました。最後に会ったのは昨年11月です。最近では、COVID-19でのASEANプラス3のバーチャルサミットでオンラインでお会いしています。
米国がもともとあったTPP協議を抜けた後に、CPTPP (環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定) をまとめる重要な役割を安倍氏 (Mr Abe) は果たしました。
治療によって、安倍さん (Abe-san) が回復されることを祈っております。
(2019年、大阪でのG20サミットの写真)

安倍首相(65歳)とリー・シェンロン首相(68歳)は仲良しです。近年はそうでもないのですが、2014年前後はかなり頻繁に会っていました。
「年も近いし、政治家家系同士で境遇が近いから話があうんじゃ」が在野の憶測です。
リー・シェンロン首相は、2006年に北海道観光、2013年6月には富士山観光、2015年に再度の北海道観光、2016年に軽井沢観光をしています。いずれも公務渡航でのついでではなく、プライベートの休暇です。日本文化を評価するシンガポール人の一人です。
uniunichan.hatenablog.com
リー・シェンロン首相も、70歳を前に首相から退くことを宣言しています。一線から退いたお二人が、日本で鮨をつまむ姿が観察されれば、日本とシンガポールの関係を考えた時に、シンガポールウォッチャーとしては胸に迫るものがあります。実現を勝手に望んでいます。

シンガポールとの蜜月を築いた"外交の安倍"

振り返ってみると、2013年の安倍首相の靖国参拝はありましたが、それ以外では日本・シンガポールは外交の蜜月でした。シンガポールに住んでいて、日本人であることで肩身が狭い思いをしたことは、(太平洋戦争が理由のものはありますが)安倍政権を理由にしたものはありませんでした。
とりわけ、2015年、リー・クアンユー初代首相の国葬という近年のシンガポールで極めて重要だった行事に、国会期間中で国内一部から「無責任」と罵られたにもかかわらず、週末に日帰りで政府専用機で安倍首相は国葬に参加しました。在シンガポール日本人として、感謝しかありません。


国内での安倍政権の政策や不祥事対応には全く賛同していませんが、海外に住むことで恩恵を受けていたと思っています。

「安倍のリーダーシップで二国関係が花開いた」と評価した地元紙

シンガポールでの最有力紙ストレートタイムズ紙の東京特派員が書いた記事でも肯定的な評価になっています。『日本とシンガポールの結びつきは、安倍のリーダーシップで花開いた』という記事です。

  • 2016年にナザン元大統領の国葬で、安倍首相が国葬に個人で訪れた最初の外国人指導者だった。その時に、ナザン元大統領が日本語が堪能で、2009年に原爆生存者に会うために広島に訪れた最初の外国人代表だったと述べている。
  • 2015年に、リー・クアンユー国葬に訪れた。桐花大綬章をリー氏に授けた。
  • シンガポールとの国防での結びつきも近年強まった。日本最大のヘリコプター搭載型護衛艦いずもが入港した。

・ストレートタイムズ紙: Japan-Singapore ties bloomed under Abe's leadership
成果のみを強調して終わっているので、社交辞令にも読めますが。

安倍政権とシンガポールを時系列で振り返る

その安倍政権をブログ記事を通して、時系列で振り返ります。
興味があるものがあれば、つまみ食いで読んでみて下さい。

2013年

安倍晋三首相の靖国参拝

安倍晋三首相の靖国参拝に、シンガポール外務省は遺憾の意を出しています。これは、太平洋戦争で日本軍がシンガポールを占領し、華僑虐殺事件を起こしたことが背景にあります。

安倍晋三首相が靖国神社を訪れたことにシンガポールは遺憾の意を表明する。訪問は多くの苦痛を再開させ、地域の信頼を構築するのに助けにならない。
多くの異なる関係者が撮った一連のイベント・行動・対応行動で、地域の緊張は高まっている。
これを引き起こす靖国神社への訪問は、地域でのさらなる否定的な感情と対応行動を招く可能性がある。
抑制し、さらに緊張を高める行動を避け、相互信頼と理解の環境を構築することが、全ての関係者の利益になる。

2014年

シンガポールでのアジア安全保障会議に安倍首相が参加

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2014年はリー・シェンロン首相と安倍首相とで首相会談が4回も行われた。

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2015年

リー・クアンユー初代首相死去

安倍首相が東京のシンガポール大使館に弔問に訪れています。
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シンガポールで行われた国葬には、国会期間中のため日帰りの強行日程で、安倍首相が国葬に参列しています。

戦後70年 安倍首相談話を受け入れたシンガポール

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日本の積極的平和主義を歓迎したシンガポール

安倍首相とリー首相の首脳会談で、「公海における航行の自由,上空飛行の自由の重要性」をリー首相が指摘しています。これは一般的な発言に見えますが、そうでは無かったことが判明します。P-8哨戒機配備の理由として、「人道支援災害救助活動(HADR)と海事安全保障活動」をシンガポールと米国があげているからです。
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2016年

ナザン前大統領に安倍首相が弔問

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2018年

アンチ安倍の内田樹氏

"アンチ安倍"で名高い内田樹氏が、「(シンガポールは)安倍政権がめざす国のかたちそのもの」ととばっちりをくらわせて、シンガポールを敵視。
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日経に抗議したシンガポール政府と、フェイクニュース防止法

うにうに @ シンガポールウォッチャーです。
シンガポール政府が日経記事に抗議しました。
在東京シンガポール大使が、日経アジアンレビュー編集長と、日経社長に、シンガポール人Sudhir Thomas Vadakethが書いた記事「シンガポール選挙をゆるがすコロナウイルスと不平等」に、書簡を出しています。

7月1日に、ネットで記事は出版されました。総選挙投票が7月10日に行われ、7月11日に大使館が抗議書簡を送っています。抗議書簡が公開されたのは、7月16日です。
同日に、日経アジアンレビューでも、同内容の書簡が掲載されています。
・日経アジアンレビュー: Singapore disputes claims of poor pandemic handling
私が確認できる限りで、日経はこの書簡にコメントを出していません。また、記事の取り下げも行っていません。
抗議が公開され、日経アジアンレビューが公開するまでの5日間にやりとりがあったはずですが、裏で記事を取り下げなかったことは、メディアとして評価されるべきです。

日経とシンガポール政府の強い関係

日本のメディアで、シンガポール政府と最も強い関係を持っているのは日経です。
日経が東京で主催する「アジアの未来」へは例年シンガポールから首相級が登壇しています。歴代のシンガポール首相は全員が出たことがありますし、昨年は次期首相となるヘン・スイキット副首相が出ました。
また、初代首相「リー・クアンユー回顧録」の日本語版は日本経済新聞出版からです。

シンガポール政府が行うメディアへの抗議

シンガポール政府は、外資メディアにも抗議を行います。
今年5月にフォーリン・ポリシー誌に駐米大使が、昨年12月にはエコノミスト誌が駐英大使の抗議書簡を紙面に掲載しています。
・ブルームバーグ: 偽ニュース対策法POFMA、シンガポール外交官が広がる懸念に反論
過去には法的手段により、謝罪や賠償をさせたこともありました。具体例については、後述の付記を参照下さい。

フェイクニュース防止法 POFMA

国内では更に対応が厳しいです。
シンガポールには偽ニュース防止法POFMA (Protection from Online Falsehoods and Manipulation Act) が2019年に施行されました。今月に行われた選挙期間を含めて運用されています。
シンガポール政府はPOFMAを以下のように説明しています。

オンラインでのウソに対抗するPOFMAの主要な手段は、訂正命令だ。この命令は、オンラインのウソが削除されることを要求しない。より深刻なケースでは、コミュニケーション停止や無効命令が使われることもある。
この命令が発行されるのは、

  • 事実誤認の記述がインターネットを通じてシンガポールでコミュニケーションされていたか、いる場合。かつ
  • 命令を出すのが公益にかなうとき。

・POFMAオフィス: Protection from Online Falsehoods and Manipulation Act (POFMA)

POFMAの対象は事実です。批判や意見は、POFMAの対象外です。ただし、POFMAの範囲ではなくとも、誹謗中傷になると、従来からある名誉毀損の対象となります。
「公益を満たす」という基準があるため、適応は政府の判断になります。そのため、反政府からは、「与党関係者には適応されない」という不満があります。
公益を侵害するウソの記述があった場合に、政府は訂正命令を出します。訂正命令では、元の記述の削除は求めず、政府見解の追記を求めます。
深刻なケースでは、FacebookやTwitterなど投稿があったサービスプロバイダへの国内からのアクセス禁止命令になります。
公益を傷つけるために意図的にウソを使った場合には、刑務所を含む刑法犯になります。
・シンガポール政府: What happens if I post or share ‘fake news’?

「何がフェイクニュースか」を決めるのは、政府の閣僚です。POFMAの対象になると、裁判所に異議を訴えることができますが、事後的です。
・POFMAオフィス: Application to Minister: Variation, Cancellation or Suspension

なお、唯一議員を出す野党WPもPOFMA自体には賛成しています。反対しているのは何がフェークニュースかを決めるのは、政府でなくて裁判所であるべきという点です。

人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ (HRW) が反対声明を出していますが、HRW所属のフィル・ロバートソン氏はシンガポール政府の公聴会に呼ばれ、一度は承諾したのに「政府に利用されるから」と参加せず、ビデオ会議参加も断り、シンガポール国内で笑いものになって影響力を失いました。
・Channel News Asia: Singapore Government says Washington Post article on online falsehoods law is ‘perpetuating false allegations’

日経を含め外資メディアはPOFMA対象にはこれまでになっておらず、野党系メディアは「POFMAを避けるために外資メディアへの投稿が必要では」と論じるものも出ています。
・The Online Citizen: Do high level civil servants resort to writing letters to foreign publications because POFMA orders would not work?

言論の自由

"明るい北朝鮮"
世界報道自由度ランキング 158位のシンガポール

シンガポールの話になるとすぐ、
「シンガポールって、"明るい北朝鮮"なんでしょ」
とドヤ顔で言い出す人がいます。止めましょう。
しかも、当地でわざわざ「シンガポールは"Bright North Korea"と呼ばれていてぇ」と現地民に話し出す人がいます。迷惑なので、止めて下さい。
まず、「シンガポールは"明るい北朝鮮"と呼ばれている」と言い出す人がいますが、違います。呼んでいるのはあなた自身です。「呼ばれている」と"誰か"に責任転嫁をしないで下さい。"Bright North Korea"で検索してみましょう。日本発の記事しかでてきません。"明るい北朝鮮"は日本人が言い出した、日本人のみに通じる蔑称です。世界中で日本でしか通じません。シンガポールでは、日本通のシンガポール人しか"明るい北朝鮮"を知りませんし、知ってるシンガポール人は「またか」とうんざりしています。

シンガポールは、共産主義国と異なり、自由選挙で政権が決められます。今の政権・政治体制は選挙で国民の審判を受けています。過去において中国は、シンガポールの政治体制を真似できないかと研究していますが、共産党独裁が揺らぐ可能性がある自由選挙を受け入れられず断念したとされたとの証言は、割と広範に見つかります。
かくして、シンガポールは一党支配、中国は一党独裁です。

シンガポール政府の強権ぶりの一つに、「言論の自由がない」ということがよく言われます。
国境なき記者団の"世界報道自由ランキング"では158位です。なお、世界最下位は180位で北朝鮮、注目の中国は177位です。
・国境なき記者団: 世界報道自由ランキング
※私はこのランキング自体は謎扱いしています。評価方法、メソドロジーは公開はしていますが、「この国があの国より低い」「高い」に納得感がありません。確かに、シンガポールでは、メディアががんじがらめにされていますが、メディアへの民事訴訟はあっても投獄はなく、政府に都合が悪いニュースも報道され、ネット論壇は盛んです。同ランクの国よりはるかにマシに私には見えるのですが。

シンガポールは、西側諸国と比べると、言論の自由への制限が大きいのは確かです。集会やデモはスピーカーズコーナーに限定されます。テレビ局のメディアコープは政府系投資会社テマセクが所有し、新聞のSPH社は免許で縛られ、大統領を排出するなど政府と人事が近い。
その一方、国民は外資メディア・ネットニュースを閲覧可能で、情報統制による"洗脳"にはほど遠いです。特に近隣発展途上国の政府を見て「あぁはなりたくはない」という思いも強く、国民は主体的に与党PAPを選んでいます。

シンガポール政府が抗議した内容

記事の内容は、7月10日に行われた選挙についてです。記事中の4項目に抗議をしています。政府主張です。

  1. COVID-19の国内患者数に、シンガポール政府は抑止に努力をし、効果的な対策を行ってきた。
  2. 政府は社会的流動性の確保と、貧富の格差の是正につとめてきた。
  3. HDB公団が99年賃貸なのは、私営コンドミニアムでも同様。
  4. 生まれながらのシンガポール人が人口でマイノリティになっているというのは事実誤認だし、生まれながらの国民と帰化に線をひくのは疑問。

抗議内容をどう解釈するか

日経が掲載した「よくあるアンチPAP記事」

「生まれながらのシンガポール人が人口でマイノリティになっている」という指摘のみが事実誤認で、それ以外は意見の相違と理解しています。
つまり、政府視点で解釈すると、「事実誤認が含まれているのでPOFMAを適応にすることも可能だったが、(国内への影響力が限定される外資メディアでもあり)公益になるほどでもなかったので、適応しなかった」となります。
その一方で、「外資メディアを対象にすると何かと面倒だから、POFMAを適応しなかったんだろ」が野党系の見方です。

反政府サイドを含めて、かなりのシンガポール記事を私は読んでいますが、今回の記事に目新しいインサイト・事実はありませんでした。私の記事への感想は、
よくあるアンチPAP記事だな」
です。

COVID-19の感染者数

意見の相違です。

一部野党は、COVID-19対策を選挙の争点にしようとしましたが、争点化に失敗しました。感染は外国人寮に感染が封じ込められており、大半の国民には寮での感染対策は他人事の政府任せだからです。なにより、外国人はシンガポールの選挙権を持っていません。
uniunichan.hatenablog.com

シンガポール政府は各種対応をあげ、努力したと述べていますが、シンガポールがアジア各国のうちで大規模クラスタを発生させたのは事実です。人口単位の感染者で、シンガポールは世界17位につけています。
その一方で、感染しているのが若く働き盛りの寮居住者が99%に助けられ、人口単位の死亡者数は世界138位と圧倒的好成績です。(7月20日現在)
・Worldmeter: Coronavirus cases

44,000人の感染者は事実です。また、低い死亡率に最も貢献しているのは、感染した大多数は働き盛りの移民労働者で、高齢者が少数だった幸運があったからです。シンガポールの高い医療技術と対応(とりわけ、軽症者は隔離のみにとどめ、入院と分離)もあるのでしょうが、最大要因は感染者の年齢のはずです。
政治は結果です。結果を論じるべき時に、努力を述べるのは、ずらした回答です。

貧富の格差

意見の相違です。
結果ではなく、政府の努力に焦点をおいた政府主張になっているのは、「COVID感染者数」と同じロジックです。

また、Vadaketh氏は、貧富の格差の根拠としてジニ係数を使っています。「以前より改善されたが、ジニ係数がOECD諸国より今でも高い」と述べています。大使はジニ係数には触れずに、国内貧困層が過去5年で、富裕層より高い収入の伸び率を上げていることを指摘しています。
Vadaketh氏の主張は「以前より改善されたが、今でも貧困の差が先進国基準で大きい」なので、大使の主張とも矛盾しません。両者は互いに補強しあっています。

貧富の格差の是正には、シンガポールには存在しない相続税の導入が適切なはずですが、野党からもこの声はあまり聞きません。
シンガポールが国是としているメリトクラシー (能力主義) の観点でも、本人の成果でない遺産を引き継ぐ相続に税がないのは、逆行しているはずです。少なくとも、小学校入学のくじ引きにあたって「親が卒業生の優先枠」と「兄弟姉妹が在校生の場合の優先枠」での教育格差は速やかに撤廃すべきですが、この声も聞きません。
・シンガポール教育省 (MOE): Registration phases and key dates

HDB公団が99年賃貸

見解の相違です。

99年の賃借権であることは契約上明確で国民誰もが知っていた一方で、「HDBの価格は永久に上がり続ける」という"神話"に、2017年まで政府が釘をささなかったのも事実です。リー・クアンユー初代首相も「HDBの価値は決して下がらない」と、2011年でも発言していました。
・AsiaOne: MM: Your HDB home value will never drop
・YouTube: SPH Razor: MM: Your HDB home value will never drop

2015年に書いた私の記事でも、外国人から見た当時のHDB市場の異様な空気「99年たってもHDBから追い出されたり、価値がゼロになることはないよね」が伝わります。
uniunichan.hatenablog.com
2017年に「すべての古いHDBは、(SERSという制度で) 政府が買い取るわけではない」と当たり前のことを大臣が言うと、大騒ぎになりました。
・ストレートタイムズ紙: Don't assume all old HDB flats will become eligible for Sers, cautions Lawrence Wong

生まれながらのシンガポール人がマイノリティに

今回、唯一の事実誤認は「生まれながらのシンガポール人がマイノリティになっている」というものです。
ここには、ストレートタイムズ紙から引用します。

Vadaketh氏もタン氏も、シンガポール生まれの国民の具体的な数はふれていない。
(略)
ストレートタイムズ紙の質問に、Vadaketh氏は、シンガポールでシンガポール生まれの国民がマイノリティになったとの主張は、"The End of Identity"という2012年に発表した自著での概算によると主張した。
当時、自分に公式の数字を伝えることを拒絶した政府部門に、議論なく受け入れられた主張だったと言った。
「シンガポールだけでなく、世界的な多文化社会においては、外国生まれの人口は、移民と融合を評価する時に分析家が見るデータポイントだ」
Vadaketh氏 (42歳) は、「帰化でありマラヤ生まれの親を持つ息子として、シンガポールの調和と社会的包括性を促進しようとずっとしてきた」と付け加えた。
「タン大使が言うように、"外国人恐怖症や社会不和に火を注ごうなどと決してしてはいない」
・ストレートタイムズ紙: Singapore ambassador to Japan responds to Nikkei Asian Review opinion piece on Covid-19 outbreak and election

これは、シンガポール政府の"後出しジャンケン"です。
Vadaketh氏から政府は問い合わせを受けていますが、回答せずに、記事が出てから「事実誤認」と政府は主張しています。政府は「事実誤認」とは主張していますが、具体的な数や根拠を示さずに、単に「間違いだ」とだけ言っています。
似たようなことは、最近でもありました。政府系投資ファンドであるテマセクCEOの年収についてです。テマセクCEOは、リー・シェンロン首相の妻のホー・チン氏です。「ネットニュースTOCは、テマセクのホーチンCEO年収についてS$21億、約S$1億、年$9900万などと主張したが、全て嘘」と、POFMAを行使した際に政府は述べています。政府はテマセクの報酬を規定しておらず、報酬は法人と経営者の責任とだけ述べています。政府は、これまでに何度もテマセクCEOの報酬について問われていますが、これまで回答していません。
今回も、根拠を示さずに「間違い」とのみ述べています。

Vadaketh氏の計算方法は、帰化の数が過大に見えます。算出において、「1970年の国民の半数を帰化」との見積もりは過大に見えます。政府主張が正しいと私は判断しています。後述する付記を参照下さい。
特に、マラヤの1つの州だったシンガポールが、建国前後の時期にマラヤ他州から引っ越し手続きした人を「帰化」として、「新国民だ」と分類するのは実態に合わないでしょう。特に重国籍を許していないシンガポールで、国民・帰化の違いにこだわるのは、既得権益の主張でしかありません。
Vadaketh氏は、「生まれながらのシンガポール人と帰化の間に線を引いて」いると、政府が言うように、「生まれながらの国民がマイノリティになった」という言動は、「外国人嫌いと社会の分断に火を注」いでいます。

"帰化"を社会保障から外したシンガポール政府

では、シンガポール政府は帰化を国民と平等に扱っているのかと言うと、疑問がある政策があります。
シンガポール政府は、2014年予算で"パイオニア世代パッケージ"という高齢者への社会保障を作りました。45万人を対象にS$90億であり、1人あたり160万円(S$2万)という巨額なものです。みなさんは、日本政府から160万円もらった政策がありますか?ありませんね。
趣旨は「建国時の貢献に報いる」というものであり、86年以前から国民という基準を作り、その後の帰化した人は同じ高齢者でも対象外になりました。
・シンガポール政府: Pioneer Generation Package

2018年には、"ムルデカ世代パッケージ"を国家予算に組み込みます。50万人を対象にしたS$61億(約5千億円)で、一人あたり80万円(S$1万)にもなる、これまた巨額予算です。
ムルデカとは「独立」の意味。1950年代に生まれたシンガポール人を対象にした予算ですが、こちらも国籍取得制限に年度があり、1996年以前に国籍取得をしている必要がありました。逆に、1人あたり倍額予算を持っていた"パイオニア世代パッケージ"に漏れた帰化で、"メルデカ世代パッケージ"の対象になる人もいました。
シンガポールへの帰化を考えている人は、知っておくべき政策です。

在東京シンガポール大使館 の書簡の全訳

在東京シンガポール大使館 の書簡を全訳します。

2020年7月16日
この編集長への書簡は、日経アジアンレビューに対して2020年7月16日に公になった。
2020年7月11日
奥村茂三郎様
編集長
日経アジアンレビュー

奥村さん
7月1日にネットで発表された、Sudhir Thomas Vadakethによる記事"シンガポール選挙を揺るがすコロナウイルスと不平等の脅威"に言及します。

記事は、事実誤認と誤解を招く記述が含まれています。シンガポール政府が起こした"と認識されているパンデミック過失"が、4万4千人のCOVID-19感染者を生み出した。と記事は主張している。むしろ政府は、パンデミックの発生から、迅速、プラアクティブ、慎重に行動してきた。2人の閣僚を含む多省庁タスクフォースをたちあげ、国内で最初の患者が見つかる前ですら、感染発生を管理している。(編注: シンガポール最初の患者発見は1月23日。同日に多省庁タスクフォースが設立。)

現在までに、確認した感染者の大多数は、寮に住んでいる移民労働者だ。グループで人が集まっている環境では、感染の大きな可能性があることは避けられない。職場、家庭のような社会的な場所でも同じことを見ている。移民労働者寮や、飛行機やクルーズ船のような類似環境でも、COVID-19の重大な感染になりうることを、同様に見てきた。

移民労働者と広範囲なコミュニティの健康を保証するために、寮に住んでいる移民労働者への積極的で広範囲な検査をシンガポールは行ってきている。

感染者の発見と、移民労働者寮の体系的な点検に加えて、脆弱であるか、COVID-19にさらされるリスクが高いと思われるグループに、積極的な検査を行ってきた。例えば、建設、海洋
、プロセス(石油化学製造)セクターで仕事に戻った労働者に、定期的な検査を始めている。

このストラテジーの結果として、感染した労働者を特定し、隔離し、必要な医療治療を提供でき、大規模な市中感染をくい止め、死亡率を0.1%以下の極めて低い値にとどめている。感染者の大半は医学的に健康で、軽症か症状がない。それゆえに、発見した多数は、積極的な検査方針の反映で、正しく責任を持って行ったものである。

Vadakethは、過去20年間の"負の結果を軽視"しているが、経済成長を"やみくもに崇拝"と歪んだ絵を書いている。誰も取り残されない包括的な社会を追求しており、階層移動の成約を解決する継続的な努力を政府がしてきたことには、ふれていない。

過去数十年に渡り、広範囲な実質所得成長を維持することで、絶対的な社会的移動を守ってきた。2014年と2019年の間に、下位10%にあたる収入の世帯が、年に3.9%から4.5%の他階層より大きな実質成長を享受してきた。上位10%の収入層が、年2.5%とゆっくりな実質成長だったにもかかわらずだ。

国民に平等の機会を提供することを助け、生活環境を改善する機会を失わないように、様々な政策を政府は導入してきた。例えば、2016年に、シンガポール政府はKidSTARTを導入した。低所得で脆弱な家庭が、子どもを人生で良いスタートをきることができる支援のプログラムだ。低所得グループに、プレスクール(保育所/幼稚園)から高等教育への全域にわたって、教育支援金を増やしてきた。

正式な教育年次以外では、2015年に国民運動のスキルズフューチャーを導入した。国民が雇われるために、国民にスキル向上の機会を提供する。

職場にいる低所得シンガポール人への支援を強化を続けている。ワークフェア (Workfare) のような10億ドルプログラムを通して、高齢で低所得の労働者に企業が支払う給料に、40%もの上乗せを政府が提供している。段階給与モデル (Progressive Wage Model)は、労働者を向上することを助け、最低賃金では提供できない、明確で継続的な段階になっているスキル、より良い仕事や給料を作っている。

清掃員、警備員、庭師は、過去5年間で実質30%の賃金が上昇した。リタイア後に蓄えが十分でない人を対象にしたシルバーサポートは収入補助を提供し、2016年以降、この層にS$16億(11.5億米ドル)になっている。

公共住宅 (HDB) について、"突然の政策転換"をシンガポール政府が行ったと、Vadaketh は誤解を与える主張をしている。公共住宅は、独自のシステムで99年の賃借権で販売され、シンガポール居住者(国民/永住者)の80%以上が住み、約90%が所有権を持つ。

不動産の賃借が切れたときには、将来のシンガポール人が利益を受け、国土の再開発のために公共住宅は国に戻ることになると、シンガポール政府は常に広報してきた。公共住宅ばかりでなう、私営の賃借物件でも同じことが当てはまる。公共住宅を買う人は、インフラアップグレードへの気前がいい補助金ばかりでなく、住宅購入時にかなりの政府補助を受けている。

大きく補助金を受けている公営住宅に住んでいるオーナーは、99年賃借の条件で、手頃な価格の住居に住む恩恵を受けてきた。もし、住居に住むことを望まなければ、市場で売ることも収入のために賃貸に出すこともできる。公共住宅は多くのシンガポール人に手頃な価格で品質の高い住居を提供し、老後の収入を補うことができる価値を保存している。

移民のために「生まれながらのシンガポール人は、マイノリティに陥った」との主張をVadakethはしている。この主張は真実ではないし、生まれながらのシンガポール人と帰化の間に線を引こうとするVadakethの動機に疑問が生じる。外国人嫌いと社会の分断に火を注ぐ。結果として、多くのシンガポール人が大切にしている価値ある社会調和に逆行している。

日経は、自社の高い基準でプロフェッショナルな報道を維持し、偏った誤解がある特定個人の意見を今後は避けることを、私は希望する。

敬具
Peter TAN Hai Chuan
大使
在東京シンガポール大使館
Cc 岡田直敏様
日経 代表取締役社長
・在東京シンガポール大使館: Letter from Ambassador Peter Tan to Editor-in-Chief of Nikkei Asian Review

日経記事を書いた筆者の見解

日経記事を書いたVadaketh氏が見解を出しています。こちらにも全訳を付けます。

在日本シンガポール大使のぺーター・タンが、日経アジアンレビュー (NAR) で私が出した選挙記事に応えて書簡を出した。
彼の書簡で、パンデミックに対応するために与党PAPが成し遂げた物事のいくつかに言及した。いいね。全員が知るべきことだよ。
しかしながら、私が記事を書いた私の動機について、書簡でペーターは疑問を投げかけている。他にも色々述べている中で、シンガポールで「外国人嫌いと社会的不和に火を注ぐ」企てをしていると、ペーターが述べている。
ありがとう、ストレートタイムズ紙。私の意見を掲載してくれて。「帰化でマラヤ時代生まれの息子として、シンガポールの調和と社会包括性を促進しようと私の仕事では長期間してきた」という内容を含む。
私の仕事を見てきたシンガポール人と他の人達は、私の元の記事を読むことができるし、以下にリンクを貼る。ペーターが私に関して言っていることが真実かどうかをご自身で決めて欲しい。
自分なりの判断を下して欲しい。
私のオリジナルのNAR記事:
https://asia.nikkei.com/Opinion/Coronavirus-and-inequality-threaten-to-unsettle-Singapore-election
追記。引退と現職の外務省職員は、ペーター自身の言葉ではないと私に言った。私はその可能性はあるとは思うが、私ができる唯一公正な回答はペーターへのものだ。誰が書いたかについて私が憶測することはフェアではない。
・FacebooK: Sudhir Thomas Vadaketh

補足

シンガポール政府が海外メディアに行った主要な抗議
  • 2002年に、朝日新聞シンガポール支局が、シンガポール首相府から抗議を受けたと、当時の記者が明らかにしています。記事中に明記はないですが、この筆者は2001年に朝日新聞シンガポール支局長だった野嶋剛氏と認識しています。

長男の現首相シェンロン氏が副首相に就き、同氏の妻がテマセクという政府系投資会社の執行役員になった。そこで朝日新聞の特派員だった私は、「縁故主義」批判が広がっている、という記事を書いた。

・AERA: 「愚民観」で国を統治 豊かなシンガポールの闇

  • 2002年にブルームバーグ誌は、ゴー・チョクトン シンガポール首相、リー・シェンロン 副首相、リー・クアンユー 上級閣僚に謝罪し、金額非公開の損害賠償を支払った。8月4日の記事で、苦痛と当惑を招いたとした。記事は、テマセク・ホールディングスへのホー・チン氏のエグゼクティブ・ダイレクターへの就任に関したもの。「就任は功績ではなく、リー家への利益を呼ぶ腐敗した動機にからなされた」と就任を意味していた。謝罪では「主張は間違いで、根拠が完全になかったと認める」となっている。

・ニューヨーク・タイムズ: Bloomberg News Apologizes To Top Singapore Officials

  • インターナショナル・ヘラルド・トリビューン誌の論説(op-ed)で、Philip Bowringはリー・シェンロン首相が地位を手に入れたのは父親の縁故主義によるものだと意味する記事をもう書かないと、1994年に同意した。それにもかかわらず、2010年2月15日の記事で、Bowringはアジアの政治王朝のリストに2人をいれた。若いリー氏は業績によって地位を手に入れたのではないと読者に理解させた。この推測は意図したものではないと明確に述べたい。リー・シェンロン首相、リー・クアンユー顧問相、ゴー・チョクトン前首相に、記事が引き起こした不履行がもたらした苦悩と困惑にニューヨーク・タイムズ社は謝罪した。

・ニューヨーク・タイムズ: Apology

  • 2004年に、エコノミスト誌がリー・シェンロンシンガポール首相に謝罪した。金額未公開の損害賠償を首相とその父親のリー・クアン・ユー氏に支払うことで合意している。首相の妻のホー・チン氏が代表を務めるテマセク・ホールディングの記事が対象。「主張は誤りで、根拠を完全に欠いていた」と謝罪でエコノミスト誌は書いた。

・THE IRISH TIMES: 'Economist' apologies to Singapore PM

  • 2007年9月29日に、「容認できる代表を身につけようとしている国営ファンド」との記事をファイナンシャル・タイムズは公表した。記事が意図していたのは、リー・クアンユー顧問相がリー・シェンロン氏を首相にしたのは縁故主義が動機、リー・シェンロン首相が妻のホー・チン氏をテマセクホールディングのCEOにしたのは縁故主義が動機、DBS銀行に義弟のりー・シェンヤン氏が就任したのを助けたのは縁故主義が動機。これらの主張は間違いで、根拠が完全にないことを認める。リー・シェンロン首相、リー・クアンユー顧問相、ホー・チン氏に苦痛と困惑に謝罪する。同種の主張を今後しないことを約束する。リー・シェンロン首相、リー・クアンユー顧問相、ホー・チン氏に補償として損害賠償と、この件で生じたコストを支払う。

・フィナンシャル・タイムズ: Apology

Vadaketh氏の帰化計算方法への疑義

Vadaketh氏の帰化した人の計算では、帰化の数が過大に見えます。算出において、「1970年の国民の半数を帰化」との見積もりが過大です。
シンガポール国民というものが初めてできたのが、1957年に自治権をシンガポールが獲得したときです。英国籍はシンガポールに2年在住で、それ以外はシンガポールに10年在住で、シンガポール国籍を得ました。
人口ではなく、国民の数が初めてシンガポール統計にあらわれるのが、1970年の187万人です。
・シンガポール政府統計局: Population and Population Structure

  • 1957年の人口は145万人、国民人口は不明。
  • 1970年の人口は207万人、国民人口は187万人。つまり、1970年の外国人比率は10%。

1958年から1970年の自然増は、多産の時代であり、64万人。145万人(1957年人口) + 64万人(自然増) = 209万人 (死亡者数と帰化数は不明) と、1970年の人口207万により多い。人口増の大半は自然増で、帰化の人数は限定的と思われる。
そのため、1970年の国民の半数(94万人)を帰化とみなすのは数が多すぎる。10%を帰化とすると19万人。Vadaketh氏は2011年の帰化の合計を86万人と計算しているが、1970年の人口の10%を帰化とすると、Vadaketh氏の計算式でも49万人で、生まれながらの国民は53%になります。
・Musings from Singapore: What percentage of Singapore’s total population was born in Singapore?

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チョンバルにあるリー・クアンユー記念植樹

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2020年シンガポール総選挙: 与党敗北は有権者の世代交代が原因。PAP支持高齢者の死亡と、若者のPAP離れ

うにうに @ シンガポールウォッチャー です。
シンガポールで総選挙が2020年7月10日に行われました。本記事では選挙結果の分析を行います。
シンガポール選挙制度の特徴については、前回記事を参照下さい。
uniunichan.hatenablog.com

9割の議席をとった与党PAPの"敗北"

長文なので、最初に私の結論を書きます。

  • PAPは、前回選挙より5万2千票、減らした。
  • PAPは、高齢者の死亡で推定6万2千票を失った。
  • 約22万人の若者が新しく選挙権を得た。彼らは野党の支持母体だ。

投票が義務の国であり、投票率は95.63%でした。
与党PAPが、93議席中83議席を獲得。野党からはWPのみが議席を3選挙区で獲得し、10議席となりました。
与党が89%の議席を獲得したにもかかわらず、得票率が61.24%にとどまり、野党が初めてグループ選挙区の2つで勝利したことから、実質的には与党敗北と受け止められています。
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選挙後のリー・シェンロン首相の会見です。徹夜明けだとしても、雰囲気がお葬式になってます。疲れを隠せないとはまさにこのこと。
www.youtube.com
それに引き換え、センカン選挙区で初の当選を果たした野党WPジェームス・リム氏の会見では、同じ徹夜明けのはずですが、指を鳴らして喜びが爆発しています。首相68歳、野党43歳の年齢差もあるのでしょうが。

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Jamus Lim

・YouTube: CNA: GE2020: WP's He Ting Ru, Raeesah Khan, Jamus Lim thank supporters after winning Sengkang GRC

「与党敗北となった原因の政策はコレだ!」という記事が各種出てきています。
シンガポールでは、選挙期間中の世論調査、選挙中の出口調査は法律で禁止されています。それに加えて、普段から、シンガポールは政権支持・支持政党・政策支持への調査が一般的な国ではありません。そのため、「コロナ対策」「リー家の兄弟喧嘩」など、自分の関心をぬいてきた政策で「コレだ」ともっともらしいシナリオを書くことができます。
今回のように、政策に明確な争点がないが、選挙結果が動いた選挙では、複合要因を想定するのが妥当でしょう。「どの政策が選挙に影響を与えたか」の定量的な調査では、シンガポール国立大学の政策機関iPSの世論調査の発表を待つ必要があります。

シンガポール選挙の最大争点は常に「与党PAPへの信任」

今回の敗北で、与党PAPは頭を抱えているはずです。理由は、単に敗北したからではなく、

  • 大きな失策や、国民の不満がないのに、得票率が落ちた

からです。

2011年総選挙は、与党PAPにとり歴史的敗北と評価されています。得票率が最低の60.1%に落ち込み、野党はグループ選挙区GRCで初めて勝利しました。2011年選挙の敗北原因は明らかです。"移民入れすぎ問題"に国民が怒ったからです。政府は、高齢化社会への対応と、経済政策のため、よかれと思って移民を増やしました。2005年には、118万人だった外国人(永住者 + 長期在住外国人)が、2011年には192万に急増。年率8%です。国民との仕事の奪い合い、国民比率の低下と"新国民"増加での希薄化への危機感、鉄道バスなどインフラへの圧迫から、反外国人感情が高まったのです。選挙での敗北によって、政府は移民を抑制。2019年では168万人と、2011年からは年率3%の増にとどまっています。
・シンガポール政府統計局: Population and Population Structure

「与党敗北はCOVIDのせい」という記事は捨てよう

特に日本語のネットでは「選挙の争点はコロナ対策だ」や「与党敗北は移民労働者対応の失敗のせいだ」と主張する記事があります。捨てましょう。明確な争点は複合要因だとしても、COVIDは民意と明らかにずれていて、エビデンスやロジック無しに自分で理由と結論をでっち上げた"個人の感想"にすぎません。
移民労働者寮で感染爆発が起きましたが、国民は「あの寮費(月額2万円前後)だと密な環境になるのはしょうがない」程度の他人事です。密を避けるための寮環境の改善にしても、「稼ぎの成約があるから大変だろうね」と他人事、政府任せです。市中感染は食い止められているので、政府への不満にまではなりません。なにより、外国人である移民労働者には選挙権はありません。

各国比でのCOVIDへの国民からの政府評価があります。シンガポールは23カ国中8位とまずまずです。寮で感染爆発が起きたにもかかわらずまずまずです。
・BLACKBOX: A Global Public Opinion Survery Across 23 Counries

強いてCOVIDが投票に与えた影響だと、「行動制限中の投票の消毒や手袋の安全基準で、投票所に入る列に長時間並ばされて、この時期に選挙をゴリ押したPAPハラタツ」ぐらいでしょう。

前回選挙からのシンガポールでの出来事

前回総選挙から、これまでの大きなイベントです。
政府が国民から致命的に反発された出来事がありますか?ありませんね。

  • 消費税GST増税: 嫌だけど、高齢化社会対応に必要なのは理解する。
  • 偽ニュース防止法POFMA: 国民は自分が処罰対象になることはないと思っている。
  • 大統領の無投票当選: マレー系大統領が歴代いないのは事実だし、大統領に実権はないとしても、無投票当選かよ。
  • COVID-19: 感染拡大は外国人寮が中心。市中感染はくい止められているので他人事。政府の問題。

政府満足度指数 (ブラックボック社): 政府に満足のシンガポール人

シンガポールで数少ない世論調査をしており、結果を開示しているのが、BlackBox社。毎月、データをとって開示しています。
開示されている中で最も古い2017年7月と、最新の2020年5月とを比べました。
21項目のうち、満足度が低下したのはわずかに2つ、同率が2つ、残り17は満足度上昇です。
低下したのも、以前が96%と大満足だった犯罪と、94%とこれまた大満足だった環境が、高すぎてそれぞれ1%下がっただけです。ブレでしょう。
COVIDで注目されている健康も、7%満足上昇しています。

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BlackBox: Government Satisfaction Index

・BlackBox: Government Satisfaction Index

それでも与党が負けた理由は何なのか

「パンとバターを超えて」

大きな失策がなく、政府に満足しているのに、与党が得表率を落とした理由になるのは、

  • (成果はともかく)与党の"やり方"が気に入らない
  • 与党が時代についていけなくなっている

です。これだけ成果を出した与党が負けるのですから、「シンガポール人はどれだけ要求が高いんだ」というか「高度な経済や社会制度は当然あるもので、それに加えて何かを求めている」ということです。
選挙が終わった翌日辺りから「パンとバター以上のもの」(金だけじゃねぇんだよ!)という論評が増えてきました。
「与党PAPは『生活と仕事を守る(saving lives and jobs)』という選挙スローガンで経済政策と実績を訴えたが、(有権者はそんなものは当然で)それ以外のものを求めていた」
ということです。それ以外とは、社会正義であり、国会での多様な意見であり、個人に介入しまくる家父長主義への嫌悪でしょう。また貧富の格差も、悪化はなくても改善は見られません。政府満足度指数の低法科項目の中で、改善がほぼ唯一みられない項目です。
東南アジアで貧乏を経験して経済成長を成し遂げたリー・クアンユー世代と、生まれたときには豊かさがあった現代の若者の違いです。

郵便受けに入っていたPAP豪華冊子

・Channel News Asia: GE2020: Opposition vote swing shows people are looking beyond bread and butter issues, analysts say
・Straits Times: GE2020: Stern political realities call for shift in PAP governance

次世代リーダー4Gに国民からの信任はあるのか

国民からの支持が厚いリー・シェンロン首相は、70歳になるまでに首相から退くと明言しています。
今回の選挙がこれまでと違うのが「次期首相となるヘン・スイキット氏への世代交代となる選挙」だったということです。問題は、(これまでの首相選定でもそうですが) 首相選定が与党PAPの内部で行われ、国民の支持が最も高いと言われているTharman Shanmugaratnam氏が「リー・シェンロン氏から5歳しか若返られないこと」「マイノリティのインド系が首相はまだ早いのでは」と外されたことです。そして、ヘン・スイキット副首相の首相就任に、国民は納得感があるように見えません。後述しますが、今回のヘン副首相の選挙区は、落下傘候補ではあった不利は差し引くべきですが、53%の得票率に終わりました。
これを真に受けると「次期首相の選出のやり直し」となり悲惨です。政治のリーダーシップが重要で、過去の首相は10年以上その地位に就き安定政権運営をしてきたシンガポールでは、国難レベルの出来事になります。

与党の敗北は「高齢化した支持者の死亡と、若者を取り込めていない」ことだ

政策争点についてはiPS調査を待ちたいと思うのですが、選挙結果にはあまり影響はないでしょう。体制面について、現時点で指摘できることがあります。それは、

  • 与党PAPの強烈な支持母体である高齢者が死亡
  • 与党PAPは、選挙権を手に入れた若者を取り込めていない

ということです。このことは、

  • 次回以降の選挙で、与党PAPは更に苦戦する

ことを意味します。2015年選挙のような、リー・クアンユー初代首相の弔い合戦のような神風でも吹かない限り、勝利はないでしょう。
大卒で、若く、都心部在住の若者は、リベラル政党支持です。これは世界的に共通してみられる現象で、シンガポールにも当てはまります。(シンガポールは都市国家なので、全員が都心在住ですが)
与党が大勝した2015年でさえ、39歳以下にいる保守は、65歳以上の半分の比率に過ぎません。そして、39歳以下の多元主義 (Pluralist。つまり野党の支持母体)は、65歳以上の2.5倍も率が高いです。

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iPS: Cluster Analysis (Age)

・シンガポール国立大学: 政策機関iPS: IPS Post-Election Survey 2015: Cluster Analysis (Age)

シンガポールの選挙の特徴の一つは、高い投票率です。今回の選挙では海外渡航制限があったので、更に投票率が上がっていますが、例年9割超です。日本では、若者が投票に行かないことが問題になっていますが、シンガポールではその問題は無視できます。
PAPは2020年の選挙で、2015年比で5万2千の票を失いました。これにはPAPの支持母体である高齢者の死亡を主要因にあげることができます。
2015年から2019年の間の、国民と永住者の死者合計は97,642人。永住者は15%なので、それを引くと、約8万3千人。(永住者の方が年齢層が若いはずなので、死亡率は国民より低いのが実態のはずですが)
過去の選挙でのPRP得票率は、68年87%、72年70%、76年74%、80年78%です。前回選挙以降に亡くなった人のPAP支持率を75%とすると、約6万2千の票を失ったことになります。

2011年 2015年 2020年
投票率 93.18% 93.56% 95.63%
PAP得票数 1,212,154 1,576,784 1,524,781
国民人口 3,257,228 3,375,023 3,500,940
(2019年)


2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
国民永住者の死者数 18,640 18,856 19,763 20,095 20,288
新国民(帰化) 20,815 22,102 22,076 22,550 (未開示)

・シンガポール首相府: Population In Brief

実は大きくない"新国民"の選挙への影響

他の人口動態もあります。
帰化した"新国民"です。前回選挙から約11万人が帰化したと想定されます。彼らは帰化を認めた与党PAPに恩義を感じ、与党PAPに投票していると言われています。ところが、実際にはそうではありません。
前述のiPS調査では、2015年総選挙では、保守への支持率は、生まれながらの国民より帰化はわずかに8%ほど高い程度です。2011年総選挙では、逆に帰化の方が12%も低くなっています。

理由は簡単です。シンガポールの帰化は永住権を経てなります。シンガポールの永住権は現在ではプラチナチケット。永住権の基準は、単なる在住年数より、収入・学歴です。永住者は国民より給与が高く高学歴です。つまり、帰化の母体は、リベラルの支持層です。確かに、与党PAPへの共感があるから帰化したのでしょうが、それを加味しても「国民より相対的にPAP支持なだけで、圧倒的支持ではない」が現実です。
uniunichan.hatenablog.com

保守への支持率 2011年総選挙 2015年総選挙
生まれながらの国民 36.1% 44.1%
帰化(新国民) 24.8% 52.4%

・シンガポール国立大学: 政策機関iPS: IPS Post-Election Survey 2015: Cluster Analysis (Naturalised citizens)

PAPを支持しない若者

シンガポールの投票権は21歳以上です。現在の20~24歳の国民人口は、約23万人です。iPS調査結果によると、(残念ながら世代での与党・野党の投票先は開示されていないのですが、) 率で最大の野党支持の世代が彼らです。選挙に新規参入する若者が、今の選挙結果を動かしているというのが結論です。
・シンガポール国立大学: 政策機関iPS: IPS Post-Election Survey 2015: Cluster Analysis (Age)

まとめます。

  • PAPは、前回選挙より5万2千票、減らした。
  • PAPは、高齢者の死亡で推定6万2千票を失った。
  • 約22万人の若者が新しく選挙権を得た。彼らは野党の支持母体だ。

PAPは若者からの支持を得ないと未来はない政治団体だ、というのが分かります。若者を取り込むためには、リー・クアンユー時代に培った家父長主義なレガシーや成功体験を、PAPは捨て去る必要があるでしょう。それがPAPの核心だったとしてもです。
それができなければ、「6割の得票率で、9割の議席を得る」ことがいつまで正当化されるかの議論になる日は遠くないでしょう。また、人口動態が原因なら、野党が肉薄・逆転するのは、時間の問題です。

同時に、PAP並の経済実効性を、野党が出すことは極めて困難なはずです。特に若者の野党支持は、野党が「PAP並の経済政策を出せる」ことを無言の前提にしています。野党もそこを試される日がそのうちくるはずで、有効な経済政策を打ち出せなかった時にどう支持層が評価するかが、野党の勝負どころです。

選挙イベント

選挙に関して起きたイベントを振り返ります。

リー・シェンヤン氏野党入党

リー・シェンロン首相の弟のシェンヤン氏が野党PSPに入党しましたが、立候補はせずに終了となりました。父親のリー・クアンユー氏の住居の取り壊しを巡って、兄弟喧嘩が表面化しています。
弁護士の妻は遺言書をめぐって、懲戒特別法廷にかけられています。
ハーバード大学経済学助教授の息子のShengwu氏は法廷侮辱罪で罰金判決を受けました。
シンガポールは、何十年も法律は適応されていませんが、男性間同性愛が刑法犯になります。息子のHuanwu氏は南アフリカで同性結婚をしています。

与党PAPのアイバン・リム氏。立候補表明した途端、周囲の人間から非難轟々で出馬取り下げ

与党PAPのアイバン・リム氏。立候補を表明した途端、彼の全時代(学校・徴兵NS・職場)の周囲の人のみでなく、近所からも「あんな自己中心的で傲慢なやつが国会議員なんて、止めてくれ!」と非難殺到。反論をしましたが、ネット請願も始まり、出馬取りやめに。
PAPの候補者選定プロセスが疑われることにもなりました。
・VULCAN POST: GE 2020: How The Ivan Lim Scandal Sparked A "Trial By Internet"

ニコル・シアー氏、政界に復活
次期首相の"イーストコーストプラン"

選挙前に最も期待された政治家は、ニコル・シアー氏のWPからの出馬です。
2011年に大旋風を巻き起こした女性ですが、落選。2015年は出馬せずでした。

そのニコル・シアーが出馬したイースト・コーストの対抗馬として、次期首相となるヘン・スイキット副首相を土壇場で国替え出馬させる選挙戦術に、与党PAPはでます。
「ヘン・スイキット」の手書きでの立候補届が「ニコル・シアーに絶対に勝たせない」という生々しさを物語ります。戦慄です…


出馬後の会見は、イーストコーストGRCへの立候補準備が全くできていないのが露呈。

For our East Coast residents, we also have a plan for the East Coast. We have a East Coast, Singapore, we have a together and East Coast plan. We care at East Coast"
www.youtube.com

という名演説でシンガポールを爆笑に導きました。


"イーストコーストプラン"は伝説になり、タイやマレーシア政府からも「うちの国の"イーストコーストプラン"に観光においでよ」とネタにされる始末。
Malaysia and Thailand tourism bodies get cheeky with 'East Coast plan'

今回の選挙運動ではニコル・シアー氏は(2011年と異なり)ほぼ話題になりませんでしたが、結果は53%でヘン・スイキット副首相が辛勝。ニコル・シアー氏はそれぐらい強敵でした。
次期首相落下傘の選挙戦術がなければ、PAPはグループ選挙区GRCをイーストコーストGRCでも落としていたでしょう。

野党勝利の立役者、ジェームス・リム氏

今回の選挙で最も評価を上げたのは、私の記事の冒頭で指を鳴らした野党WPのジェームス・リム氏です。
7月1日にテレビ放送された多党討論会では、WP代表としてPAPの現役大臣相手に、冷静かつ建設的に互角の討論を行い評価をあげました。野党には辛辣なことが多いストレートタイムズ紙も「スター」と評価しています。
www.youtube.com
出馬したセンカンGRCで、初の当選を果たします。
センカンは、新しい選挙区です。60%以上が45歳未満と、人口動態から野党支持が強いと推測されていました。
・日本経済新聞: 中野貴司氏: シンガポール、社会の変化映す野党「エリート」候補

WP候補者が人種宗教差別発言

これは、野党のとんでも主張と違って、投票に影響を与えた可能性がある事件です。
野党WPのジェームス・リム氏と同じ選挙区で出馬した、ライザ・カーン氏の過去のSNS投稿が掘り起こされました。

  • 40億円を着服した教会リーダーは無罪なのに、シンガポールはマイノリティを刑務所にいれ、イスラム教リーダーに嫌がらせをする。
  • ブラウンウーマンなことはタフだ
  • (COVID下に集団で飲んでいた事件で)「金持ち中華系と白人に法の適応は違うのか」

・VulcanPost: GE 2020: How 298A Of S'pore's Penal Code Failed Raeesah Khan

シンガポールで、人種・宗教へのヘイト発言は刑事事件です。警察に通報がされ、警察は調査中と発表します。ライザ・カーン氏は謝罪し、WP書記長は「選挙後に調査する。選挙活動は続ける」と発表。これにPAPは「立ち場をはっきりさせろ」と声明を発表。
警察対応は政府の嫌がらせと判断した、野党支持者は激怒。#IstandwithRaeesah のハッシュタグで支援を表明します。

反政府への行政圧力は、シンガポールでは頻繁に見受けられます。
AHPETC (アルジュニード・ホーガン・ポンゴル・イースト・タウンカウンシル) という、野党WP選出区のため野党が管理している町議会で不正会計疑惑が起こり、2017年に野党幹部が起訴されました。2018年には弁護士費用を払うために、野党は寄付を呼びかけ、S$100万を集めています。
2015年の総選挙前から、マスコミなどでこの疑惑が追求されてきましたが、野党は同地区での議席を守りました。つまり、行政圧力で有権者の投票行動は変わらない時代にシンガポールは突入しています。
今回、ライザ・カーン氏に「調査中」とした警察によって、同じ過ちを踏んだと野党支持者は考えています。肝心なのは、これに正面から反発するコアな野党支持者以外に、この反発への共感が一般市民にどこまで広まったかですが、それは不明です。

「人口ターゲット1千万人」と野党がとんでも主張

議席を持たない野党SDP党首が、「政府はシンガポールの人口を1千万人にする計画がある」と7月1日のテレビ放送での多党討論会で主張。同席したPAP大臣が即座に否定。
政府は、偽ニュース防止法POFMAを発動しました。
・シンガポール政府: Correction and clarifications regarding falsehoods on population target and HDB CEO’s remarks on living density
・POFMAオフィス: Alternate Authority for the Minister for National Development Instructs POFMA Office to Issue Correction Directions and Targeted Correction Direction
選挙だと、とんでも野党に対応せざるを得ない政府、おつかれ。

野党候補者が「移民労働者のCOVID診察を政府が妨げた」と発言、政府に即切りされる

・1. COVID検査に外国人労働者を連れてくると、就労ビザ雇用を取り消すと、MOMは文書を出した。
・2. 労働者の検査をMOMは積極的に断念させた。
と、野党候補者が、討論会で主張。報道した政府系テレビ局CNAなどが訂正勧告を受けました。

下記が政府の説明。
・背景: 2月8日に、とある建設業企業が全従業員をチャンギジェネラルホスピタルの救急外来に送り込んだ。症状がないにもかかわらずだ。企業は非感染と就労可能とのメモを求めた。2月12日に、MOHとMOMと他省庁は、不健康でなければ寮居住の労働者が働くのを止める必要はないと建設業に勧告
・MOM文書では「緊急でなければ、一般医GPに最初にかかれ」だった。
・MOM文書では「緊急時のみ、緊急医療を使え」だった。
・シンガポール政府: Clarification regarding falsehood published by the National University of Singapore Society (NUSS), The Online Citizen Asia (TOC), CNA and New Naratif on MOM’s advisory on testing of migrant workers

選挙だと、とんでも野党に対応せざるを得ない政府、おつかれ。

あわせて読みたい

過去のシンガポール選挙の参考記事
uniunichan.hatenablog.com
uniunichan.hatenablog.com

付録

前回選挙からの主な出来事

2016年 ・ブキバト補欠選挙で61.2%を獲得し与党勝利。
・ヘン・スイキット財務相が脳梗塞で閣議中に倒れ、6週間入院。
・ジカウイルス発生。
・スピーカーズコーナーでの外国資本スポンサーが許可制になる。
・MRT車両にヒビが見つかり、修理のため中国に輸送される。
・クアラルンプールまでの高速鉄道計画が発表。
・オリンピックで初の金メダル。
・リー首相がナショナルディラリーの演説中に具合を悪くする。
・ナザン元大統領死去。大統領選挙規定の変更が国会で可決され、立候補要件がS$5億の資本金でかつ最上位の役職経験者に変更され、次期の優先立候補はマレー系になる。
・装甲車9台が香港で取り押さえられる。
2017年 再雇用が65歳から67歳までに引き上げられる。
・MRT大規模メンテナンス終了。
・旧フォード工場博物館から昭南島の名前が削除される。
・粉ミルクの価格高騰が国会であげられる。
・リー・クアンユー邸での兄弟紛争が明らかになる。
・政府批判を含む漫画でソニー・リュー氏がアイズナー賞受賞。
・タイガーエアーがスクートと統合。
・アマゾンのサービス開始。
・シンガポール国立大学教授が、外国のために働き国の外交方針に影響を与えたとして、内務省により生涯国外追放となる。
・2022年までに4万人のプレスクール定員拡大計画。
・第8代大統領が無投票当選で決まる。初の女性でマレー系。
・政府LTAがシェア自転車企業と放置自転車の取り組みにサインする。
・チャンギ空港ターミナル4が稼働開始。
2018年 ・消費税GSTの7%から9%への増税を政府が発表。
・UBERが撤退し、Grabが買い取る。
・米韓首脳会議がシンガポールで開催。
・シェア自転車のoBikeが営業終了。
・150万人のSingHealth患者データがサイバーアタックで盗まれる。
・ムルデカ世代に医療口座への積み増しなど補助。
・EUとのFTAに署名。
・シンガポールでASEAN開催。
・雇用法が改正され、月給$4500までをカバーすることに。
ヘン・スイキット財務相がPAP第1書記長補に。事実上の次期首相の内定。
・セレター空港に導入されたISL利用にマレーシアが反発し、紛争に。
2019年 ・アナログ波テレビが終了。
・MRTクロスアイランド線の駅の計画が公開。
・HIV患者14,200人のデータが違法に漏れる。
・UNESCOにホーカー文化を世界遺産申請する。
偽ニュース防止法POFMAが可決。
・MBSとリゾートワールドセントーサの拡大が発表される。カジノ入場税が$100から$150に、年では$2000から$3000に値上げ。
・刑法改正:弱者保護、性犯罪被害者保護、レイプでの婚姻免責破棄、自殺が刑法犯でなくなる。
・リタイアは65歳、再雇用は70歳に2030年までに引き上げられる。
・国立感染症センターNCIDが開業。
・eスクーターの歩道利用が禁止。フードデリバリーが抗議。
・偽ニュース防止法POFMAで初の訂正命令。
2020年 保健省MOHが武漢からチャンギ空港到着の乗客に体温測定を実施。
・MRTトムソンイーストコーストの第一区間が開業。
・サーキットブレーカーというロックダウン開始。
・総選挙

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