今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

シンガポール インター校の進学実績: 米国カリフォルニア大学

アメスクとUWCの高校学費が年500万円になりました。うにうに @ シンガポールウォッチャーです。

2015年に「UWCに小中高と入れたら学費で4,400万円するよ。頑張ろう!」という記事を書きました。
uniunichan.hatenablog.com
そこから8年。(日本を除くw) 先進国の急激な学費インフレにシンガポールのインターナショナル校も巻き込まれ、しかも円安が猛威を振るっています。
今では、シンガポールアメリカンスクール(SAS)とUWCは、最も学費が高い高校だと1年500万円もするようになりました。日本の平均世帯所得とほぼ同額です。
SASだと、小学生がG5までで年$44,000、中学(G6-G8)が$47,000、高校(G9-G12)が$49,000です。他に諸経費もありますが、小学校から高校卒業まで通うと、ざっと$510,000(5,200万円)です。8年間で800万円上昇しています。日本の中間層の一般的な住宅より高額ですが、住宅はふつう世帯に一つですが、学費なので子どもの数に応じて正比例します。

高額なインター校は学費に見合うのか?

シンガポールのインター校は、高額な学費に見合った成果があるかどうかです。成果の予測は困難です。というのは、
「学校の進路開示が不十分」
なためです。無事に「SASやUWCなどのシンガポールのインター校に入学できた」としても、進学する目的に見合った成果を得られるかは、その方次第の賭けということです。成果には、「(日本国内でなら)英語コンプレックスをもたずに済む」という環境からくるふわっとしたものや、「クラスメイトの家庭環境に一定以上を期待する」という高額な学費からの足切り効果なら予測可能かもしれませんが、「卒業後はX大学ランクに進学」や「将来、米国の大学に進学して、米国で就労し、テック企業でプロダクトマネージャーになる」という具体的な希望に必ずしも直結しない、ということです。

SAS/UWCの進路開示は3年間延べでの大学名のみ

学校が修了後の成果を約束しないのは、教育産業での一般的なビジネス慣行としても、シンガポールのインター校は卒業生の進路開示すら不十分なのが問題です。
SASとUWCの開示内容は、卒業生過去3年間合計の入学大学名のみです。「エースの生徒が複数校合格で数のかさ上げ」でなく、入学校なのがまだ良心的ですが、どの大学に各年度で何人入学したかが不明であれば、参考にはなりません。
日本の偏差値輪切りでの進学先の選択は批判はされますが、入学基準は学力であり、卒業後も進路を決める最大要素は一般に学力です。卒業生進路から、「クラスメイトのX%が有名国公立に、Y%が有名私大に、Z%がそれ以外に」というのは、入学前に推測はできます。ところが、シンガポールのインター校での進路実績は、噂に頼るしか無いのです。卒業後の進路の推定に困難な前提で入学校を決めるしかありません。しかも、シンガポールのインター校は、入学要件に学業の縛りが強くないこともあり、生徒の進学先は同じ学校の卒業生でもマチマチです。

そういう心もとない現状ですが、カリキュラムがIBの学校は、学校平均スコアが分かります。以前はシンガポールでは、インター校は一部しか開示しなかったのですが、現在は多くが開示するようになっています。
スコアを超えて、IB選択科目での有利不利は受験生(や家族)で議論になりますが、スコアは進路の前提となります。

SAS: 進学大学。2020年~2022年

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UECSEA Dover: 2020年~2022年 進学大学
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UWC East: 2020年~2022年 進学大学

カリフォルニア大学の受験結果開示

送り元のインター校が進路開示に消極的でも、受け入れ先の一つの米国カリフォルニア大学では受験結果を開示しています。これにはシンガポールや日本などの海外校も含まれています。GPAも開示されています。
・カリフォルニア大学: 出身校別入学者選考
ここから、カリフォルニア大受験にどの学校がどの程度強いか、が推測できるようになりました。
(蛇足ですが、カリフォルニア大学という大学が単体で存在するわけではありません。カリフォルニア州にある10の大学から構成されている州立の大学群です。旗艦校は(日本人に有名なUCLAではなく)バークレーです。なので、"カリフォルニア大卒"と名乗る謎の経歴な人がいますが、UCのどの学校かまで聞かないと評価が全く異なるため、出身校の説明に不十分です。大学群というくくりは"ロンドン大"も同様で、どのカレッジかを含まないと経歴に不十分です)

カリフォルニア大学郡UC、バークレー、UCLAの受験結果です。シンガポールの出身校別とし、合格数順に並び替えました。

カリフォルニア大学郡
カリフォルニア大学群UC: 2022年入学、シンガポール出身校別
UC バークレー

バークレーへの入学者を出しているインター校はSASとUWCのみです。Dulwichが合格者を3人出していますが、入学していません。

UCバークレー校: 2022年入学、シンガポール出身校別
UCLA

SASとUWCは合格者をそれぞれ4人、16人だしていますが、入学者はゼロです。他インター校からは、タングリンが5人合格、3人入学。SJIIが4人合格、3人入学です。

UCLA: 2022年入学、シンガポール受験出身校別

(注: 各大学の受験数や合格者の合計は、UC郡の数より多いです。理由は、UC郡の数は、各大学への受験・合格の受験生の延べ数でなく、重複なしに換算したものだからです)

シンガポールで米国大留学は一般的ではない。

背景です。

シンガポール地元民の米国大留学は一般的でない

英語圏のシンガポールから、米国大受験は容易なのですが、UCへの受験者は832人、合格者413人、入学者数は94人しかいません。
旧英国植民地だったこともあり、米国より英国留学が強いです。「米国の学費はずば抜けて高い」ことも、英国志向の理由になっています。
シンガポールでは地元校のNUS(シンガポール国立大学)やNTU(ナンヤン工科大学)が、国内評価も世界ランキングも高い大学です。これらに入学できれば、金銭的苦労を背負って無理に海外留学する動機が弱まります。2024年版QS世界大学ランキングで、NUSは8位、NTUは24位でした。バークレーは10位、UCLAは29位です。シンガポールから海外留学をする事情は、

  1. 地元国立大に入学できなかった
  2. 留学奨学金を得た
  3. どうしても留学をしたい(親元を離れたい)。卒業後は留学国で就職をして、シンガポールを離れたい。

が一般的です。このうち多くが上記1です。地元有名校である国立大に合格できなかった際に、次の候補となるのは国内私立大学のはずです。ところが、シンガポールは国内私大への評価が低く、留学の方が好ましいとの考えが有力です。この場合、留学先の人気は同じ英語圏の豪州、その次が英国です。上記3は、実家が裕福な家庭と、子どもの教育に頑張る家庭ですが、経済負担が大きいので中間層には大変です。

ラッフルズ・インスティチューション (RI) では、UC入学者は15名いますが、うちバークレー8名、UCLA7名です。そもそも、RI生が受験している学校は、UCではバークレーとUCLAのみです。「RI生には、UCLAが米国大留学するボーダーライン」であるのが明確です。「UCLA未満であれば、地元大のNUS/NTU/SMU/SUTDを選ぶ価値観」と解釈してもよいでしょう。なお、たとえ米国有名校に合格できる生徒でも、奨学金がでなければ、シンガポール地元校を選ぶのは珍しくないのが、シンガポールでの評価です。

米国人が多いSASは、米国大学志向が当然強い

SASは米国人のための海外校であって、大学入学を機会に米国に戻るのは一般的な動機です。
SASでは、UC入学者は17名、うちバークレー5人、UCLA0人です。それ以外では、サンタバーバラ5人、ディビス3人です。
SASが最も合格者を出しているのは、ディビスです。受験77人、合格36人、入学3人。

UWCはシンガポール内の2校あわせて、UC入学者が22人、うちバークレー11人、UCLA0人。最も合格者をだしているのは、サンディエゴです。受験132人、合格43人、入学0人。

SAS/UWCのUC受験結果

SAS/UWCのUC受験結果

(注意: 合格者数の総計は重複がありますが、入学者数の総計は重複がないはずです。そのため、各校入学者を合計すると、UC郡の合計者数になるはずですが、なりません… 謎です。そもそも、受験・合格・入学における、人種と留学生の合計が、UC郡全体の数にもなりません。例えば、SASのUC郡入学者はアジア系7人、留学生6人で、合計13人のはずですが、Allが17人になってます。謎です。)

受験結果は、「米国人と留学生」とで細分化して開示されています。私の表では削除していますが、米国人であれば、受験時に人種でスコア修正も入るからでしょうが、人種も開示対象です。シンガポールからUCに出願した米国人がいる学校は、実は6校しかありません。SAS・UWC(Eastとドーバー)・スタンフォードアメリカン・ACS(地元校)・ACS(インター校)です。更にいうと、この内で白人が受験したのはSASのみです。残り全員が、アジア系米国人です。
SASの米国人は、49人が受験し、32人合格、7人入学です。スタンフォードアメリカンは、"アメリカン"を名乗っていますが、UCに出願した米国人は5人のみで、全員が不合格です。

それでも地元校RI、Hwa Chong、ACS、インター校SAS、UWCは強い

シンガポールの地元校の雄、ラッフルズインスティチューションズ・ホワチョン・ACSの3校は、UC受験でもバークレー合格者を出し強いです。
インター校では、UWCとSASが強いです。

おまけ: 日本からのUC受験結果

おまけとして、日本からのUC受験結果も載せておきます。
UC郡全体で合格者が多い順に、ASIS、広尾学園、セントメリーズです。

カリフォルニア大学群UC: 2022年入学、日本出身校別

バークレーには、日本からの合格者は無し。

UCバークレー校: 2022年入学、日本出身校別

UCLAに合格者を出しているのは、広尾学園とASIJです。

UCLA: 2022年入学、日本出身校別

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