今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

安倍晋三元首相死去を受けたシンガポールの反応

うにうに@シンガポールウォッチャーです。
7月8日に安倍晋三元首相が銃撃で死亡しました。
事件についての経緯や背景は、国内で十分に報道されています。シンガポールでの反応をまとめます。

シンガポールとの蜜月: 安倍晋三元首相とシンガポールの関係

安倍氏については、私のシンガポール記事でこれまで何度もふれていますが、シンガポールでは肯定的に評価されています。長年、首相を務め、海外にも顔が見える珍しい日本人になっていました。シンガポール政府と首相に、安倍氏が感謝されたのは、(国内の反対を押し切って)リー・クアンユー初代首相国葬への日帰り参列と、ナザン大統領の葬儀に個人で訪れた最初の外国人指導者だったことでしょう。
否定的なのは、2013年の靖国参拝で、これにはシンガポール外務省が遺憾の意を公式に出しています。
uniunichan.hatenablog.com

親しかった安倍氏とシンガポール首相

「ロン・ヤス」のロナルド・レーガン米大統領と中曽根康弘首相との関係のように、個人的なつながりは、外交・世界政治で役に立つのか、そもそも個人的なつながりを本当に持てているのか、というのは日本で話題になります。
リー首相も安倍氏も特に触れていませんが、この2人の仲は特別のものがあったと、私は見ています。リー首相が3歳年上と年齢が近く、共に政治家家系で、リー首相はプライベートの長期休暇で度々日本を訪れ日本文化への評価が高いです。
uniunichan.hatenablog.com

昭恵氏にも触れるシンガポールメディアの報道

銃撃が発生したのは7月8日11時31分です。最初に報道したシンガポール主要メディアはテレビ局のチャネルニュースアジア(CNA)でした。30分後には、12時01分(日本時間)に第一報が出ました。日本のキャスターとも同時中継が始まります。
続くメディアは、最大新聞のストレートタイムズ紙です。こちらはツイッターで12時18分に第一報を流します。

その後も、シンガポールメディアは銃撃事件と、安倍氏について、かなりの記事を出しました。銃撃事件の詳細から始まり、各国の反応安倍氏の功績日本での政治家暗殺の歴史シンガポールの日本人コミュニティの反応容疑者が宗教団体を動機にあげていること、安倍昭恵氏についても記事が出ました。

亡くなってからは、シンガポールのネットメディアでは、こういう感傷的な動画を作るところまで現れています。

ストレートタイムズ紙は安倍氏への社説を出しました。「アジアの未来を形作る安倍氏のレガシー」との題で、概ね、肯定的評価です。

安倍晋三氏という進歩的な指導者を世界は追悼し、近年で最重要の政治家の1人をアジアは失った。
引退しても、(国内では)影の将軍と呼ぶ者もいた。
国外では安倍氏は、トランプ大統領を細心の注意で活用し、アジアに米国を定着させた。ASEAN加盟国全てを訪れ、後の首相も訪問を優先させた。
暗殺は悲劇だが、日本社会や政治を一般に反映していない。参議院選のように日本は穏やかに対応し、日本の民主主義制度が破れたわけではない。安倍氏が支持してきたアジアでの責任ある役割を日本が演じる課題は、他のものに引き継がれた。

シンガポールの政治家の反応

長期政権だったこともあり、シンガポールの著名政治家は全員が安倍晋三氏と面識があります。外交においては、一定期間の政権維持と、メッセージを出すことの重要性が分かります。

リー・シェンロン 首相

最も敏感に反応したのはリー・シェンロン首相です。銃撃から、わずか4時間後にFacebookでメッセージを出しています。添えられた写真は、2ヶ月前の5月の訪日の際に、安倍氏と会った時のものです。


安倍氏の死去を受け、追悼もFBに加筆され、ツイッターに投稿されました。

安倍氏が亡くなったニュースで打ちひしがれています。衝撃的で痛ましい事件です。安倍昭恵夫人、日本の皆様に、心からお悔やみ申し上げます。

ハリマ・ヤコブ 大統領

シンガポールで大統領は、実権がほぼなく、儀礼上の扱いが中心です。制度上は直接投票で選ばれますが、ハリマ氏は、対立候補の立候補がなく、無投票当選でした。

安倍氏と最後にお会いしたのは、徳仁天皇の即位式でした。
困難な時期に、安倍氏、ご家族、日本の皆様が強くありますように。

ローレンス・ウォン 副首相

シンガポールで次期首相になるとみなされている方です。

安倍晋三元首相が亡くなりショックで悲しんでいます。2013年に安倍氏がシンガポールを訪れた時に、私は随行した大臣でした。日本経済を復活させる彼の計画を聞き、彼の決心と強さを思い出します。

ヘン・スイキット 副首相

2019年の日本訪問時の、安倍首相との温かく建設的な話をしたのを思い出します。ひたむきで、力のあるリーダーだったことを思い出します。シンガポールとの長年の友人でもありました。ご家族と日本の人々にお悔やみ申し上げます。

ビビアン 外務大臣

シャンガム 内務大臣

警察などを国内治安維持を管轄するシャンガム氏は、銃規制が厳しい日本でおきた銃撃事件に、危機感を持っていることが分かります。他国であったとしても、政治家暗殺事件は、政治家にとって他人事ではありません

テオチーヒン 上級相

最初にお会いしたのは、自由民主党で幹事長代理を務めておられる時でした。2018年の東京での日経カンファレンスでお会いしました。
お悔やみ申し上げます。

安倍氏の幹事長代理は、2004年9月 - 2005年10月です。かなり昔に会っているように、副首相も勤めたベテラン政治家です。

ホー・チン 首相夫人

とても悲しい。
とても、とても、悲しい…
リー首相と私は、安倍首相と奥様と、数週間前に昼食をとったばかりでした。
安倍氏は思慮深く、世界と日本の行く末を深く考えている人でした。世界と日本のより良い未来のために全力を尽くす愛国者でした。
昭恵さん。心よりお悔やみ申し上げます。日本は親孝行な息子(a good son)を失った。ご冥福をお祈りします。

シンガポール政府の反応

シンガポール政府は外務省から弔事を公式に送っています。
リー・シェンロン首相名義で、岸田文雄首相宛にです。リー・クアンユー初代首相の国葬、ナザン大統領への弔問に、政府と首相が本当に感謝しているのが伝わります。

岸田文雄首相
約10年、安倍氏と働く名誉を授かりました。安倍氏のシンガポールとの密接な絆は、2015年のリークアンユー初代首相の国葬、2016年のナザン元大統領の遺体への参加で明らかで、シンガポールは大変感謝しています。
リーシェンロン

便乗犯

テレビ局CNAのFacebookページの安倍晋三元首相への発砲ニュースに、暴力の脅迫コメントを投稿した男性45歳を逮捕しています。警察は、通報を受け5時間以内にFBユーザを特定し、逮捕されました。ノートPC、タブレット、携帯4台が押収されています。報道では国籍に触れていませんが、警察発表では、中国籍とのことです。具体的なコメントについては、開示がありません。
「アベ○ネ」が特に問題が無い日本とは異なる国です。

在シンガポール日本大使館での弔問

弔問記帳が行われます。当然ですが、日本人以外も参加が可能です。

(日時) 7月12日(火)及び13日(水)10時から17時まで
(場所) ジャパンクリエイティブセンター(4 Nassim Road, Singapore, 258372) https://www.sg.emb-japan.go.jp/JCC/map.htm
(その他)
・事前の登録や連絡は必要ありません。
・駐車場はありません。

半旗が掲げられた在シンガポール日本大使館。2022年7月8日 https://www.straitstimes.com/asia/east-asia/in-pictures-ex-japanese-pm-shinzo-abe-murdered



リー首相も記帳に訪れました。

リーシェンロン首相が弔問に日本国大使の山崎純邸を訪れた。リー夫人を伴い記帳をした。
別に、日本クリエィティブセンターJCCに日本人の一群が訪れていた。今日、約400人が記帳を行った。献花をし、涙目の人もいた。シンガポール人女性50歳は「日本旅行が好きで、美しい安全な国であるのを安倍氏は助けた」65歳の男性僧侶は「冥福を祈りに来た」

シンガポール国民感情

把握はなかなか難しいのですが、シンガポールでの国民感情です。
シンガポールの掲示板で「米国/台湾/バングラデシュ/ネパール/インドが安倍氏に半旗を掲げる。シンガポールはすべきか?」というスレッドが立ちました。

・No優勢
「第二次大戦のシンガポール華僑虐殺事件で日本は多くを殺害し、安倍は帝国主義者だ」
・Yes劣勢
「国父リークアンユーの葬儀に安倍は出席した」
となっています。第二次大戦の虐殺があるから、今でもシンガポール国民感情として日本政府の話では指摘されますが、それでも
「安倍首相は国父リークアンユーの葬儀に出席した」
の話になると、その方々も言葉に詰まる。
「外交儀礼上、安倍氏の葬儀には特使を送るべき」には彼らも反論がないのです。ネット掲示板で母集団が偏っていますが、意見としてはこうなっています。


日本の内政への期待は、私はゼロです。シンガポール在住を続けている理由の1つでもあります。安倍政権には価値観・経済政策・不祥事対応を代表とするほぼ全てに、私は否定的な評価です。しかしながら、残りの部分である対シンガポール政策では、二国間の関係強化で恩恵を受けているとの思いはあります。
将来の予測を当てるのは、ただの当たり外れだとおもいますが、「第一線を退いた後に鮨をつまむ安倍晋三氏とリーシェンロン氏の目撃情報」を当てるのは、シンガポールウォッチャーとしてすごい心待ちにしていました。実現しないのが確定しました。残念です。

https://twitter.com/leehsienloong/status/544794367081209856


筆者への連絡方法、正誤・訂正依頼など本ブログのポリシー

にほんブログ村 シンガポール情報