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今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

シンガポール永住権取得属性と難化状況 ~PRを取れる人は誰か?~

シンガポール永住権 (PR) 取得難化の背景

金融危機以前、シンガポール (SG) では永住権 (PR: Permanent Resident) 取得は、先進国でありながら極めて容易でした。「在住1年超で1回目の納税を済ませるとPR申請、そこでダメでも翌年再度納税した後の2回目の申請でだいたい取得可能」というのが日本人にとっての平均的な難易度。また当時はPR申請を促すSG政府からのインビテーションレターも盛んに発行されており、SG在住日本人で"お誘い"をもらった人は多数います。
ところが、金融危機以降に、「外国人がSG人の職を奪っている」「SGに外国人が増えすぎて公共交通機関の混雑が半端ない」等というSG人からの非難とともに、ここ数年で厳しくなったEPやS Passなどの労働ビザ (Work Pass) より更に難化させて、永住権取得は厳しくなっています。2008年は取得者8万人で取得率は8割だったのが、2009年には6万人で取得率5割、2010年には3万人で取得率3割に急激に低下しています。

 

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2009年12月~2010年4月:    PR新規発行が一時凍結
 ※非公式です。発表されていません
2010年3月:  PR資格受理診断のオンラインツールが削除
2010年:  シンガポールにある国立三大学(NUS、NTU、SMU)、INSEAD、Chicago Boothなど卒業外国人へのPR付与中止
 ※中止以前はICA (入国管理局) がPR Offerし、SGで卒業後1年以内に仕事を見つけるとPRが取得できる非公開プロセスがあった
2012年4月:    富裕層向けPR付与のFISプログラム廃止
 ※FISは2004年に導入、個人資産が2,000万シンガポールドル超で、SGで5年以上1,000万シンガポールドル以上の資産保持できる外国人が、プライベートバンク経由で応募できた。

 

日本人とシンガポールPR

定義によっては、タックスヘイブン国扱いされ、ASEAN事業展開の進出拠点となるシンガポールでの、キャピタルフライトや自営に脚光が集まっています。それを強力に支える"プラチナチケット"となるのがシンガポールPR。では一体、日本人でPRを持っている人はどれだけいるのでしょう?

データがあります。日本の外務省の海外在留邦人数調査統計です。
強制力のない自己申告データなので、シンガポール在留終了者が届けを引き下げていない、現地採用者は届けを出さない確率が高い、PR取得者は労働ビザからの切り替えを届けていない、等があり正確とは言えないですが、シンガポール政府からの開示がないため、唯一の公表データです。
これをみると、2014年は長期滞在者は31,038人で、永住者は1852人に過ぎません。つまり日本人のPRは長期滞在者のわずか6%弱。大半は民間企業関係者とその家族で76%(23,684人)を占めます。民間企業関係者は大半が駐在員です。現地採用者が増えていますが、まだ少数派。駐在員は期間限定で該当国に駐在しているため、永住権取得は勤務先が許可しない所が多いです。シンガポールでのPR取得日本人は、相当なマイノリティです。
シンガポール永住者の性別内訳は、男性675人で女性1,177人、比率が36:64です。これは長期在住者全体の男女比が54:46なのを考えると殊更に、著しく女性多数です。シンガポール在住の日本人で女性がマジョリティなのは、SG人配偶者を持つ人と、現地採用者です。世間で思われているシンガポール永住権のタックスヘイブンやビジネスドリブンな印象と異なり、SGの日本人永住権者はSG人男性と結婚して配偶者スキームで、もしくは現地採用から労働ビザスキームでPR取得した日本人女性が多いのが実態と推測されます。

 

そもそも永住権とは?

永住権と市民権は誤解されやすいですが、全く違います。SGでの扱いは明確に権利と義務から「市民権>永住権>在住外国人」の順です。

永住権 (Permanent Residence) :

期間・就労可否が原則無制限の滞在・就労許可です。
永住権では国籍が付与されないため、シンガポールのパスポートは手に入れられません。シンガポールを含め多くの国で、参政権や選挙権もありません。シンガポールではCPFと呼ばれる年金への強制加入といった福利厚生や、HDB公団の中古物件取得が可能になります。加えて、PR取得者の子供(二世)からは徴兵が義務付けられます。国民/PR/外国人でのメリット・デメリットの詳細はこちら。
国民/PR/外国人の社会福祉の違いを教えてください

市民権 (Citizenship) :

国籍が付与されます。そのため、シンガポールのパスポートが与えられます。シンガポールでは二重国籍は認められていませんので、シンガポール国籍取得者は以前の国籍を放棄する必要があります。選挙権・参政権を持ちます。

PR社会保障の制限傾向

これまでPRは市民に準じる扱いを受けてきたのが、外国人よりの扱いを受けるように移ってきている印象が強まっています。PRと市民の社会保障に差がつくと共に、PRが言葉の意味そのままの「永住権」でもなくなっています。PRについてくる通常5年更新のRe Entry Permit (REP: 再入国許可証)が更新拒否される事態が発生しています。
PR (Permanent Resident): 取得困難。二世からは徴兵義務。
権利の制限は、公立学校授業料の値上げや、不動産購入についてです。
公立・政府補助校の授業料、外国人学生は値上げ
PRには受難の時、融資限度は返済能力を考慮

取得難易度の高まりと、縮小する社会保障の中でも、PR取得希望者はいます。特に将来シンガポールでの起業を考えている人や、シンガポールに現地採用で働いており失職時の日本帰国リスクを減らしたい人には、PRはいまでも強みでしょう。起業希望者にPRが魅力的なのは、実績や資本が小さい起業したての起業では、労働ビザ取得が困難なためですが、PRであれば労働ビザにとらわれないため無条件で起業ができるためです。

PR申請スキーム

PR取得で確認されているスキームは下記です。

1. シンガポール人を親族(配偶者・子供・親)に持って申請
2. シンガポールで労働ビザ(EP/S Pass)を所持し、居住・労働実績を積んで申請
3. GIPという投資家スキーム
4. セカンダリースクールとジュニアカレッジで超優秀な外国人生徒

各スキームごとで申請条件の難易度が人により異なりますし、申請条件を満たした後でも申請者の属性で難易度が異なります。どのスキームで申し込むかで、前述のREP更新基準も異なり、後々まで影響します。日本人でPR取得を考えている大部分の人への現実的なパスは、2.労働ビザ経由での申請でしょう。

4.についてです。セカンダリースクールとジュニアカレッジで超優秀な外国人生徒にはPRが付与されます。2001年~2014年までで7千人、年に500人です。6学年程度が対象のため、学年での外国人トップ100位に入れればチャンスがあると思われます。人数から考えると、国民と外国人を通して500人が選ばれるGEP (Gifted Education Programme) に選抜されるよりやや高い難易度と思われます。
Strait Times: Parliament: About 7,000 foreign students granted PR status

PR申請属性

ICAがどの属性をPR申請に際して評価するのかの私のまとめです。(これはPR申請属性です。REP(再入国許可証)の更新属性ではありません。)

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勿論上記は、私が見聞きしている限定された話の中での、私の判断です。つまり主観です。上記に外れて取得できる人も、取得できない人もいます。また基準は今後も変わり続けるでしょう。EPやS Passと違って、PRでは取得可能正診断ツールは現在ありません。そのため、経験値でのPR応募データと数少ない公開資料、政府見解から現行基準を推測していくしかありません。

シンガポール政府の基本的な考え方: Singapore rootsもしくは優秀人材

金融危機前後までシンガポール政府がPRに求める属性は「一に収入、二に学歴」でした。それが金融危機以降は方向転換をしています。それは
「今後シンガポール国民になる人をPRに迎え入れる」
というものです。在シンガポール外国人へのシンガポール人からの風当たりの強さから、政府は「彼らは優秀だから(金を稼げるから)国に貢献してくれる」とこれまでの経済一辺倒での説明ではなく、「PRは今後シンガポール国民になる人達だから」と説明しています。国民になるかを判断する最有力の属性は、シンガポール在住年数です。数年住んでPRを申請しても「ほんとにこの後もシンガポールに住み続けるのか?国民になる気はあるのか?」と疑います。駐在員の赴任期間を考えても、外国居住者の大半は5年以内に帰国するためです。5年以上住んでいると「この後もSGに住み続けるかも?国民になるかも?」とシンガポール政府も思ってくれるようになります。
これらはSingapore rootsとして、「何がシンガポール人らしさか」「何を持って移民国家のシンガポールでシンガポール人というのか」という議論が最近政府でも国民でも活発です。ここではシンガポールとの親和性が高いことが重要、との理解が必要です。

それに加えて、PRはシンガポールとの親和性が大事ではあるが、引き続き収入・学歴・職歴で認められる事が必要です。これは親和性が高いはずであるシンガポール人配偶者スキームでのPR申請も半分強が申請却下されていることからも分かります。

これをまとめると「シンガポールとの親和性が高いか、優秀人材がPRとして歓迎される」ということです。このどちらかの枠に入ることが必要です。日本人は「シンガポール人配偶者スキームでのPR取得者」「高所得でのPR取得者」に大別されています。

国籍・民族

実はPRに日本人はそれほど優先されている国籍・民族ではありません。シンガポール人との親和性が高い人達が他にいるからです。例えばその一つはマレーシア人です。元々マレーシアとシンガポールは同じ国で、それが華人の国としてシンガポールが独立させられた歴史的経緯があります。地理的にも隣国であり、PR返上などせず、生涯にわたってシンガポールに住み続ける可能性が高いです。親和性という意味では相当高いです。国籍が違っても、シンガポール国民を占める民族と同一となる中華系マレーシア人は、シンガポールと親和性が最も高いとみなされています。つまり、中華系マレーシア人はシンガポールとの親和性が最強で、日本人とは異なるPR許可基準がとられています。その点で、PRからのシンガポール国籍取得者が年に数人しかいないと言われている日本人からは、PR取得が難しいのは当然です。
ですので、本文書で私が書いているPR属性とその評価は、基準が違う他の国籍へは当てはまりません。日本人のみが対象です。

 

属性:在住年数

最近の傾向として最も重要なのは、収入ではなく、シンガポール在住年数です。
シンガポール在住5年未満でPR申請する多くの人は足切りにあっているように見えます。つまり他の属性にかかわらず申請却下されています。逆にシンガポール在住年数は足切りなので、在住年数が伸びて多少有利にはなっても、PR承認の決定打にはならない印象です。在住年数が10年超になっても、収入・学歴・職歴に短所があれば、PRは取得困難でしょう。

PR取得者の在住年数は私が調べた限り開示が確認できなかったのですが、シンガポール市民権取得者の在住年数は開示されています。上記で示したのと同様の記事です。ここで少なくとも国籍に対しては、在住5年、10年という数字を意識していることが分かります。
Straits Times: Eight in 10 new citizens last year lived in Singapore more than five years

未成年者を除く市民権取得者の10人中8人は5年以上シンガポール在住、10人中5人は10年以上在住です。つまり、10人中2人は5年以内の在住でPRを経てシンガポール市民権を取得しています。シンガポール在住5年未満の市民権取得者は、海外でシンガポール人と結婚し、シンガポールに移り住んでから市民権申請をしている可能性が高いです。シンガポール市民権申請には2年以上PRでいることが規定上から必要です。

2015年では、この状況が変わりつつあります。2013年頃に見られたような「5年以下の在住者が足切り」が適応されない人が多くなってきました。特徴的なのは旧EP P1をはるかに超える(月収$2万前後以上)の人達が、在住数年で取得しているものです。この程度の年収があれば、在住数年でもPR取得チャンスがあるのが現状ですが、そこまでの収入がなければ在住年数を積み重ねることが必要になります。

属性:学歴

SG政府公表統計より、PR取得者のセカンダリスクール(日本の中学校に相当)卒業以下が24.2%。セカンダリスクールより上の学位取得者が75.8%です。セカンダリスクールは、日本で言う中学校にほぼ該当します。
Statistic Booklet - Population in Brief 2012
「え?!中卒未満で1/4もPR取得できてるっていうことは、事実上学歴影響しないんじゃ?」と思った人、間違いです。PRは申請者には高い属性が求められますが、申請者がビザスポンサーとなって同時にPR申請する配偶者とその子供の属性は、PR判定にあまり影響ありません。この中卒以下はPR応募者の子供と理解するのが妥当でしょう。年齢の詳細はのちほどですが、20歳以下でのPR取得者は29.9%です。まだ就学中の子供が、セカンダリスクール卒業以下でPRを取得した24.2%の大半を占めているのでしょう。
中卒以下には成人者も若干は含まれていると思いますが、GIPスキームや配偶者スキームでの中華系マレーシア人の可能性が高いと推測されます。

在シンガポールの国立大学と一部海外有名校での学位取得者

2013年頃迄は、短期間の滞在(5年未満)でPR申請で許可のチャンスがあるのは、シンガポールの国立三大学(NUS:シンガポール国立大学、NTU:ナンヤン工科大学、SMU:シンガポール経営大学)で学位取得した人達でした。学位なら今からでも努力で取得でき、これであれば最近でも在住数年でPR取得が確認されています。もともとこれらの卒業生は、2009年までは卒業後1年以内にSG内で職を見つけると、即PRを受領していました。シンガポールの国立大/著名校を卒業し、SGで仕事を見つけ、PRを申請ということは、「それなりにシンガポールに腹がくくっていて、シンガポールとの親和性が高く、そこそこ優秀である」ように見え ます。
大学か院で、学位が発行されればどちらでも良いです。海外校でもINSEADやChicago Boothといった著名な在シンガポール校で学位取得した際でも同評価を受けます。日本人にも上記の大学院MBA取得者が、このカテゴリ内でたまにいます。
しかしながら、2015年になり、特に日本人以外で三大学卒業者がPRに落ちる自体が続出しています。日本人の三大学卒業者のサンプルが少ないのですが、有利ではあっても以前ほどの下駄ははけなくなりました。
シンガポールにある学校でも、私立大や海外校の学位では、PR取得の切り札になるほどの高い評価は受けていません。通常の大卒・院卒学位として評価されます。
参考:「シンガポールのワーホリビザはトップ大学のみに発行」の背景【余談】シンガポールの私立大学

優秀さの面で、シンガポール外でも、米国アイビーリーグや英国オックスブリッジといった超有名校卒業生でもチャンスが高いように見えます。
博士・修士、日本の大卒でも有名校(東大等)であれば、それだけでは決定打にならなくても、引き続き有利に扱われ、加点されているでしょう。
その一方、大卒未満は極めて厳しいです。金融危機以前のPR乱発時は大卒未満のPR取得も聞きましたが、最近はめっきりと聞かなくなりました。大卒未満では在住年数を重ねるだけでは、取得できない可能性が高まっています。

属性:家族構成

家族構成もPR取得に影響します。シンガポール政府はシンガポールに本当に永住してくれる人を求めています。独身であれば身軽ですし結婚した際に相手次第で居住国がどうなるのかは不明です。その点、家族をシンガポールに連れてきており、家族と共にPRを申請すると、独身より当分シンガポールにいてくれそうです。また既に子供がいてPRになってくれれば、少子高齢化に悩むシンガポールには願ったりかなったりです。

逆に、、、PRに応募しながら、本人と配偶者だけを申請し、子供を申請しない人がいます。この場合は、ほぼほぼ子供は男子です。はい、そうです。つまり男子子供の徴兵回避を意図したPR申請除外です。PRを申請する際に、配偶者と子供も同時に申請できますが、この際に誰を申請して誰を申請から外すかは、選択可能なのです。金融危機前後までは男子子供をPR申請から除外して両親のPR取得していた人はいることはいました。しかし最近はこの方法でのPR取得は確認されておらず、シンガポール人からのPR糾弾の一つにも「子供男子をPR申請から除外」が入っています。子供をPR取得から外すと、徴兵忌避としてPR取得の致命傷属性になり、他の属性にかかわらず申請却下となります。
PR申請時には、家族全員での申請が原則で、そうでなければ門前払いの結果になります。家族全員とは配偶者と子どもです。将来、国民になる人を探していることから考えても、家族の一部しか申請しないのは極めて不利な結果になることは明白です。家族の一部だけがシンガポール国籍に帰化することは、あり得ますが、奇妙でまれなケースだからです。

シンガポール人との結婚

シンガポール人親族スキームでの特徴は、滞在年数が短期間でも受理される可能性があること、重視される属性は申請者本人以上にビザスポンサーのシンガポール人であること、の二点です。
シンガポール人と結婚し(あるいは子供を持ち)、シンガポール人配偶者スキームでPRを申請するのは、シンガポールとの親和性として強い属性だろう、と見えます。親族スキームではシンガポール居住年数にとらわれず申請できるなど、有利は有利になるのですが、取得率はそこまでは高くなりません。2008年 から2012年までの間に、親族スキームで応募したうち、平均で4100人はPR承認されていますが、4400人はPR却下されています。これでも、半分強が却下です。

Straits Times: Eight in 10 new citizens last year lived in Singapore more than five years

 配偶者スキームでは本人属性以上に、家族となるシンガポール人の属性が重要と以前から言われていました。結婚相手のシンガポール人の属性(学歴・収入額や継続して税を納めていること・CPF口座残高)が審査に与える影響が高いと言われています。これは結婚相手が事実上のビザスポンサーになるためです。経済的に不安定であったり、学歴が劣るシンガポール人との結婚では、PRが取得できずLTVPでの滞在、自分の属性でのEP/S Pass申請になるケースは、取得率から言っても珍しくありません。これは、経済困窮から偽装結婚の可能性がある婚姻相手に、PRを付与しないためでもあります。

属性:収入

シンガポールでの就労ビザの種類は基本給与によります。EP Q1かS Passかは学歴にも依存しますが、最重要は月額基本給与です。PRに応募できるのは、EPかS Passからです。日本人は原則対象外の単純労働職対象のWP (Work Permit) からはPRに申請できません(注:ダンサーなどエンターティメントの職種であれば、日本人もWP取得者あり)。

5年以上在住していても、EPも旧P1(基本月給$10,000)程度でなければ、取得困難になっています。逆に、外資金融・ファンドなどの勤務で、東京からシンガポールにポジションが移ったことでの移籍・転籍での高額所得者が増えており、旧EP P1をはるかに超える年収(月給$20,000前後以上)であれば在住5年を満たさなくとも、PRが付与される人が増えてきています。
注意すべきはS Pass所持者です。以前はいたS PassからのPR取得者がいなくなりました。PR申し込み要件は改訂されていないため、S Pass保持者はPRへの申請は可能ですが、取得はまず無理です。現在、配偶者ビザDP取得に必要な最低基本月給は$5,000です。より権利が大きい、PRがこれ以下の基本月給で取得するのが難しいのは自明です。S PassでPR取得困難なのは、シンガポール有力紙Starit Timesの「S PassからのPR取得は困難」との記事も裏付けます。旧EP Q1(月給$3,300~$5,000)でも同様に取得困難で、旧EP Q1であれば20歳代中盤の国立三大学卒や有名大学卒などであることが必要です。

属性:年齢

年齢も属性の一つです。2012年の新規PR取得者の年齢グループは以下になっています。

40歳以上    8.0%
31~40歳    23.3%
21~30歳    38.9%
20歳以下    29.9%
Statistics of Singapore: Population in Brief 2013

40歳を過ぎると、新規PR取得者に占める割合が急激に低下します。これは40歳以上での応募者が減ることも考えられますが、40歳以上は評価されない属性と考えるのが自然でしょう。高齢化すると、シンガポールに貢献できる期間が減り、逆に社会保障受益者となるリスクが高まります。若ければ有利、年をとれば不利です。
40歳代も後半になれば、GIPスキームやシンガポール人親族スキームでないとPR取得は困難でしょう。

属性:資格/職業

誤解をたまに聞きますが、会社員で現在の勤務先の影響は小さいです。シンガポールで大企業に勤めているから有利、中小企業だから不利とはPR申請では即座に言えません。これはEP/S Passの申請とは大きく異なります。EP/S Passの就労ビザでは、「本人属性×ビザスポンサーと成る勤務先属性」の掛け算で結果がでます。PR申請では勤務先属性単にいくつかある属性の一つにすぎません。理由は、EP/S Passはその勤務先での就労にのみ有効なものですが、PRになると取得後も生涯有効なためで、勤務先は一時的な属性にすぎないからです。確かにシンガポール政府勤務で公務員や、政府系企業勤務者は取得率が高いように見えます。ですが、多国籍企業を含め民間企業では有利/不利はあまりないでしょう。なので、現在の勤務先はPRで判断ポイントとなるマイナー属性(査定対象だが決定的に重要とは言えない)の一つです。

自営業については、応募の母集団が多くないのでコメントは難しいのですが、EP申請時と同様にシンガポール人雇用と法人税/所得税納付が、重要です。雇用はシンガポール人でなければなりません。外国人雇用は良くて評価がフラット、外国人雇用に固まっていると評価が下がります。事業の継続性をアピールする最大の手段は、儲けて法人税をたくさん収めることです。PR取得のためにも、いっぱい現地民を雇って、いっぱい税を収めましょう。

シンガポールが欲している職業があります。今後の高齢化に備えた医療職です。特に医師は有利です。医師であっても、資格は持っているが数年医師として働いていない、あるいは、シンガポールに来てから医師として働いていない、のであれば今後SGに貢献できる見込みは小さいため、加点されない可能性が高いです。

日本で資格と言えば士業であり、医師以外では弁護士・公認会計士が代表です。シンガポールでも弁護士はプレミアムですが、弁護士資格所持者でのPR申請者は私には情報不足しており、有利になるかは不明です。公認会計士は日本のようなプレミアムな資格というより、シンガポールでは会計の専門職がとる資格で、優遇は小さいです。

不利になる可能性があるのが駐在員です。「シンガポールに駐在ビザって無いので誰が駐在員かわからないのでは?」と思われた方。惜しいですが、SG政府には分かっています。EP申請時に「シンガポール以外の国での給与所得があるか」をマークします。それで判断可能です。金融危機前後までは駐在員にもPRインビテーションレターがバンバン届いていました。日本の給与水準に加え、更に各種駐在手当があるので高給取りに見え、当時のPR基準から言って当然でしょう。しかし、駐在員はそのうちに帰国する人達です。永住したり国籍変更する可能性は小さいのです。そのため減点対象になる可能性があります。なお、駐在員は本社に帰ることが前提であり、PRになるとCPF負担も発生することから、通常PR申請を駐在員に認めていない企業が多いです。

属性:英語力

PRのみでなく、シンガポールの全てのビザ及び市民権取得に関しても言えることですが、英語力で結果が左右されることは基本的にありません。理由はインタビューが原則無く、オーストラリのようにIELTSのような英語試験結果を求められることもないためです。判断は申請書類に基いてなされるのが原則です。インタビューされる人はまれにいますが、それも語学力チェックではなく個別事情の聴取です。よって、PRの取得属性に英語は入りません。英語力に不安がある人は、PR申請代行の業者に書類記入を依頼すればハンデはありません。

人口白書: 新規PRのキャップ

重要でかつ悲しいお知らせがあります。2013年2月の人口白書を巡る議論で、これ以上の外国人に耐えられないとするシンガポール国民の怒りが爆発。政府は新規PR付与を年3万人にし、PR総数を50万~60万人に抑制することを表明しています。2013年のPR総数は53.1万人です。

AsiaX: 人口白書、政策の目標年を2020年に変更

なぜPR3万人という枠に設定したかについては、2万人に設定されている新国民と関連があります。興味がある方は、下記の記事を参照下さい。


移民と年金:「日本のような高齢化社会にシンガポールをしてはならない」と指摘するシンガポール首相 - 今日もシンガポールまみれ


それに加えて、シンガポール政府は現在の民族比率を維持することを表明しています。シンガポールは中華系・マレー系・インド系が主要民族です。現在の国民とPRを含む民族比率は、中華系74%、マレー系13%、インド系9%で合計97%、その他民族がわずかに3%です。日本人は民族としてその他に分類されます。つまり、PR総数3万人枠の3%=900人の枠を日本人は他民族と争っていることになります。実際には、その他の民族に900人より多くの割当がある印象ですが、それでもこの中で日本人がPRを取ることはいかに難易度が高い状況かは容易に想像がつきます。この数には、GIPや親族スキームでの申込も含まれるので、労働ビザスキームでの取得には更にスペック競争になります。

Today: We will maintain racial balance among S’poreans: PM Lee

 

以上から、本記事で論じている属性も絶対値ではなく、PR申請母集団の質が向上すれ ば、発行数に上限があることから更に取得が難化する相対的なものです。居住年数を満たした応募者は、スペックが上の人から許可されるでしょう。今後もPR 取得は一方的に難化し続ける可能性が高いということです。

子供のPR申請が却下される

既に両親がPRを取得しており、出産を経て、子供のPRを申請するが、何度申請しても却下される状況を耳にするようになってきました。申請する動機は、子供の医療費補助や、ローカル校への小学校入学のためです。ローカル校進学には、子供がDPやLTVPだと学籍確保が困難で、高額な日本人学校やインター校の選択や、帰国しての進学を余儀なくさせられるからです。

却下のケースではほぼほぼ親が、何年もシンガポールに在住し、金融危機以前の現在の難化する前にPRを取得しているケースです。つまり、現在の難化しているPR基準では新規にPRを取得できない家族です。例えば、2010年以前は月給$3,000やまれに大卒未満でPR取得をしている人もいましたが、その後から現在に至るまで、給料や学歴で目立った自分へのアップグレードが無いと、現在のPR基準ではPRを取得できません。
PRの年間枠は3万人に限定されています。全応募者のプールから、相対比較されて3万人が選ばれます。同じ属性なら(PRでなく)シンガポール人が親族にいる家族、新規申請者であってもより好ましい属性でPRを申請してくる人が優先されます。「自分がPRだから、子供もPRになれる」という明記されていない"既得権"は、シンガポールにはありません。PRの子供が持っているのは、就労スキームでなくても、親族スキームでPRを"申請"できることであり、取得は保証されていません。

子供のPR却下への対策

収入を増やす

子供のPR申請は、就労スキームでのPR新規申請ほど属性は厳しくはなく、多少の下駄は履かせてもらっていますが、新規取得者の属性とリンクはしている印象です。では給料が幾らであれば子供へのPRがでるか、と言うのはサンプルが少なく言い難いです。参考になりそうなのは、シンガポール居住者(国民とPR)の月額所得中央値は$8,292(2014年)ということです。しかし、これを上回る所得があっても、まだ子供のPRを取得できない家庭も聞きます。「中央値であって最低クリアライン」と考えるのが良さそうです。

シンガポール統計局: Key Household Income Trends, 2014

専業主婦の家庭であれば、子供のPRがとれるまでの一時的な間だけでも共稼ぎにスイッチしましょう。親が大卒未満であれば、大学の学位取得を検討しましょう。

なお、「子供が男子であればPR二世にはNSが義務としてあるからPR取得は容易」というのは、よくある誤解です。性別での取得難易度の変化は統計もありません、確認もしていません。男子二世でのPR却下を聞くのは珍しく無いです。また、PR男子一世が国民になった際の徴兵(NS)は公式には免除されませんが、現時点では年齢を理由に事実上免除されていることは付記します。

TIPS

下記リンクでPR申請後のステータスは確認可能です。

ICA: iEnquiry

PR申請への戦術

ここまでで、誰がPRを取得できるかについて書いてきました。どのようにPRを申請すべきかを記します。

シンガポール親族スキームやGIPを使える人は、PR取得を思い立った時に申請しましょう。留意点は申請者の子息に男子がいれば、徴兵対象になることです。

難しいのが、労働ビザスキームでの申請です。原則として私は相談されれば「興味があるなら出してみれば」と言っています。これは申請にペナルティは無いからです。それで却下されても、過去の却下が理由で将来の申請が不利になることはPRではありません。
それでもまずは居住丸2年を満たしましょう。2年以下では、有名大卒で金融の高給職についた新卒でもない限り、足切りに合う可能性が高いです。高収入の人は居住3年目、そうでない人は居住5年目から申請していくのが良いでしょう。居住5年を満たさない時期の申請は、それで取得が可能になるというものより、居住丸5年を満たした後に出す申請へのアピール目的ととらえた方が、気持ちの持ちようです。
居住丸5年以降の申請が二度以上却下されれば、PR取得は極めて困難で、恐らく現状では一生PRを取得できない可能性が高いです。応募母集団の中で居住年数を満たせば、上からハイスペックな人をとっている相対基準なため、居住年数を満たした母集団が増える今後は一層不利になるからです。どうしても取得したければ、シンガポール人と結婚して親族スキームで申請する、NUS(シンガポール国立大学)/NTU(ナンヤン工科大学)などの地元大学院をパートタイムでもよいので卒業する、給料を爆上げさせる、シンガポールの国への魅力が減少しPR申請者が減るような危機を待つ、などが対策になります。

 

 

※シンガポールでビザの状況は頻繁かつ予告なく変わります。最新状況はシンガポール政府ホームページなどの一次情報で確認下さい。

※本ブログの記述は、筆者の調査・経験に基づきます。記述が正確、最新であることは保証しません。記載に起因する、いかなる結果にも筆者は責任を持ちません。記載内容への判断は自己責任でお願いいたします。

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