今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

シンガポールで外国人の副業は違法就労にも:在住日本人ブロガーの営利は困難

シンガポールの最有力紙Strait Timesで、「ブロガーは物品やサービス受領の確定申告が必要というIRAS(内国歳入庁)通知がシンガポール著名ブロガーに届けられた」という記事が出ました。IRASは日本での国税庁に相当します。私の抄訳を付けます。

香港へのスポンサー提供の旅行、試食会への家族や友人への招待、最新の美容器具のパッケージ。これらは、ブロガーや"SNSで影響を持つ人"が製品に言及するために企業からしばしば受け取るものの例だ。現在、そういった"金銭以外の利益"も来月までに収入として宣言すべきだと、税務当局は指摘した。
「スポンサーの製品を書いたり批評したりすることと引き換えに、何かしらの製品やサービスを提供することは課税対象になりうる」とIRASは今月初めにブロガーに書面にて通知した。(略)
人気ブロガーの Xiaxue は「値段をつけるのが難しい物がある。もし誰かが私に口紅をくれれば、私はコストを調べて申告する必要があるわけ?」(略)
IRASによると、そのような義務は自営業者へのものと類似だし、これまでも存在してきたとしている。
たとえば、もしある人の家族や友人が4人分の食事に招かれれば、そのライターやレビュアーは課税所得において市価を申告する必要がある。しかしながら、収入を稼ぐ過程で発生した費用はブロガーは経費になる。
例えば、レビュアーが受け取った口紅が、記述への唯一の支払いだとすると、口紅は課税対象になる。しかし、金銭で支払われていれば、口紅は課税されない。この場合、口紅取得にかかった費用は経費にならない。経費になるのは、会計処理手数料や広告費だけである。(略)

市場でどれだけ売られるかで、製品とサービスの課税価格は決定されると、会計士は言う。もし非売品であれば、被課税者は類似商品の価値を報告するが、主観的になる。
収入の未申告や不正確な申告は違法だ。IRASは、税の過小支払いに最低200%の追徴課税を行い、脱税や詐欺になると未払いの最大400%を追徴課税とする。

今回、IRASから税での警告が出る以前から、シンガポール在住日本人ブロガーで、収入を得ることができる人は限られています。就労ビザの問題があるからです。シンガポール在住外国人は、以下の問題が発生します。

  • 就労ビザ: 労働省MOM
  • 税金: 国税庁IRAS

シンガポール人は就労ビザの問題はありませんが、日本人は両方共にクリアする必要があります。しかし、就労ビザの条件を満たさない在住日本人が大半です。

就労ビザ

PRのブロガー

就労ビザの扱いは滞在許可が永住権 (PR) かそれ以外かで大きく別れます。PRは就労許可のジョーカーです。PRを所持している限り、別途各業種に必要なライセンスがある場合を除き、どんな仕事にでもつけますし、自営もできますし、副業も可能です。つまりPRにはシンガポール国民と同じ労働の自由があります。
PR所持者は、営利活動としてブロガーをするのも問題ありません。

PR以外のブロガー (DP, EP, S Pass)

シンガポールの就労ビザ (EP, S Pass, WP)で副業は不可です。就労ビザ申請時に申請した雇用主のもとでのみ、働くことができます。
MOM: Can a work pass holder work in multiple jobs?
シンガポールでは、給与が発生しない無報酬でも、外国人が適切な就労許可(ビザ)無しに労働をすれば違法就労です。

PART IV - DECLARATION BY APPLICANT
I further undertake not to be engaged in any form of employment or in any business, profession or occupation in Singapore whether paid or unpaid, without a valid work pass issued under the Employment of Foreign Manpower Act (Cap. 91A).

PR以外で滞在するブロガー(DP, EP, S Pass)は、趣味やボランティアとしてのみブログを楽しみましょう。ブログを書いたことで、金銭や物品やサービスの提供や割引を受け取ることは、違法就労になります。
※就労ビザの一つのPEPは役員でなければ副業ができますが、それでもブロガーにはなれません。以下に抵触するためです。
You are not eligible for the PEP if you are:
- A freelancer or foreigner who intends to work on a freelance-basis.
- A journalist, editor, sub-editor or producer.
MOM: PEP: Eligibility and requirements for Personalised Employment Pass

シンガポールにおける違法就労

無報酬でも違法就労となる典型的な行為は、インターンシップです。
uniunichan.hatenablog.com

If you are holding a Student Pass, you are not allowed to work in Singapore during your term or vacation unless you are granted a work pass exemption. (略)
If you are a foreign student or trainee coming to Singapore under a training attachment programme, you should be holding a Training Work Permit, a Training Employment Pass, or be in the Work Holiday Programme. It is an offence for a foreign student to work in Singapore without a valid work pass.

外国人が無償でもインターンシップ(という名称での労働)をするには、PR(永住権)、ワーホリビザ、学生ビザ、TEP(Training Employment Pass)等が必要になります。各ビザの無報酬労働の条件を書きます。

シンガポールで無報酬労働が許されるビザと条件
  • PR: 条件なし
  • ワーホリ: 条件なし。ただし取得には、期間が半年のみ、25歳以下、最大ビザ発行数が2,000。世界ランキング200位未満の大学在籍か卒業でない場合、ビザが発行されるかどうかは運。
  • Student's Pass: MOM指定校に本籍がある在籍者のみ。交換留学生は不可、語学学校は指定校にならない。学期中の労働は週に最大16時間。休暇中は労働時間制限無し。
  • Training EP: 学校授業の一貫、在籍が著名校、シンガポールの著名企業がスポンサーであること。期間は最大3ヶ月

労働と、労働許可が不要な趣味やボランティアの境目があいまいなケースはありますが、報酬を得れば労働と判定されます。

ボランティアには労働許可が必要でしょうか?
いいえ。ボランティアに労働許可は不要です。就労関係や金銭の支払いがないことが条件になります。
例えば、金銭の支払いを受けていなければ、学校や慈善団体でボランティアをできます。

つまり、

  • 報酬を得て就労ビザ無しで活動: 違法就労
  • 報酬を得ず就労ビザ無しで活動: 内容により違法就労とMOMがみなすものがある

労働と、趣味やボランティアとの線引が微妙なケースがあります。例はフリーマーケットやガレージセールでの販売です。違法就労可どうかの最終的な判断は、MOMによります。

例1 原材料費は個人の負担の元に、個人で作った食品や民芸品をバザーで販売した。売上はすべて慈善団体に寄付した。 ボランティア/趣味
例2 個人で作った食品や民芸品、他所で仕入れた商品を定期的に販売した。利益を含む売上は打ち上げで使った(利益は収入とした)。 違法就労
例3 個人で作った食品や民芸品をバザーで販売した。経費は製作者が売上からとり、売上との差分の利益は慈善団体に寄付した。 違法就労
例4 引越しのため不要品をガレージセールで販売した。購入金額より売上が安価だった(赤字)。売上は新居での物品購入に充てた(売上は収入とした)。 違法就労???

例3は、微妙なケースに見えなくもないですが、MOM基準では違法就労です。理由はFAQでのMOM記述によると、金銭の受領があればボランティアではなく、例3では、経費でも少額でも、金銭を受領しているためです。誤解を避けたければ、ボランティアでは経費を含めて、自分の負担で実施する必要がある、ということです。

例4は、MOMが大っぴらに判断を表明したくないケースのはずです。就労関係はなく、利益もあげておらず、悪質性が無く、一般的にも行われていますが、金銭のやり取りがあるのに着目すると違法就労というなかなかに厳しい判断になります。

なお、学生へのインターンシップではなく、従業員をシンガポールでOJTさせるには、就労許可が必要です。
If you take up any on-the-job training, you require a work pass.

PR以外は副業不可、就労許可がなければ労働不可

EPとS Passの就労許可は、MOMに申請した雇用主の勤務地での申請職種のみです。複数の勤務先にMOMがEPを発給していることを、現在では確認できません。そのためEPでは副業できません。
MOM: Employment Pass Application Form (For Sponsorship cases)

DPはLOC (Letter of Consent)を勤務予定先経由でMOMから取得すると、勤労可能になります。しかし、ブロガーを含めフリーランス(Sole Proprietorship等)や自営へのLOC発行は、現在確認できません。LOCは複数発行されませんので、副業できません。
※取得者は少数ですが、PRの他に、PEP(役員不可)、ワーホリビザ、Student's Passでは副業可能です。なお先述したように、ブロガーはPEPの対象外職種のため、できません。
※PRのような適切な就労許可を取得したとしても、自宅コンドでの事業は都市開発庁URAからの規制があります。

出張者の入国目的は「ビジネス」なのか

労働許可がなければ就業(副業)できないのは、従業員としての勤務のみならず、役員としての会社経営、ブロガー、ライター、ノマド、お教室、企画旅行、家庭教師など労働に関する全部です。
シンガポールに入国する時に、入管で「シンガポールに何をしに来たのか?」と聞かれた際に、「ビジネス」と出張者が答えるのはもめる可能性があります。「会議への参加」などと適切に答える必要があります。
シンガポールでは就労ビザが不要な業務を明記しています。ここに無い行為へは就労ビザが必要です。
就労ビザが不要で、MOMに事前通知も不要な行為

  • 社内会議、ビジネスパートナーとの会議の参加
  • スタディツアー、研修、セミナーへの受講者としての参加
  • ビジターとしてのトレードショー参加

就労ビザが不要だが、MOMに事前通知が必要な行為 (一部のみを抜粋)

  • 展示会の主催者 (展示会期中に限った情報提供、販売)
  • ジャーナリスト (政府や公的機関が主催するイベントへの取材)
  • セミナー、カンファレンス、ワークショップでのスピーカー、司会、トレーナー
  • MOM: Eligible activities for a work pass exemption

シンガポールでの社内会議にでた後に、ホテルで出張者が日本業務に指示を出すのは、厳密には違法就労ですが実際には幾らなんでもおとがめにならないはずです。問題になるのは、シンガポールに新規オープンした店舗のヘルプを、日本からの出張者が就労ビザ無しでするケース等です。

税金

今回のIRASの発表は、「金銭でなく物品やサービスでも収入は収入。この規則は以前から存在していたが、ブロガーが適切な申告をすることが無かったので、改めて周知した」、という趣旨です。
原文を参照頂きたいのですが、主要点をまとめました。

  • ブログやSNS(Facebook/Twitter/Instagram/YouTubeなど)で金銭や物品やサービスを得た場合、課税対象で申告が必要
  • 以下の2つを共に満たせば、課税申告から免除となる
    • 製品やサービス提供が、一度の消費やテストのために、単発で提供される
    • 製品やサービスの価値が$100を超えない
      • つまり$100未満でも複数回発生するようなものは申告対象。例: 雑誌の複数回購読、鞄(一度で消費できない)の提供は、$100未満でも申告対象
  • 利益が年$6,000を超えれば、自営収入として申告が必要。
      • 契約やサインがなくても、利益供与を受ければ、申告対象。
  • 認められる経費がある。
  • IRAS: Income Received from Blogging, Advertising & other Activities Performed on Social Media Platforms

このIRASは金銭以外の、物品やサービス提供にしぼって記載されています。広告主からの金銭報酬や、Google AdWordsといったアフィリエイトなどの金銭収入は、これまでもこれからも申告が必要です。

※注: 日本に納税するかどうかの判断については、本記事の範囲としません。
(参考) 国税庁: 非居住者に対する課税

結局、日本人ブロガーは、どうすればよいのか

  1. 金銭や物品サービス提供を受けていない趣味のブロガーは、今後も何の問題もなく続けられます。
  2. 金銭や物品サービス提供を受けている営利のブロガーは、違法就労ですので、活動を止めるか、無報酬に切り替えましょう。それかPR取得など、適切な就労資格を満たしましょう。
  3. ブロガーでなくても、EP/S Passでの副業や、LOCを持たないDPでの労働は違法です。止めましょう。
  4. PRなど、就労資格を満たしているブロガーは、年$6,000以上の利益があれば、税務申告しましょう。$6,000未満であれば税務申告は不要です。

FAQ: 副業でのよくある質問

堂々と副業してる日本人EP、自営しているDP。有名人も含め結構見かけますが?

PRでなければ、まず違法就労です。単に通報されておらず、MOMが摘発していないだけです。堂々としているのは、違法なのを知らない、勤務先から副業は問題ないとの回答を得たが外国人を対象にした回答をしていない、ビザを適切に理解していない(間違ったアドバイスを得ている)、他に同じことをやっている人を知っているので自分が摘発されると思っていない、からです。つまり、知識に問題があるか、間違った人を頼っているか、倫理観に問題があります。
MOMとIRASは通常は連携をとっていません。そのため、IRASでの税の問題と、MOMの労務問題は別々に扱われることが多く、MOMは通報がなければ特定事案以外はプロアクティブにチェックしません。
EPでは、EP申請時に申請した勤務先での就労のみが許可されています。勤務先は IC (EPカード)に記載されています。複数の勤務先には、それぞれにEP申請が必要ですが、現在MOMではEPの複数発行をしていません。
DPでは、MOMがLOCを個人事業主やフリーランスに対して出す話しはかつてはありましたが、現在は本当にLOCが発行されているとの事例を確認できません。法人をたてて、資本金を積んで、EPへの切り替えが必要です。
ですので、現在、副業にはEP/S Pass/DPでは無理です。従業員の副業であればPEPかPR、自営の副業であればPRの取得が選択肢になります。
なお、外務省海外在留邦人数調査統計によると、シンガポールに日本人の永住権保持者は、わずか2,250人しかいません。これは男女子ども老人をいれた全ての人数です。そして、シンガポールで日本人永住権保持者の多くは、以前詳述したように、現地でシンガポール人男性と結婚した女性です

永住者本人男性 234人
永住者本人女性 701人
永住者同居家族男性 706人
永住者同居家族女性 609人
IRASは「年$6,000以下のブログ収入は"趣味"」と書いているので、労働ではなく、外国人もできるのでは?

IRAS文書の誤読です。そんなことは書いていません。「ブログ活動は収入がなければ趣味」、「$6,000以上の純利益があれば税申告必要」というのが内容です。下記に私の訳を付けます。

a) 私は情熱からあるいは趣味として書き物をしており、書き物から多くの収入は得ていません。しかしながら、スポンサーから商品を受け取ることがあります。業務やビジネスをしているとみなされますか?
回答: 一般的に趣味としてのブログはビジネスとみなされません。しかしながら、もしブログ活動が金銭や金銭でない利益との交換で、繰り返し習慣的に行われており、毎年の純利益が$6,000を超えていれば、自営収入としてブログ活動利益を申告する必要があります。
a) I am writing out of passion/as a hobby and do not receive much income from it. However, I receive sponsorship products occasionally. Am I considered to be carrying on a trade or business?
Answer: In general, blogging as a hobby is not considered a business. However if blogging activities are performed repeatedly or habitually in exchange for monetary and non-monetary benefits such that the annual net business income earned is more
than $6,000, this income should be declared as self-employed income.

外国人は、Employment of Foreign Manpower Actを満たさなければ、MOMで摘発されるのでご注意を。

シンガポールでヤラセやステマは違法ではないのか?

日本では、広告主がいることを隠して記事にしたりネットに記載する、ヤラセやステマ(ステルスマーケティング)は違法とされています。不当景品類及び不当表示防止法の優良誤認に該当するためです。
シンガポールでは、違法性を私はこれまで聞いたことがなく、ブロガーと広告主の倫理上の問題の範囲と私は認識しています。


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