今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

シンガポールビザ:不法就労の落とし穴

『してはいけない不法就労』

本記事は下記3本立ての第二回目のものです。
シンガポールビザ:属性別、取得可能なビザは?
シンガポールビザ:滞在目的別、利用可能ビザ
シンガポールビザ:違法行為の落とし穴

uniunichan.hatenablog.com



日本人が陥りがちなビザに関する違法行為・不法就労を紹介します。
1. 労働ビザが出る前の就労
2. 再入国によるSG滞在期限延長
3. 給料キックバック
4. 自営/サイドビジネス/ノマド
5. インターンシップ・無償労働

ICAとMOM

シンガポールではビザはICA (入国管理局:Immigration & Checkpoints Authority) が管轄するVist Passや、MOM (労働省:Ministry of Manpower) が発行するWork Passと呼ばれるもの等があります。
日本人はビザ無し入国が可能です。この場合の入国方法は、パスポートにスタンプが押されるSocial Visit Passでの入国と呼ばれています。シンガポールに来る時の機内で配られるDisembarkation / Embarkation Cardという白い紙とパスポートで入国するものです。
ICA: Disembarkation / Embarkation Card
http://www.ica.gov.sg/page.aspx?pageid=97&secid=94

海外で働くには労働ビザは必須

海外渡航・滞在・労働にあたってビザは極めて重要です。ビザ無しで渡航することが可能な国は日本人には多いですが、海外での労働にはビザが必要です。また、不動産取得など、個人に一定の範囲の投資が解禁されるためにも、外国人にはビザが必要なことは一般的です。ビザ無しで労働を含むこれらの行為をすることは違法であり、国外退去の処置を受けます。母国に居住している時には、医師などライセンスが必要な業態を除き、労働が違法であることは無いので、日本に居る時と同じ感覚で外国で労働していると知らぬ間に入国管理法違法から国外退去へとつながります。
シンガポールで国外退去になると、本人のみならず家族も含めて、24時間以内に国外退去を受けることになります。また悪質な場合には裁判を経て懲役になります。
ICA: FORAM 14A IMMIGRATION ACT
I understand that if the Controller of Immigration is satisfied that I or any member of my family breaches this undertaking or becomes an undesirable or prohibited immigrant, he will cancel my immigration pass and the passes of the members of my family, and we may be required to leave Singapore within 24 hours of such cancellation.
http://www.ica.gov.sg/data/resources/docs/Visitor%20Services/Form%2014A.pdf

リトルインディア暴動では、57人もが就労ビザを剥奪され、大量に国外追放になったことで、行政手続きについて政府が詳細を解説をしています。あわせて、毎年1万3千人もの国外追放者がいることを政府は発表しています。これには、不法入国者、オーバーステイ、労働ビザがキャンセルされた者が含まれます。

gov.sg: Law and Regulation: Who decides to repatriate foreign workers should they threaten the security of Singapore?

AsiaOne: 13,000 sent back annually
国外退去はシンガポールでだけの問題では済まなくなります。シンガポール以外の国のビザ申請でも「他国で国外退去になったことがあるか?」は犯歴確認と同様によくある質問です。SGで国外退去になると、他国のビザ申請でも不利になります。

雇用者にも当然罰則があります。適切な就労ビザなしで外国人を雇用した雇用者は2万ドル以下の罰金、もしくは2年以下の懲役です。

 

1. 労働ビザが出る前の就労

労働ビザが出るのを待っている間にも勤務を開始!軽やかにシンガポール生活がスタート!
・日本での仕事を退職し、シンガポール(SG)での最終面接のためにシンガポールに渡航。「いつから働ける?」と聞かれ「ハイ、明日にでも!」と元気よく答え、見事"東証一部上場の日系大企業"のシンガポール法人から採用通知を得ました。シンガポールで働く人出の不足に困っていた"日系大企業"は、「では早速明日から来て下さい。住む部屋探しも平行することになるので大変だと思いますが、期待していますので一緒に頑張りましょう」と激励を受けた。

違法です。
シンガポールで就労可能になるのは、労働ビザが許可された後です。本件では会社の説明からは、労働ビザが下りた様子はありません。典型的な労働ビザがでる前に勤務開始するフライング勤務です。
また、ビザが無いとシンガポールでは外国人は家の賃貸ができません。家主はSG政府(URA/HDB)に外国人への賃貸の登録義務があります。これは、シンガポールでは、外国人は管理対象なためです。ビザ無し外国人の宿泊先は、ホテル・サービスアパート・知人や親族の住宅になります。
労働可能なビザ:PR, ワーホリ, EP, S Pass, EntrePass, DPのLOC, LTVP+のLOC, Student's Passの一部

シンガポールで勤務するまで: IPA発行

0. シンガポールで働く決意をする
1. 転職サイト・人材会社・企業ホームページなどから、求人に書類応募する
2. 電話面接、スカイプ面接、日本での面接、シンガポールで面接を受ける。
3. 雇用主から内定(ジョブオファー)が出る。
4. 給料や入社日の条件交渉を経て、雇用契約書にサイン。
5. 雇用主はMOM(シンガポール労働省)に外国人雇用のためにEPかS Passか、EPがダメならS Passかでの申請を出す。
6. 最近では1~3日ほどで、EPかS Pass承認の通知が届く。この通知が届くと、In-Principle Approval letter (IPA) がオンラインで発行されている。このIPAが出て初めて、就労可能になる。
一般的に2週間以上たっても回答が無い際には、ビザ発行に問題が発生している可能性が高いです。MOMのEmployment/S Pass Self-Assessment Toolで再確認しましょう。
7. MOMにEP/S Passカード受領のためのアポをインターネットから入れる。MOMからの指示により、人によっては健康診断を受ける。健康診断受診対象者はランダムとのことだが、EP Q1といった取得容易なビザや発展途上国国籍が、健康診断受診を指示される確率が高い。
8. MOMでEP/S Passカードを受領する。EP/S Passカードを受領するまでは、Short Visit Pass (ビザ無し入国) での滞在期限のままなので、これでEP/S Pass記載の滞在期限に延長される。

SGで労働可能になる境目はIPAを受領してから後です。IPAを発行するかどうかがMOMの判定で最重要です。逆にIPAが降りると、EP/S Pass受領は原則大丈夫です。

よくある間違い:
・「労働ビザを申請しているから、その結果待ちの間は働ける」
と言う雇用主がいますがよくある嘘です。IPAがなければ、SGでは就労不可です。
・「仮の許可が出ているから働くのは大丈夫」
というのも嘘です。SGに「仮の労働ビザ」というものは存在しません。強いて言うならIPAがそれになり、IPAは「仮の労働ビザ」とも言えますが、IPA発行が意味する労働許可については「正規」のものです。

2. 再入国によるシンガポール滞在期限延長

内定出てサインをして働き出したが、いまだにビザ申請結果待ち… ビザ無し入国の期限が切れそうだから、一度ジョホールバルに出て即帰り滞在期限を引き伸ばす

違法。上記 1. のパターンが悪化したケース。
金融危機(リーマン・ショック)以降、EP取得が困難になっています。特に基本月給$4500未満で給与提示受けた人や大卒未満の人は要注意です。$3000~$4500であれば、S Passが発行される可能性がありますが、S Passは発行枠があるので、それを使いきっていれば、労働ビザが発行されません。また、$3000~$4500であっても、特に大卒未満の最終学歴であれば、ビザがS Pass含め発行されない可能性があります。
就労ビザが出る前の勤務の何が問題かと言うと、勿論違法なこと。勤務者とその家族は国外退去、雇用主も勿論処罰を受けます。これがEPが出るまでの1週間とかであれば、"逃げ切れる"のでしょうが、こういう事をする企業は「日本の大企業、シンガポールの中小企業」なことが多いです。SGではこじんまりと事業をしていて色んな事に疎かったり、現地の独自判断で危なっかしいことをやっていたり、安い給料で外国人ばかりを雇っていたりします。つまり、待てど暮らせど労働ビザが出ず、違法就労が長期化し、挙句の果てにビザが却下されることがあります。
特に飲食のサーバーといった「日本人が好まれるが給与・学歴面からビザが取りにくい仕事」では、確信犯として2~3ヶ月でも違法就労で働かせ、事実上日本人を次々に使い捨てている所もあります。

労働ビザ申請して2週間経ってもMOMから回答待ちの際には、なにかしらシリアスな属性問題が発生していることが多いです。MOM の Employment/S Pass Self-Assessment Tool でチェックしましょう。

シンガポール滞在延長目的での出国と再入国

これが就労しておらず労働ビザの結果待ちだけであれば、直ちに違法ではないです。ただし、シンガポール滞在を引き伸ばすための出国と再入国は正当な理由とみなされないので、繰り返していると入国を拒否されます。
"シンガポールにビザ無し入国して、シンガポール国境にあるマレーシアのジョホールに出国し、再度シンガポールに戻る"、という行動へは、シンガポール滞在許可日数ギリギリ近くを使い切ってJBに出国し、シンガポールに短期で再入国してくると「シンガポール滞在は観光目的でなく何かおかしい」とシンガポールのイミグレーションは当然気づきます。
特に陸路/海路で短期再入国をすると、人によっては一回目からシンガポールイミグレーションで詰問されます。遅くとも二回目で詰問されます。聞かれるのは、シンガポール滞在目的や、どこに泊まっているのか、知人・親族がいるか、ずばり就労していないか、などです。イミグレーション担当官の判断により、以下の結果になります。

・通常通り
通常通りのシンガポール滞在可能なSocial Visit Pass(ビザ無し入国)を発行。滞在許可日数が14日か30日かは運次第
・警告
Social Visit Pass(ビザ無し入国)を発行されるが、「次のビザ無しでの入国は認めない」と通告を受ける。日数が14日か30日かは運次第
・滞在許可日数減
「次のビザ無しでの入国は認めない」と通告を受け、Social Visit Pass(ビザ無し入国)の発行を受けるが、滞在は3日等短期間に縮められる。事実上荷物の整理期間が与えられているのみ
・入国拒否
入国できません。

入国拒否は日本人にはまれですが、「次の入国は認めない」は頻繁にあります。ジョホール往復での滞在延長はできて3回まででしょう、4回した人を聞いたことがないです。なお、ジョホールの陸路以外でも、インドネシアのビンタン島・バタム島のような海路でも扱いは同じです。滞在延長目的の一時出国とみなされます。

合法的な滞在延長方法:Extension of Short Term Visit Pass (e-XTEND)

シンガポールで労働しておらず、就職活動中・内定待ち・条件交渉中・労働ビザ審査待ち等の状況であれば、Short Term Visit Pass (ビザ無し入国)滞在期間の延長申請が可能です。滞在期限まで2営業日以上あれば、現在の滞在有効期限から30日間の延長をオンラインで申請可能です。つまり、e-XTEDNを使うことで

「入国時の30日、e-XTENDでの延長30日、合計で60日」

の滞在が可能になります。ただし、シンガポールを出国した後に5日以内にSGに再入国できません。このe-XTENDが合法でのシンガポール入国期限延長手段です。下記ICAリンクからe-XTENDで申し込み可能です。

最近はe-XTENDが却下される事例を少数ですが聞くようになっています。却下の理由は不明です。申込以前に出入国を繰り返しているとe-XTEND却下の可能性が高まるようです。却下された際には、アピールという再申請をICAに訪れて窓口でできますが、ローカルスポンサーが必要です。シンガポール市民とPR(永住権保持者)のみがローカルスポンサーになれます。アピールについては、下記ICAのリンクからe-XTENDリンクを選択し、Individualリンクをクリックすると詳細を確認できます。
なお、入国から89日まで伸ばす事も可能ですが、そのためには家族にシンガポリアンがいるか、特定病院で診断書を得た病気治療目的の場合のみ可能です。
ICA: Visitor on Short Visit for Social Purposes


3. 給料キックバック

ビザ取得に給料足りないから、役所には$4500で月給出しとくけど、本当は$2800になるけどいいかな?

違法。
給料日にキックバックの差額をキャッシュで雇用主に渡すのと引換に、給料をチェックで受け取るという方法です。MOMに届け出た金額でなく、約束した額をキャッシュで受け取る、という方法もあります。実際以上の収入があることになるので、税額も本来以上の額に増えます。
給料キックバックへの雇用主は2年の懲役、かつ、もしくは、$2万罰金。
MOM: Amendments to the Employment of Foreign Manpower Act
最近、これが飲食店でかなり増えてきました。日本人でも飲食で目立つようになってきました。和食は文化があるので、サーバーも日本人が好まれますが、マネージャーでもなければ、基本月給$4500を払える所はなかなかないです。また求職者の学歴も大卒以上が少ない職種です。合法にビジネスをしている店は、マネージャー以外の日本人は、DPかワーホリです。
2014年2月には250名が起訴される自体になっています。EPとS Passを合わせて33万人しかいないので、これだけでも約千人に一人が摘発されていることに。また、シンガポールらしく実名報道がされています。起訴を受けた者は今後シンガポールで就労できないことが明記。
MOM: 22 Foreign Employees From Four Companies Prosecuted For Falsely Declaring Their Salaries To MOM

外国人従業員に学歴詐称させたり、外国人就労枠を増やすためにシンガポール人の名義を従業員として借りる行為(ファントム)もあります。
2016年10月に、キックバックを雇用主が強制したMOMが起訴した件では、従業員がキックバックした全額が返済されるように、MOMが雇用主から回収し返済しています。キックバックを強いる違法な待遇にあった際には、せめて退職時にこれまでのキックバックを返還されるように交渉しましょう。
MOM: Managing Director Charged For Collecting Over $105,000 In Kickbacks

4. 自営/サイドビジネス/ノマド

旦那の駐在で引っ越してきたんですけど、日本でもやっていた「隠れ家ネイルサロン」をシンガポールでも始めました

違法です。駐妻なのでDPでの滞在です。DPはLOCがあると雇用されての就労は可能ですが、個人事業主のDPにLOCは発行されなくなりました。
母国では何の問題もない行為が、外国人だと認められない例です。日本と同じ感覚でいると、不法就労で国外退去です。外国人が労働するには許可が必要です。
もちろん、これはネイルサロンでなくても、料理教室・ピアノ教室・ダンスレッスン・お茶・着付け・琴教室、習字・そろばん・家庭教師・塾でも、就労すれば同様に違法です。
特に駐在家庭では、家族がImmigration Actに違反すると、違反した家族のみでなく、その家族のビザスポンサーであるEP所持の駐在本人も、国外退去を受けます。ビザスポンサーの駐在員がEP剥奪になるので、無関係でも子供のDPも連鎖で剥奪され、子供もシンガポールに滞在できなくなります。

最近、EPやS Passなどの就労ビザを持たずに、語学学校の学生ビザ等でシンガポールに滞在し、その間ノマドで日本で受注した仕事をする人もいますが、シンガポールでの労働なので、これも違法です。

よくある間違い:
・「ACRAに会社登録したので許可はとっていますよ?登録番号もあります」
法人登録 (ACRA) と労働許可 (MOM) は別です。法人がACRAに登録されていても、外国人が働けるかどうかはMOMの判断です。その労働許可となるビザがなければ違法です。

ビザスポンサーをしているDPのみでなく、EP取得者本人が副業をするのも違法です。EP発行時に発行されるEPカードには企業名の記載があります。勤務先がビザスポンサーになっており、就労はEPカードに示されている企業のみで許可されています。ですので、「携帯アプリを作ったので目指せアプリ長者!」「Amazonキンドルで自費出版して小遣い稼ぎ!」はたとえ販売会社をACRAに登録しても、ACRAに登録した法人から労働ビザを取得していなければ違法です。自営可能なビザはPR、EntrePass、および自分を従業員に雇用するEPの3つのみが原則です。そして現在、MOMは複数のEPを発行しません
シンガポールビザ:滞在目的別、利用可能ビザ: 企業勤務ですが、週末起業からまずは始めます!
副業にはイミグレーションだけでなく民法的にも問題があるケースもあり、勤務先の就労規則が兼業を許可していなければ、懲戒解雇などの処分を勤務先から受ける可能性があります。PR保持者は就労許可を必要としませんが、起業前に勤務先の就業規則を確認しましょう。

 

5. インターンシップ・無償労働

「今回はインターンシップで給料がでないから、労働ビザは不要なので申請しないから。ビザ無し入国で来てもらうと、有効期限が一ヶ月だから、観光も兼ねてジョホールやビンタン島にも行ってもらうね。」

違法です。

シンガポールでは労働が有償でも無償でも適切な労働ビザが必要です。無償や若干の報酬が支払われるインターンシップでも、労働ビザが必要です。
ICA: Form 14 IMMIGRATION ACT [CHAPTER 133, SECTION – 55(1)]
PART IV - DECLARATION BY APPLICANT
I further undertake not to be engaged in any form of employment or in any business, profession or occupation in Singapore whether paid or unpaid, without a valid work pass issued under the Employment of Foreign Manpower  Act (Cap. 91A).

インターンシップにはワーホリビザが利用可能です。ワーホリビザの詳細はこちら(「シンガポールのワーホリビザはトップ大学のみに発行」の背景)。
Training 用のEP (Training Employment Pass) もありますが、最低月給にS$3000必要であり、SG以外の国で既に雇用されている人が3ヶ月以内のトレーニングをSGで受けるケースでの利用が一般的でしょう。Work Permit (WP) は日本人対象外なので、Training Work Permitは応募できません。
ワーホリ該当大学でなければ、インターンシップを経由しない雇用を目指すのが現実的です。

MOM: I wish to do an internship/undergo training in Singapore

 

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