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シンガポール被扶養者DPが、WP取得で就労再解禁へ

うにうに @ シンガポールウォッチャーです。

2021年3月に、DP被扶養者ビザでのLOC就労が打ち切られるとMOMが発表しました。2021年5月以降は、新規LOCを発行しなくなるため、それ以降は「EPやSパスなどの就労ビザを取得するように」とのことでした。
uniunichan.hatenablog.com
その方針のままでいくのかと思っていたところ、再変更がひっそりと提示されています。
DPはWork Permit (WP) を取得することで、就労が可能になりました。訳します。

シンガポールでの就労
Dependant's Pass所持者は、シンガポールでの就労を希望すれば、EP、SパスかWork Permitの申請が必要になる。取得就労ビザの必要給与、外国人割当枠、雇用労働税Levyが必要になる。
注意:

  • EPやSパスを取得するDPは、DPがキャンセルになる。
  • WPを取得するDPは、WPの有効期限がDP期限に制約される。適切なパス所持者の被扶養者として、出身国要件、半年おきの健康診断、保証金、妊娠制約は対象外になる。

Working in Singapore
Dependant’s Pass holders will need to apply for an Employment Pass, S Pass or Work Permit if they wish to work in Singapore. The relevant qualifying salaries, quotas and levies of the respective work passes will apply.
Note:

  • Dependant’s Pass holders who get an Employment Pass or S Pass are required to cancel the Dependant’s Pass.
  • Dependant’s Pass holders who get a Work Permit will have the Work Permit’s validity period tied to that of the Dependant’s Pass. As dependants of valid pass holders, they will not be subject to source requirements, six-monthly medical examination, security bond and pregnancy restrictions.

・シンガポール労働省 (MOM): Working in Singapore

規制が書き換えられています。書き換わった日は不明です。
※編注: 以前の規制の記述はここで見れます。

日本人にとって最も重要な変更点は「WP対象国出身でなくても、DPはWP取得が可能になった」ことです。
WPは単純労働者向けの就労ビザです。どんな国籍でも取得可能なのではなく、アジアからの特定国出身者に限定され、日本など先進国は除外されていました。言語・文化など移民管理の都合だと私は理解しています。
「給料を下げても良いので、シンガポールでWPで働きたいです」ということは、日本人には認められていなかったということです。
従来、日本人が取得可能と公開されているWPは、国籍制限がない芸能向けWP(ホステス・ダンサー等)に制限されていました。

シンガポールの就労ビザは、WP・Sパス・EPと原則3種類です。おおざっぱな違いは、WPが最低給与制限なし、Sパスが最低月給$2500から、EPが$4500からです。必要給与は、年齢・学歴で上下します。ビザの種類によって、家族帯同などの条件や、医療費負担/住居手配など雇用主の管理責任範囲が変わります。

規制強化と緩和

従来のDP LOCと比べて、規制強化と緩和の2つの面があります。

■規制強化

  • 外国人雇用枠が適応される
  • 外国人雇用税Levy支払いが企業に必要になる
  • WP対象外の産業の企業では雇用できない
  • 18歳未満の子どもは申請年齢を満たさず取得不可 (バイト/無給インターンも不可)

■規制緩和

  • SパスがスポンサーのDPは、以前は就労不可だったのが、可能になった

■変更点

■未変更

  • 最低給与(労働時間)の設定なし

SパスがスポンサーのDPが就労可能になったことは注目です。
また、「WPを持つことへの心理的抵抗」は小さくないはずです。

WPの概要

WPの特徴です。
・シンガポール労働省(MOM): Work Permit for foreign worker

  1. 最低給与がないこと
  2. 外国人雇用枠が(Sパスより)大きいこと
  3. 外国人雇用税Levyの支払い義務 ($300から$950)
  4. 従業員の医療費は保険加入が必須で、なおかつ歯科も含め全額が企業負担になる

対象業種です。地元民とは国民か永住者PRのことです。

  • 建設: 地元民1人の雇用につき7人のWPを雇用可
  • 製造: 外国人比率60%まで
  • 海洋造船: 地元民1人の雇用につき3.5人のPWを雇用可
  • プロセス(化学): 地元民1人の雇用につき7人のWPを雇用可
  • サービス: 外国人比率35%まで

サービスは、飲食/小売に加えて、コンサルなどホワイトカラー業種を含む多様な産業を含んでいます。下記がサービスの対象産業です。

  • 金融/保険/不動産/IT/ビジネスサービス
  • 運輸/倉庫/コミュニケーション
  • 商業(小売/卸)
  • コミュニティ/ソーシャル/パーソナルサービス (家政婦は除く)
  • ホテル
  • レストラン/コーヒーショップ/フードコート/他の認可飲食業

企業の業種が建設/製造/プロセスであれば、人事経理やR&Dといったオフィス職種でもWP取得が可能です。
Sパス雇用枠は、サービスでは地元民比率10%、製造20%、建設/海洋造船プロセスで18%だったので、Sパス雇用枠を使い果たしている企業でも、雇用枠が大幅に増え雇用チャンスがあります。外国人雇用に厳しいサービスでも、3.5倍に増えます。
・シンガポール労働省(MOM): S Pass quota and levy requirements

対象産業以外の、例えばメディアなどはWPが発行されません。
もちろん、WPは雇用されての就労が対象なので、自営やフリーランス(YouTuber/ブロガーなどを含む)にはなれません。

今後の動向

もともとDP LOCが好まれていたのは、

  • 外国人雇用枠が不要 (多くの日系企業はSパス枠を使い果たしている)
  • 最低給与設定がない (報酬よりキャリアをつなぐことが目的の駐妻を相場より安く雇用したい)

が理由でした。LOC停止で悲鳴が出たのは、Sパス発行に必要な月給$2,500を満たす給与を大半のDPが受けていましたが、DPからSパスに切り替えるにもSパス雇用枠が残っている企業が少なかったからです。
今後、日系人材会社からDP所持者へのWP求人が、以前のLOC時代のように潤沢に出てくると思われます。
以前の記事で紹介した「自営アウトソースを使ったグレーな雇われ就労」と違い、これは完全に合法な就労です。シンガポールで就労を希望されるDP所持者の、有力な選択肢になります。
uniunichan.hatenablog.com

「DP歓迎」「WP提供」の求人広告は違反

念のために記載しますが、今後増えると思われる下記の求人広告はTAFEPという公正雇用ルールに反し全て罰則対象です。

「DP歓迎」 ※シンガポール人以外を好む記述は違反 (DP所持者は外国人だから)
「WPを提供します」 ※シンガポール人以外を好む記述は違反 (WPを所持できるのは外国人だから)
「日本人向け」 ※シンガポール人以外を好む記述は違反
「日本語求人」 ※日本語が必要な理由の記載が必要なため違反
「駐妻も勤務可能な就業時間」 ※シンガポール人以外を好む記述は違反。性別指定は違反
・TAFEP: Job Advertisements

過去には、リクルート海外子会社のRGFが国籍表記と年齢指定で求人広告を出し、30日間の外国人雇用禁止と謝罪提示の処罰を受けています。
・today: 15 firms punished for posting discriminatory job advertisements

これらの問題がある求人広告を見るのは、採用企業、人材会社、広告掲載のフリーペーパーが知識不足なことが理由ですが、英語でないため地元民に発見されず、無法地帯になっています。この手の求人をする企業は、シンガポールの労働規則や労働契約へのコンプライアンスに問題を抱えているブラック体質なことが多く、関わらないことをおすすめします。
TAFEPへの通報はこちらでできます。
その一方で、求人広告ではコンプライアンスに準拠していても、「DPなどでの選別を求人会社が行い足切りするだけ」という「地下に潜る」活動になるだけで、悩ましいものがあります。




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