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シンガポールで日本人が合法リモートワークをする3条件~フリーランスは不可~

シンガポールウォッチャーのうにうにです。
最近、日本人コミュニティで急速に広まっているのが「シンガポールに住んでいる外国人が、シンガポール国外と行うリモートワークは合法」というものです。
リモートワークの調査結果をまとめました。
結論から言うと、「シンガポールに住んで、海外とのリモートワークは可能」は特例への条件として不十分で、雇用主が必要です。業務委託契約のフリーランスや個人事業主や自営では就労許可が必要となるため、特例を利用できる日本人はまずいないでしょう

※注意:本記事では就労ビザの扱いを中心とします。税は記述の範囲としません。税については、下記リンクの提示にとどめます。

MOMへの問合せと回答

日本人コミュニティ内で広まっているのは、
「MOM(シンガポール労働省)サイトには書いていないが、個人的にMOMに問合せた所、シンガポール人の労働を奪うものでないから、リモートワークは行って良いとの回答を得た」
というものです。これが本当なら、従来は永住権保持者PRであるか、シンガポールに法人を設立して就労ビザ(EP/S Pass)か、DP(扶養ビザ)ならLOC取得がリモートワークには必要と考えられていたのと比べると、劇的な緩和です。
「公開されていない」「個別に問合せると特例をコソッと教えてもらえる」というのがミソです。書かれていないことは証明できないために、不正確な内容が広まっています。
MOMに私が問い合わせをしました。MOMへの問合せは、下記から誰でも行えます。

MOMからの回答を訳します。

EPとS Passホルダーはシンガポール登記企業からジョブオファーが必要で、各就労ビザの基準を満たす必要があります。一般的に、EPとS Passをスポンサーする雇用主のためにのみ、働くことが許されており、収入を増やす追加での仕事は許可されていません。
一方、DPは、EPとS Pass保持者の家族が、シンガポールに同行することができるようにするものです。
DP保持者は、下記条件を全て満たせば、就労ビザ(work pass)なしにリモートワークをすることができます。

  • DP保持者は海外企業に勤務し、自宅から働くこと。かつ、
  • 海外企業はシンガポールに(現地法人などの)存在がないこと。かつ、
  • DP保持者は、シンガポールで顧客に会ってはいけないし、サービスを提供してもいけない。

MOMが提示した3条件の英語原文やさらなる問合せには、上記MOM窓口に直接問い合わせ下さい。

シンガポールで外国人が合法にリモートワークを行うDP特例3条件

EPとS Passは、副業ができません。シンガポールでの就労には、EP/S Pass/LOCなどの就労許可が勤務先ごとに必要ですが、同一人物に複数の就労許可は原則として現在は発行されていません(例外: EP所持者の関連会社でのディレクター)。ですので、EPとS Pass所持者は、就労ビザ申請時に認められた勤務先とは別に、リモートワークの副業はできません。就労許可無しにリモートワークを行えるのは、DPのみの"特例"です。

MOM回答を補足します。
リモートワークとは、「シンガポール以外の外国企業と雇用関係があり、シンガポールで業務を行うが、外国にたいしてサービス提供されるもの」ということになります。
(1) DP所持者は海外企業に勤務し、自宅から働くこと。
MOM原文では working for an overseas company であり、フリーランスや個人事業主や自営ではできませんwork forは雇用関係 (employment) を意味する言葉であり、「Xのために働く」は不正確です。在日本企業との雇用契約では、労働時間次第で各種社会保険(健康保険・年金など)を受けることになります。
また、オフィスを借りられず、知人宅・カフェなどのシンガポール内の出先で仕事ができません。自宅をオフィスとして使うことになるので、URAへの登録が必須です。

(2) 海外企業はシンガポールに(現地法人などの)存在がないこと。
リモートワークであっても、シンガポールに登記されている法人がある企業への勤務は、できません。該当シンガポール法人に正規に雇用されて就労許可をとるように、という意味です。例えば、シンガポールに現地法人があるパナソニックには、日本法人へのリモートワークであってもDP特例は適応できません。シンガポールのパナソニック現地法人から就労ビザを得て、日本法人業務をすることになります。
(3) DP所持者は、シンガポールで顧客に会ってはいけないし、サービスを提供してもいけない。
"製品"の提供はリモートワークでは不可能なので、"サービス"とのみ書かれています。自宅でしか仕事ができないのだから、国内で人に会えませんし、たとえ職場として登録した自宅への訪問を受けても業務で人に会えません。対面だけでなく、電話・スカイプなどビデオ通話も含め、シンガポール在住顧客や見込み顧客、およびシンガポール旅行中の顧客および見込み顧客と会うのは避けましょう。在シンガポールの法人・団体・個人にサービスを提供するなら、それはもはやリモートワークではない、という意味です。

具体的に可能なリモートワークには、

  • IT開発
  • マーケティング
  • デザイナー

などが想定されます。たとえば、夫がシンガポールに駐在し、妻がDPで帯同する。妻はウェブデザイナーとして日本での雇用を継続し、シンガポールから日本に対して就労ビザなしでサービス提供することが許されるということになります。
つまり、フリーランスや個人事業主や自営にDP特例適応が認められておらず、雇用契約が必要になるため、実際に利用可能な人はまずいない、ということです。現実的に、今の日本でリモートワークですら活用は限定的であり、海外在住者にリモートワークでの雇用を認める勤務先を探すのは、相当困難でしょう。
ランサーズ、クラウドワークス、oDeskなどで見つけたリモートワークは、まずDP特例3条件を満たしません。業務委託契約であり、雇用契約が無いからです。

違法就労は止めましょう

リモートワークでの違法就労例

今回、調査して、この記事を書いた2つの理由は、「リモートワークは合法」と主張する人が出てきたことと、「リモートワークは合法と主張した上で、MOMが認めている範囲を超えて、違法就労をしている人がいること」です。下記はDPリモートワークでの違法就労例です。

  • 有償オンラインサロンや、広告収入があるブログなどのネット運営は、できません。 (雇用関係が必要)
  • 雇用契約がないウェブメディア・雑誌への記事提供はできません。(例:PVに比例した報酬を受け取る「Yahoo!ニュース 個人」、原稿料を支払う東洋経済オンラインなど)
  • シンガポールに現地法人がある日経への記事提供はできません。(現地法人から就労ビザの取得が必要)
  • シンガポールのセミナーにパネリスト等として参加することはできません。 (顧客対面の禁止)
  • DPでないEPやS Passが、ビザ取得勤務先以外の業務をリモートワークで行うことはできません。(副業禁止)

「リモートワークの可否をMOMに問合せた所、問題ないと言われた」と主張している人であれば、私と同じ3条件の回答を得ているはずです。それにもかかわらず、違法就労を行っているのであれば、MOMから得たDP特例3条件を誤解しているか、MOM見解が非公開であるために強弁しているかの、どちらかでしょう。

DP特例3条件を丹念に読む

DP特例3条件を読むと「こうすれば合法リモートワークとしてできるのではないか」と気づくことがあります。例えば、

  • 顧客をシンガポール国外居住者に限定すれば、有償オンラインサロンや有償購読サイト運営は可能では?

などです。
上記をMOMに追加で問い合わせました。結論は「(リモートワークではなく)個人事業主にあたり、不可。就労許可をとれ」というものでした。これは、DP特例3条件の(1)での「リモートワークには海外雇用主が必要(フリーランスは不可)」という内容にも合致します。MOMからの回答を訳します。

ビジネスオーナーとして自営を希望するDP所持者にとって、申請すべき正規の就労パスはアントレパスです。アントレパスは、シンガポールでビジネスを運営することを希望する外国人のためにデザインされています。
ビジネスの登記の前に、DP所持者はアントレパスを申請することをアドバイスします。ビジネスの登記ができても、アントレパスの付与を保証するものではないからだ。
アントレパスの情報には、下記リンクを参照して下さい。 http://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/entrepass

MOMに新規企業設立でのビザを問い合わせると、EPではなくアントレパス取得を回答されることがあります。「政府認定ベンチャーキャピタルから投資を受けていること」などアントレパスのほうが、大半の人にはEPより条件が厳しいです。現在、アントレパスで滞在している日本人を私は知りません。いずれにせよ、EPやLOC取得ができないのが理由で、DP特例利用を検討している人の選択肢にはならないです。
以上から、趣味の範囲を超えて、アフィリエイト報酬や顧客からの食事・試供品など物品・サービス提供があり就労とみなされるブロガーも、リモートワークではなく個人事業主のため、DP特例3条件ではできません

他の合法化には、誰もが思いつくであろう、フリーランスの業務委託契約ではなく、「実際は案件単位でも、契約社員としてこまめに有期契約を繰り返す」ことで雇用契約に見せかけることは、止めましょう。たとえこういうリスク有る雇用契約を受け入れる企業があったとしても、契約社員との主張に必要な勤怠管理の証明が困難だからです。勤怠管理を整えてまで契約社員と主張するのであれば、MOMとの紛争を覚悟して下さい。
また、日本などで自分・家族・親族・知人名義で法人を設立して、そことの雇用関係を主張するのも、実態がフリーランスなので、MOMとの紛争を覚悟して下さい。MOMが「面倒だからこの件から手を引こう」と思うか「悪質だから再発防止のために一罰百戒で取り上げてプレスリリースを出そう」と思うかは、分かりません。シンガポールの就労許可で、最終判断はMOMです

シンガポールでは報酬なしでも労働にあたる

シンガポールでは、報酬がなくても、趣味・ボランティアではなく、労働と判断される行為があります。代表例は、インターンシップです。シンガポールではインターンシップを含む無償労働にも、外国人は就労ビザ取得が必要です。就労でなく趣味とみなされるためには、報酬が無いことが最低限必要になります。
報酬があれば労働と判断されます。報酬には、金銭以外でも、食事・物品(試供品)提供・サービス(タダ券・割引券・旅行・移動手段)供与が含まれます。
詳細は下記を参照下さい。
uniunichan.hatenablog.com

非公開のDP特例3条件

最後に、念の為ですが付記します。
リモートワークのDP特例3条件はMOMサイトに提示されていません。利用可能者があまりに少ないとしても、情報公開が徹底しているシンガポールでは異例です。
非開示ということは、MOMが予告なく改変・撤廃する可能性があるということです。
リモートワークを検討しているDP保持者は、開始前と、開始後も定期的にMOMにご自身で確認して下さい。


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