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今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

シンガポールのメイドは奴隷か?!と議論する前に知っていて欲しいこと

オピニオン シンガポール時事

月6万円でフィリピン人メイド in 香港

きっかけはこのツイート。

これが発端になったツイッターでの議論がまとめられています。

香港のフィリピン人メイドが話の中心ですが、シンガポールの外国人メイドへも共通した話です。
読むと、シンガポール関係者の一定数は絶句するはずです。これだけ大量の記述があるのに、シンガポールのメイドの実情に適切なインプットがなく、メイドや雇用主の実態を描けていないためです。
※注: Togetterでは「女性の労働参画」も主要議題ですが、私の関心である「シンガポールでのメイド雇用」を本記事の主題にしています。

シンガポールでの外国人メイドの待遇

シンガポールの就労ビザ区分では、外国人家事労働者 (Foreign Domestic Worker) と言いますが、一般的にメイドと呼ばれています。日本語での家政婦に相当します。

まずはシンガポールでの外国人メイドのファクトを記します。

ファクト: メイドの人数と国籍

シンガポールは移民国家です。永住者を入れて人口の4割が外国人です。メイド用の就労ビザ受領者は237,100人 (2016年6月)。これは、シンガポールでの外国人労働者の20%(外国人全体では14%)、全人口での4%と、かなりの割合を占めています。
国民と永住者の世帯数122万で割ると、5世帯に1世帯がメイドを雇用していることになります。
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下記出所より筆者にて加工

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ファクト: メイドの就労ビザ申請資格者
性別 女性のみ
年齢 ビザ申請時に、23歳から50歳
国籍 バングラデシュ、カンボジア、香港、インド、インドネシア、マカオ、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、韓国、スリランカ、台湾、タイ ※日本人はメイドビザの申請不可。出身国との給与水準の兼ね合いで、実際に雇用されている国は一部
学歴 最低8年間の公教育修了者
健康診断 シンガポールでの医師による。入国時と半年おきに必須。失格するとメイドは帰国
政府への保険証書 雇用主は政府への保証金S$5,000への保険証書を購入する。メイドへの責任不履行(給与未払い)や管理責任(ビザ失効後にメイドが母国に未帰国、メイド失踪)が発生すれば、雇用主は保険会社に支払い義務が発生する。失踪時に雇用主が警察への7日以内の届けなど妥当な努力をすれば、支払いは半額になる
ファクト: メイドの一般的な待遇

雇用主の毎月の負担は、給与と雇用税を併せて千ドル前後、それ以外に衣食住、医療費です。

給与 フィリピン人インドネシア人はメイド就労を管理する大使館指定により、月給$550(約4.4万円)以上。介護が加わると$600(約4.8万円)を超える。天引きは基本的に発生しないため、給与額面が手取り(注:シンガポールは最低賃金という制度がない)
福利厚生 シンガポールの公的制度の社会保障への加入は、永住者と国民が対象のため加入できず、支払も不要。雇用主が衣食住、医療費全額、雇用契約終了時の里帰り航空券を提供。医療保険は入院と手術に最低S$1.5万(約120万円)、個人損害保険は最低S$4万(約320万円)が義務
雇用主が雇用税(levy)を負担。月にS$265(約2万円)、16歳未満の国民の子育て・親や障害者の介護であればS$60(約5千円)に減税
就労ビザ 期限は最長2年、雇用主が変わると再申請。家族帯同は不許可であるため、妊娠するとビザが失効し帰国になる。年100人ほどが該当する。ホワイトカラー向けビザ(S Pass/EP)が対象の永住権は申請できず、永住者が前提である国民としての帰化申請もできない
労働時間 制限規定無し。実質は大半が待機時間。家事の特殊性のため、雇用法(EA)の対象外。(シンガポール雇用法はデスクワークの仕事では月給$2,500(20万円)から対象外で、保護外の人がもともと多い)(日本でも家事使用人は労働基準法の適応外)
休日 週に一日(法定)。メイドの同意のもとに、1日分以上の給与支給で追加労働か、休みの振り替えを頼める
人材紹介費 諸費用は雇用主負担だが、例外は出身国人材会社の斡旋費。メイドが雇用主に前借りし、分割で返すため、働き出した数ヶ月は、返すまで給与が残らない。総額は法律で給与の2ヶ月が上限であり、一般的に$800~1200。シンガポール側人材会社費用は雇用主負担
住環境 労働省MOMは個室の提供を促している。それができない際には、適切な広さとプライバシーの提供が必要になる。子守相手や介護相手との同室利用が4割にのぼるアンケートがある。台所で寝泊まりさせる雇用主もまれいる。ティーネージャー以上の男性との同室利用は身体的障害者介護を除き違法
副業 副業は違法。雇用主が自宅での家事以外をさせることも違法で、雇用主は罰せられる。
講習 初めてメイドを雇う雇用主には、ネットか教室でのオリエンテーション受講が必須。初めてシンガポールで働くメイドも、メイド用の講習受講が必須。1年間にメイドを4回以上変更する雇用主は講習か担当官との面接が必須

付記です。

  • 住み込み: 勤務地である雇用者宅での住み込みのみが雇用形態です。通いは認められておらず、できるのは就労制限がないシンガポール人および永住権取得者です。
  • パスポート: メイドのパスポートを、同意の上で安全上の名目で雇用主が保管することは許可されている。要望があれば返却が義務。国内身分証(IC)はメイド所持が義務。

シンガポールは何のために他国からメイドを雇用しているか

5世帯に1世帯がメイド雇用をしているということは、富裕層に加え中間層も、育児や介護のために、人生のライフステージにあわせて一定期間の雇用をしていることが分かります。
シンガポールでも高齢化社会の進展で、介護のために現在24万人のメイドが、2030年までには25%増えた30万人が必要になると、政府は推測しています。

シンガポールでは特に中間層では、両親ともにフルタイムで共稼ぎが一般的です。女性は、特に子どもの幼児期に、メイドを活用した育児で、フルタイムの仕事に復帰します。共稼ぎでないと経済的に苦しくなることも、シンガポール法定の有給産休期間が4ヶ月(国民)と日本より短いことも、キャリア断絶が最小限になる制度設計です。シンガポールの親もできるだけ子どもとの時間を作りたいとは思っていますが、日本の"三歳児神話"(子どもは三歳になるまでは母親が育児に専念すべき)のような風習は、シンガポールにはありません。

メイドは何のために外国でメイドとして働くのか

メイドが働くのは、勿論、お金のためです。やりがいや海外生活というふわふわしたものではありません。S$550 (4万4千円) の給与は手取りであって、満額がメイドの収入になります。それ以外の衣食住および医療費の諸経費は雇用主負担です。
メイドは奴隷ではなく強制労働を強いられていないので、自分の意思でメイドの仕事を選び、環境に納得いかなければ退職する権利があります。
働き始めた何ヶ月かは、人材会社への斡旋費用を返金するために実質的な拘束期間でもありますが、その後は自由に退職可能です。日本とシンガポールとでは雇用慣行が違います。例えば、日本では雇用主が研修費の返還請求をすることは違法ですが、シンガポールでは合法。一定期間働くと返金免除が一般的ですが、例えば、航空会社のように研修費が高額だと拘束期間が年単位になることもあります。当然、入社時に条件提示されます。メイドの斡旋費用返金の実質的な拘束期間は、これと類似です。

メイドは、故郷で子ども・家族・親戚・友人に囲まれていた暮らしから、慣れない外国で雇用主と暮らすことになり、かなりの決意が必要です。それでもメイドを選ぶのは、故郷より稼ぎがよく、その稼ぎがあれば家族が幸せに暮らせるからです。幸せになるとは、子どもの学費、家族の治療費や生活費の取得を意味します。メイドをしている間にメイド自身が幸せになれるかどうかは、雇用主との関係にかかっており、良好な関係を築くまでは「(自分を犠牲にして)家族のために働きに来た」という状況であることは、否めません。家族のためにブラック企業で働き続ける、日本のサラリーマンを思い出させます。

一部のメイドは、手配業者の甘言で騙されて、メイドになることもあります。法定額以上の斡旋費用や本来認められない費用が搾取されます。シンガポールではこれは犯罪であって、ビザ申請でメイドが目にする書類(IPA)に斡旋費用が書かれていますが、それでもすり抜けて悪質な行為を働く違法業者があります。

外貨送金をあてにする送り出し国

フィリピンは、人口の1割の1,023万人が海外で暮らし、母国への送金額はGDPの1割にもなる出稼ぎ国家です。英語が話せるために海外で仕事を見つけやすく、それが逆に頭脳流出にもつながっています。
インドネシアは、人口の3%弱になる700万人の海外就労者がおり、そのうちの6割がメイドです。母国への送金は105億米ドルにのぼり、GDPの1%相当を占めます。

なぜ外国人メイドの制度が成り立つのか

先進国シンガポールと発展途上国との国際経済格差の利用です。先進国で雇用しながら、送り出し国の給与と物価水準をできるだけ維持したい、という無茶に応えるのが目標です。そのためにシンガポールでは、衣食住はキャッシュでなく雇用主現物支給などの仕組みがとられています。
「人手不足」と言っても、本当に人手が足りない仕事は滅多にありません。単に「雇用主が希望する給料で働いてくれる人がいない」ことを「人手不足」と言ってるだけで、大半の仕事は今の給与の倍をも出せば求職者が殺到しますし、その給与水準を継続すればスキルミスマッチにも該当する経験を他所の職場や学校で、勝手に積んで応募してくれるようになります。
雇用主にとって、給与を上げずにこの人手不足を解決する方法として、移民導入は有効です。
労働者からみても、就労ビザの障壁をクリアでき合法で働けるなら、給料が高いところが良い、と考えるのは自然です。

フィリピン: 外国で働く労働者流出の停止

フィリピン人は英語が話せることから、海外での就労が容易であると同時に、人材流出にもなっていました。フィリピンに帰国して再度住むより、帰省はたまにしても、アメリカなど永住権や国籍取得可能な国に根付いてしまいます。
ところがこの海外在住者に歯止めがかかりました。近年、母国で経済成長したことで、海外より慣れ親しんだ母国に戻ることを希望する人達が増えてきたためです。

インドネシア: メイドの送り出し国は恥ずかしい

インドネシア政府は、特にジョコ・ウィドド大統領になってから、メイドの提供は恥ずかしいことであるとの考えを出すようになりました。本来は単純労働移民を提供したくないが、メイドではなく、訓練されたプロフェッショナルであるベビーシッターや介護者を提供していきたいと考えています。

これらから分かることは、発展途上国が経済力を増し、国力をつけることで、長期的には単純労働者移民の提供は衰退する流れにある、ということです。発展途上国との賃金格差は縮小し、賃金向上や人権意識の高まりでの待遇改善は、メイド雇用ができる人を限定していくでしょう。シンガポールが、富裕層のみでなく中間層も今ほどの恩恵を受けられる期間が、今後も何十年と続くかは定かではありません。

メイド雇用でのトラブル

メイドに子育てを頼り、子どもを知らずに恥じる母親

シンガポールの移民労働者支援NGOが作成した動画があります。母親とメイドの両方が、子どもについての質問を受けています。「なりたい職業は?」「好きな教科は?」などです。74%のメイドが、母親より正しい答えをしました。
www.youtube.com
動画の目的は、2013年に法制化されたメイドの週に一日の休みの取得を促すものです。2015年の動画ですが、当時はまだ40%しか週一の休暇をとっていないと、NGOは主張しています。メイドが休みを取ることで、子どもと親との対話を増やして欲しいという趣旨です。
この動画を見て、メイドを雇っている母親は恥じて泣きました。母親が人任せでなく自分で育児をしたいと思うのは、シンガポールでも同様です。しかしながら、子どもを進学させる学費や家計を考えると、シンガポールでは富裕層を除くと経済的に共働きが必須です。シンガポールでメイドの雇用は贅沢品でもなんでもなく、「それでも働いて共稼ぎをしなければならない」というシンガポールの家庭の苦悩をついた内容で、かなりの反響を呼びました。

文化・言語・教育水準の違いからくるコミュニケーションギャップ

メイド雇用はトラブルが多いです。雇用主からメイドへのよくある苦情です。

  • 期待値があわない: この程度でいいだろうと思われる。品質を知らないのでどうすればよいか分からない
  • シンガポールの最新の家電を使えない
  • 衛生観念が違う: ペットを触った手で食材を触る等
  • 言葉が通じない: フィリピン人だと英語ができるが、それ以外だと通じない
  • 宗教が違うと生活習慣が違う
  • ホームシックになった
  • 食器の扱いが雑で割れやすい
  • 家財がなくなる
  • 雇用主の旅行中に大音響でパーティを開き、帰宅後に近所から注意を受ける
  • (男)友達を連れ込む

その一方で、同じ国の出身で、ホワイトカラーや看護師をしているフィリピン人、専門職をしているインドネシア人も、シンガポールにたくさんいます。他の職業の人でもそうですが、メイドはメイドが一番割に合うからメイドをやっているのです。もっと稼げる専門職になれないからメイドなのです。大卒で専門職の職歴がある異文化の人とでも、仕事で一緒に働くのはかなりの苦労ですが、それをはるかに超える困難がメイド雇用では発生します。「メイドに色々任せられていいよね」と日本人は思いがちですが、指揮監督はかなりの苦労です。4万円で雇われた人は、4万円の労働しかしてくれないのです。

雇用主からメイドへの虐待と、メイドから子供や高齢者への虐待

生活をともにしながら家事をすることで、虐待が発生することがあります。雇用主からメイドにだけでなく、メイドから雇用主家族にもです。双方にストレスがかかるのです。雇用主がメイドへの虐待は想像が付きやすいとおもいますが、メイドから雇用主家族は育児ストレスや介護疲れです。子どもや老いた親を預けているので、そうは簡単に高圧的な態度をとれないものです。
日本の介護施設や家族であっても、虐待が定期的に報告されていることを思い出します。
シンガポールでは、シンガポールで初めて働くメイドから、ランダムに労働省MOMが面談して、危険をチェックしています。虐待は刑法犯になることに加え、雇用主は今後のメイド雇用を禁じられます。

映画で見るシンガポールでのメイド

シンガポールのメイドについて関心を持った人は、日本でも公開されていた「イロイロ」(2013年製作)というシンガポール映画を見て下さい。原題は"爸媽不在家"で「両親は家に居ない」の意味です。
公団(HDB)を舞台に、親から孤立しかけの小学生男子と、その子が荒れかけてきたため家事と育児をみるために雇われたフィリピン人メイドが中心の話です。当初、男子はメイドを嫌悪するが、したうようになります。しかし両親の経済状況がアジア通貨危機で悪化して解雇となり、メイドは帰国します。

マリーナベイサンズのバブリーなだけがシンガポールではなく、シンガポールの中間層の生活を知るきっかけになる映画です。Huluにも入っています。Huluユーザーであれば、是非見て下さい。

ウンコを投げっぱなしのネット民

ここまでは出来る限りニュートラルな立ち位置で、シンガポールのメイドを解説してきましたが、ここからは反論です。

今回のTogetterを見ると、ネット民の良くない所が炸裂していると私は見ています。外国人メイドを、先進国で低賃金で雇用することが気に入らない人がいるのはよく分かりました。しかし、「6万円でメイドをこき使うマリー・アントワネット、炎上してざまあ」では、当事者への具体的な解決策や提案になっていません。なので、現在その制度に立脚している社会で生活している在住者には、リアリティゼロです。
当事者のメイドは、シンガポールでの雇用に満足しています。シンガポール政府の調査があります。10人中9人のメイドは、シンガポールでの就労に満足しています。10人中7人は契約が満了するまでシンガポールでの就労を希望し、満足しているうちの10人中9人は同じ雇用主の下で働くことを希望しています。

たとえ、当事者が満足し、社会がメイド利用を前提に確立していたとしても、それが普遍的価値により是正すべきであれば、人権問題のように諸外国が圧力をかけるべき場合があるのは理解します。しかし、シンガポールのメイド制度は、個別に問題があるケースはありますが、就業と離職の自由があり、条件は渡航前から提示しているため、「奴隷」と比較するには不適切です。当面は制度を改善しながら、メイド自身も送り出し政府も、移民の提供をしていきたいと考え、雇用主とシンガポール政府も、関係者は受け入れを希望しています。他国を非難するのは、天引きが不明朗だったり、技能がつかないのに実習扱いする、自国の技能実習制度の欺瞞をなんとかした後の方が良いのではないでしょうか。

何より問題なのが、日本人のネット民が言うようにメイド制度を止めたとして、ではメイドたちはどうなるのか、という視点を欠いていることです。メイドはなぜ、故郷を離れる時点で人材会社に斡旋費用の借金を抱えるリスクを追ってまで、家族と離れて外国で、メイドになるのか。それは、その仕事が一番割に合うからです。地元での何倍もの給与を得られます。
そもそも発展途上国には仕事がありません。農業・漁業・林業か家事です。日々の生活で食ってはいけても、雇用先や貨幣収入は限られています。あっても薄給です。その中で、治療費や教育費が必要な経済イベントが発生すると、そのお金がかかる選択肢を断念するか、その選択肢を得るための収入を探すかです。そしてその一つが外国でのメイドです。

メイドは格差固定装置でなく貧困からの突破口

発展途上国の工場で安価な賃金で作られ輸入された工業製品は喜んで使うのに、輸入が移民のサービスとして可視化された瞬間に、壮絶な拒否反応が起きたのが今回のツイッターの騒ぎです。NIMBY ("Not In My Back Yard"我が家の裏庭ではやらないで) の現れ方の一つに見えます。我々は製品とサービスのどちらの輸入にも自覚的であるべきであり、フェアトレードの理念は賞賛されます。
メイドのような低賃金の単純労働移民が増えることで、受け入れた先進国では経済格差が増えることは確かでしょう。そのためにシンガポールでは、単純労働移民は仕事があり就労ビザが有効な一時的な期間のみの滞在であり、移民の目的は母国にある、という姿勢を貫いています。家族帯同・永住権・国籍付与を認めるのが真っ当な人権意識であるとするなら、キャリアパスと家族を含めた異文化受容、更に社会保障と教育を、国として提供する必要があります。日本にはこれを受け入れる覚悟があるように見えません高齢化社会対応で招かれた移民もやがては年を取り、今度は社会保障の世話になるのです。彼らが現役時代に支払った額と、保障を受ける額のどちらが多くなるでしょうか。

単純労働移民受け入れで、先進国内での経済格差が開く一方で、先進国と送り出した国との間での経済格差は縮小します。「外国でメイドをして、その稼ぎで子どもが大学に通っている」という話を聞くのは珍しくありません。これはメイドが、格差固定ではなく、世代を超えて貧困からの突破口になっていることを意味します。「外国人メイドは受け入れるな」という主張は、「(居住国が豊かになるまで)貧困のままでいろ」という主張の裏返しであることに気付くべきです。

メイドの収入が貧困から抜け出す重要なフックになっている一方で、残念なことに、メイドが犠牲を払って外国で働いても、故郷では旦那が飲んだくれギャンブルをしている、親族が訳の分からないビジネスに手を出してスッた、色んな人間が理由をつけてたかりに来る、というのも同様に珍しくありません。ミクロではこちらの方が切実な問題です。

日本に外国人家政婦は無理だ

ここまで説明するとおわかり頂けると思いますが、「日本人には外国人家政婦の雇用はムリ」というのが私の考えです。移民政策に比較的成功しているシンガポールでさえこれだけの苦労をしているのに、日本がこれらのチャレンジを超えられるとは思えないわけです。更に、日本特有の事情をあげます。

  • 日本人家政婦でも給与は時給千円前後と最低賃金に近いが、外国人家政婦にも最低賃金が適応されるため価格低下が見込まれない。
  • 家政婦に時給2千円超を支払う価値観やお財布の人は限られる。
  • 英語で指揮監督できる日本人は極少数。家政婦の片言日本語には不満。
  • 他人を家にあげるのが嫌。掃除に来てもらう前に自分で掃除をするメンタリティ。


以上が、シンガポール在住者の視点です。
これらを踏まえて、外国人メイドへの理解と議論を深めて頂けると幸いです。

参考資料

シンガポールの建築労働者などの男性単純労働移民に興味がある人はこちらも参照下さい。
uniunichan.hatenablog.com


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