今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

カジノ解禁したシンガポール: 経済効果と負の影響

「東京オリンピックの開催決定でカジノ解禁も見込まれる」としてカジノ議論がまた沸き起こってきているようです。「日本でだと一兆円市場が狙える」や「カジノで成功したシンガポールを見習え」という論調も見かけますが、シンガポールがカジノで得たものと失ったものを、シンガポール在住者の視点で述べていきます。

シンガポールでのカジノの経済効果

シンガポールでは観光産業はGDPの5%前後が例年です。シンガポールには2つのカジノがあります。マリーナベイサンズ(MBS)とリゾート・ワールド・セントーサ(RWS)です。2012年MBSのカジノ収入はUSD22.7億(約S$28.2億)、RWSではS$23.7億合計でS$51.9億(約4,000億円)カジノ単体でシンガポールGDPの1%にのぼり、カジノ開始数年で一大産業になったことが分かります。
※S$1(1シンガポールドル)は80円前後

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STB(シンガポール観光庁): Tourism Sector Performance 2013

2005年にカジノ解禁が政治決定され、この2つの施設は共に2010年にオープンしました。政策変更を「他の国際都市に経済と観光での競争に負けるおそれがあるため」とリー・シェンロン首相は当時説明しています。
NLB (National Library Singapore): Casino Control Act

上記グラフで、カジノ開業の2010年以降"エンターティメント"収益が加算されています。これはMBSとRWSのカジノ売上の総和に一致するため、内訳はカジノです。
2009年は金融危機の影響で一時的に観光実績が落ち込んでいます。オープンした2010年以降はカジノ収益が丸々追加されています。2011年以降は買い物・宿泊・飲食も伸びているように見えます。しかしながら、2009年は金融危機の例外として落ち込んだ年です。日本のカジノ推進派が「2009年と比較して2013年には、観光収入(カジノ除く)で約5割増、観光収入(カジノ含む)では8割押し上げた」という説明は印象操作なことが分かります。比較対象は金融危機以前であるべきです。「2008年と比較して2013年には、カジノ除く観光収入増加は18%であり、カジノ含む観光収入では54%増。ただしこの間GDPは38%の伸びがあり、カジノ除く観光収入のGDP比では5.7%から4.8%へと落ち込んでいる。カジノを含む観光収入でも、GDP比で5.7%から6.3%の増にすぎない」が適切でしょう。
シンガポールでのカジノはあくまで主要施設の一部との名目であり、レジャー、ビジネス、エンターテイメントを統合するIR(Integrated Resort: カジノを含む統合型リゾート)として設計されたのが功を奏したものです。MBSもRWSもカジノに加えてホテルやレストランを持っています。MBSでは特に巨大なショッピングモールとコンベンション(MICE)、RWSではユニバーサル・スタジオ・シンガポールという施設が特徴です。
設計当初の狙いでは、MBSでは2015年までに1万人の直接雇用と、2万人の周辺雇用、シンガポールGDPの0.8%にのぼる27億ドルを増加させ、RWSでは1万人の直接雇用でした。2010年にシンガポールでのエンターティメント収入がS$40億あったことを考えると、当初の目論見は達成できているでしょう。なお、雇用対象の一部職種ですが、ディーラーや賭け金清算係の月給中央値は$2,200(17.6万円)と、シンガポールでの大卒初任給以下の給与水準です。

マリーナ・ベイ・サンズ (シンガポール)

シンガポールにあるマリーナ・ベイ・サンズ (MBS) を例にIR(統合型リゾート) のビジネスを見ていきます。マリーナ・ベイ・サンズの親会社であるラスベガス・サンズ (LVS) のアニュアルレポート、上場会社の年次報告書を素材にしています。ラスベガス・サンズは、ラスベガスでベネチアンとパラッツォ、マカオでベネチアン・マカオというIRを運営しています。
Las Vegas Sands Corp: 2012 Annual Report

  • 【MBS機能】55階のホテル棟(2600の部屋とスイート)、インフィニティプールとレストランが有るサンズスカイパーク、1.5万平方メートルの賭博スペース、賃貸可能な7.4万平方メートル小売店・レストラン・エンターティンメント複合施設、11.2万平方メートルのコンベンションセンターと会議室、劇場、アートサイエンス美術館を含むベイフロント遊歩道にあるランドマークの象徴的な建物。
  • 【MBS開発経緯】2006年8月23日、MBSはシンガポール観光庁とDevelopment Agreementを締結、2009年11月11日に修正条項を締結。これによりMBSをデザイン、開発、建設、運用する。
  • 【MBS開発経緯】Development Agreementにより、計画用地への60年リースをMBSはシンガポール観光庁と結ぶ。
  • 【MBS開発経緯】シンガポール観光庁とのDevelopment Agreementにおいて、S$12億がMBSの土地への60年間リースへの保険料支払いとして払われ、諸税や諸費用にS$1.056億が支払われた。
  • 【MBS規制】Development Agreementで付与されるカジノ営業権は、発効された2006年8月23日から30年間利用される。カジノ営業権を更新するためには、MBSはシンガポール観光庁とシンガポール関係官庁に失効する2036年8月の5年以上前に通知しなければならない。シンガポール政府は公共の利益のために失効以前にカジノ営業権を打ち切ることがあり、この場合は妥当な補償がMBSになされる。
  • 【MBS規制】シンガポールではマリーナ・ベイ地区でのIR開発へのRFPによって、政府(CRA)は10年の限定期間でのカジノライセンスは2つまでとする。限定期間は2007年3月1日から始まる。
  • 【MBS規制】Development Agreementにおいて、最低でS$38.5億(3000億円)をMBSがIRに投資することが必要になっている。投資は、カジノ・ホテル・料飲・小売・会議・コンベンション・エキシビション施設・キーアトラクション・エンターティンメント・公共エリアに分けられ、個別に金額が割り当てられている。
  • 【MBS規制】2010年4月26日、MBSは3年間の賭博ライセンスが発効され、S$3750万(300億円)のライセンスフィーを支払った。
  • 【MBS規制】Development Agreementにおいて、カジノに課せられた主要な制約は、賭博エリアの全サイズであり、15,000平方メートルを超えてはならない。但し以下は賭博エリアへの除外である: 事務所、受付、トイレ、料飲エリア、小売店舗、会談、賭博エリアへのエスカレーターとエレベーター、飾りになるディスプレイ、演技エリア、主要な通路。 MBSに位置するカジノは、2500台以上のゲーム機器が持てないが、カジノで許されているカジノゲームのためのテーブル数には制限がない。
  • 【MBS規制】10年の限定期間において、現在はMBSの100%株主であるLVSは、MBSの最低20%の株主として、単一で最大の団体であり続ける必要がある。
  • 【ゲーム】人気があるテーブルゲームは、VIPにも一般客にもバカラである。
  • 【ゲーム】テーブルゲームにおいて与信で賭けられているのは、マカオ31.5%、MBS33.2%、ラスベガス72.4%である。
  • 【MBS収益】MBSにおいて総収入の74.4% (2012年)、76.5%(2011年)が賭博からである。残りはホテルの部屋、料飲、ショッピングモールなど賭博以外が源泉である。
  • 【MBS収益】総計の賭博収入に7%のGST(日本で言う消費税)が課せられる。GSTの総額を引いた後のカジノからの総計の賭博収入に15%のカジノ税が課せられる。ただしこれは、プレミアムプレーヤーの場合は別であり、その場合はGSTを除いた後にプレミアムプレーヤーからの総計の賭博収入に5%が課せられる。税率は2007年3月1日から15年間は変更されない。
  • 【MBS収益】ローリングチップの平均勝率(カジノ運営側の売上)は2.7%から3.0%を期待している。
  • 【MBS収益】MBSはCPF(シンガポール政府年金)に基本給の16%を納めている。2012年はUSD$3280万を納めた。
  • 【他国規制】マカオ政府は、LVS所有カジノにおいてディーラーにマカオ居住民のみを雇うことを要求している。
  • 2012年LVS全社での営業収益 (USD億)
カジノ $90.0
ホテル客室 $11.5
料飲 $6.3
ショッピングモール $4.0
プロモーション経費 $5.5

※【筆者解説】カジノが営業収益の8割近くを占めています。「IR(統合型リゾート)においてカジノは施設の一要素に過ぎない」と抗弁する人がいますが、IR収益の中心はあくまでカジノであり、他事業はカジノに誘客するための呼び水やイメージアップあるいは政府規制からやむを得ず行っている事業と推測できます。

  • 2012年MBSカジノ部門営業収益 (USD億)
総カジノ収入 $22.7
ノンローリングチップドロップ $46.1
ノンローリングチップ勝率 23.1%
ローリングチップボリューム $525.7
ローリングチップ勝率 2.47%
スロットハンドル $107.9
スロットハンドル勝率 5.3%
  • 2012年MBSホテル宿泊収益
総宿泊収入(USD億) $3.3
利用率(USD億) 98.9%
平均部屋料金(USD) $355
一部屋あたりの収入(USD) $351
  • 2012年MBSショッピングモール収益
総モール収入(USD億) $1.6
総モール支出(USD億) $0.3
モールでのリース可能な敷地(スクエアフィート) 6.4
利用率 96.0%
スクエアフィートあたりでの基本賃貸料(USD) $215
スクエアフィートあたりでのテナント売上(USD) $1393

※【筆者解説】全社のみでなくMBS単体でも、売上の8割がカジノです。これはカジノ敷地が全体の1割以下であることを考えても脅威的です。

シンガポール市民社会への負のインパクトと政府対策

シンガポールのカジノ来場者

シンガポールのカジノというと、大陸から中国人が札束を握りしめてやってきている人達が大半のイメージがあります。実態は、シンガポールでの2つのカジノ来場者数の地元民比率は2~3割を占め、地元民来場者数は少なくありません。
売上は「来場者数 × 平均売上額」のため、旅行でたまに来る中国人が一回あたりの売上額が大きく、売上総額も優っている可能性はあります。しかし、この数字は私が調べた限りで非開示です。
MSF: Total tax revenue generated and total number of visitors to the casinos
http://app.msf.gov.sg/Press-Room/Total-tax-revenue-generated-casinos

シンガポール政府税収と賭博依存対策支出

カジノからのシンガポールの政府税収はS$11億(2011年)です。これに加えて、カジノ入場税S$2億(2011年)もあります。その一方、賭博依存症対策支出にS$900万(2011年)を費やす支出もあり、税収の7%は対策費用に使われています。
AsiaX: 昨年のカジノ税収は11億Sドル、社会全体の利益に活用
http://www.asiax.biz/news/2012/07/12-104859.php

Casino Regulatory Authority of Singapore (CRA)

CRAは、オーストラリアや米国の類似法を参考にして作られたカジノコントロール法に基いて設立されました。CRAはギャンブル問題とギャンブル中毒へのプロフェッショナル医療治療に取り組む国家審議会を設置しています。

シンガポールでのギャンブル中毒抑止策

  • カジノ入場税

外国人には入場制限はありませんが、国民と永住者は、カジノ入場税の支払いが必要です。
24時間パスが$100、年間パスは$2000です。2010年はS$2.16億、2011年はS$1.95億のカジノ入場税収入がありました。
シンガポール政府はカジノ入場税を税収目的でなく、国民の入場抑止策とみています。カジノ入場税はSingapore Totalisator Boardに寄付され、国民の福利厚生に使われています。このために、全入場者のIDチェックを行い、該当者からは税を徴収しています。光が射さないカジノの中にいると、時間の感覚がなくなり集中して賭ける状態に陥るようです。24時間パスでは絶対に24時間経つと一度退場する必要があります。ギャンブル中毒者は「$100は勝てるつもりでカジノに来る」ので、中毒者対策というよりも、敷居の高さを設けることで中毒者を作らない政策です。より問題なのは年間パスです。このパスの存在自体がギャンブル依存者向けではないかと言われており、国会審議でも取り上げられました。年間パス販売は、全パス販売のうち1%未満とのことです。
Strait Times: Not many Singaporeans buy annual levy passes into the casinos

  • カジノへの21歳以下の入場禁止
  • 国民と永住者への与信の禁止。ただし法が定めたプレミアムプレーヤーは除く
  • 銀行ATMのカジノ内への設置は禁止

※ただし、カジノの入り口を出た直ぐの所にATMはあります。

  • ギャンブル中毒者がカジノ入場を禁じる拒否命令の発行権限を与えられたギャンブル依存症国民協議会(NCPG)の設立

NCPGに提出する入場禁止届けは、本人のみでなくとも家族も届けられる。
2014年6月末日で、入場禁止届けの総数は21.5万人。内訳は以下。

  • 家族が届け出を出したのは1782人
  • 自身が届けを出したのは16.5万人
    • シンガポール人と永住者1.4万人
    • 外国人15.1万人
  • 自動的に入場禁になっているのは4.8万人

家族が入場禁止申請を出した、シンガポール人と永住者の内訳

  • 性別
    • 入場禁止申込者
      • 男性: 33%
      • 女性: 67%
    • 入場禁止対象者
      • 男性: 78%
      • 女性: 22%
  • 民族
    • 中華系: 93%
    • インド系: 2%
    • マレー系: 1%
    • その他: 4%

NCPG: Update on Casino Exclusions and Visit Limit Statistics June 30, 2014

シンガポール政府のギャンブル中毒への公式見解

2011年調査によると、シンガポールでのギャンブル中毒者は国民および永住者の2~3%と見られています。これは(カジノ開設前)2008年前回調査と似た割合です。この値は、香港やマカオより低く、豪州や米国と同程度になります。
問題は、低所得者で大金を賭ける傾向が見られることです。賭け金の中央値は2008年の$100から2011年の$40に落ちています。しかし、平均値は$176から$212に上昇。これは、大半が少額で賭けているが、大金を賭ける人の割合が増加しているためです。月収S$2000(16万円)以下の低所得者層が、月に$1000(8万円)以上賭ける率が、2008年の0.8%から2011年の2%に上昇しています。
MSF: Preventing rise in Gambling Addiction
NCPG: PROBLEM GAMBLING RATES STABLE BUT CONCERNS ABOUT LOW INCOME, FREQUENT GAMBLERS AND POOR SELF-CONTROL

闇金ローンシャークの跋扈

雇用や経済発展と引き換えに、シンガポールの市民社会は負のインパクトも受けました。大きなものの一つがローンシャークと呼ばれる闇金の動きがここ数年で目立ってきたことです。シンガポールの貸金業ではライセンスが必要ですが、ローンシャークの大半はライセンス無く違法に高利率で金を貸し出します。日本と同じで「即融資」などと携帯番号のみを記載している違法な広告が駅前で見かけられます。SMSで広告メールを送りつけてきます。
借り主の多くは、カジノで借金漬けになり、合法な金融機関から借り入れができない人達と言われています。
取り立ては厳しく、借り主のみならず近所へもペンキ投与で嫌がらせをし、放火にも及ぶなど、借り主が自殺に追い込まれるケースもあるため、社会問題になっており、シンガポール警察でも特設ページを設けています。日本で例えると、この悪質さはバブル期の地上げ屋に匹敵します。

カジノへの国内送迎バス禁止

政府発表を引用します。
『シンガポール政府がカジノを解禁したのは観光目的地としてのシンガポールの魅力を増すためであり、カジノは主として海外から更なる旅行客をひきつけるためのものです。しかし、国民が完全にカジノから排除されることも意図していません。政府の狙いは、国民生活のカジノへのインパクトを最小にし、若者のような弱者を保護し、カジノが主要マーケットとして国民を狙うことを阻止することです。国民向けのカジノのプロモーションや広告、国内で定められた地点とカジノを結ぶバス運行を禁じます。』
MSF: Shuttle Bus Services by Integrated Resorts
カジノの営業促進や広告は国内で行われておらず、カジノへのバス送迎もなくなりました。

生活保護対象者の入場禁止

ComCareという生活保護を含む社会福祉制度があります。家族から支援が得られない人に毎月現金$450 (4万円)、医療、子供手当が付与されます。国民だけでなく永住者も対象。しかし、支給者はカジノに入場禁止になります。
MSF: ComCare
日本では、生活保護対象者がパチンコや競馬などギャンブルを楽しむことは原則禁じられていません。

カジノ解禁で日本に更なる負のインパクトは無い ~既にギャンブル依存症国家の日本~

ギャンブル解禁への提言

日本でギャンブル解禁をするにあたっての私の提言です。

  • 外国人のみが入場/利用可能
  • 入場にパスポート提示
  • パチンコ/パチスロの整理
  • 僻地での立地
日本でのギャンブル市場規模

日本のギャンブル市場規模は24兆円(!)にも上ります。8割弱はパチンコ/パチスロで、射幸性の低い宝くじは1兆円弱です。日本のGDPは2010年479兆円でしたので、ギャンブルは日本のGDPの5%を占めています。中でもパチンコはGDPの4%に達します。 シンガポールのギャンブル市場4000億円、GDP1%と比べて、額も率も巨大なギャンブル市場が日本には既にあることが分かります。
監督官庁だけでもこれだけの省庁が軒をつらね、行政利権の大きさもうかがい知れます。

種類 監督官庁 2010年度市場規模(単位:億円)
パチンコ/パチスロ 警察庁 190,660
中央競馬 農林水産省 24,275
宝くじ 総務省 9,190
競艇 国土交通省 8,434
競輪 経済産業省 6,349
地方競馬 総務省/農林水産省 3,332
オートレース 経済産業省 861
スポーツ振興くじ(toto) 文部科学省 848
合計 243,949

マイナビ: アミューズメント業界とは?
競輪雑考: 公営競技の年度売上げの推移(1989-2010)
総務省: 宝くじ活性化検討会報告書: 宝くじ活性化検討会報告書参考資料
Wikipedia: スポーツ振興くじ

ギャンブル/風俗との垣根が低い日本

日本はギャンブルに異常に寛容な国です。例えばパチンコ/パチスロです。学校/病院などの近隣以外は営業許可がおります。他国で一般的な「限定した場所への許可」ではなく、「一部のみで不許可(大部分は許可)」という寛容さです。そのため、日本中の至るところでギャンブルが可能です。これは日本でのポルノへの寛容性との類似があります。シンガポールでも他国でも、通勤電車やコンビニなど公共の場で成人誌を読む人はいません。なんでもないところを歩いていて突然パチンコ店が出現するのが日本です。ギャンブルやセックスへの垣根が日常から低いのが日本の特徴です。
シンガポール政府がシンガポール人を完全にギャンブルから排除しないのは、この国が極めて現実的な考え方をするためです。シンガポールでは政府規制の下でギャンブルは合法、売春も合法です。売春は、赤線を引いて特定地域に商業施設も許可されています。ギャンブルにも同じ考え方をしています。シンガポールではカジノが解禁される前は、ジャックポットマシンを運営する会員制クラブ(ミニカジノ)、Singapore Poolsという宝くじと、Singapore Turf Clubという競馬が公営ギャンブルとして認められていました。2013年の時点で、73のクラブにミニカジノのライセンスが与えられています。1968年に宝くじが政府下で実施されるようになった時に、最大の目的は税収でなく闇賭博の撲滅でした。売春も賭事もゼロにできない、それならば、管理下に置くことで悪影響の区間と対象を制限しよう、ということです。
朝日新聞デジタル: 地域に根づく「ミニカジノ」
シンガポールでギャンブル依存症の割合は、カジノオープン前後で変化が無いとの政府見解を紹介しました。つまりギャンブル依存症には、自国の合法ギャンブルである宝くじや競馬を以前からやっていた層や、「わざわざ外国に行ってまでカジノに興じていた」層もいるでしょう。それなら国内で管理下に置いた方が良い、という考えです。政府見解は「社会影響は変わらない」とのことですが、低所得者がのめり込み、ローンシャークが跋扈することからも、私には何とも言えません。想定ですが、社会問題になっているのに政府が方針を変えないのは、政府はカジノ業者との契約で、今からSG国民をカジノ入場禁止にできない可能性が高いと私は見ています。
日本は既に国家としてギャンブル依存症です。2009年に発表された厚生労働省による研究調査結果によると、日本の成人男性の9.6%、同じく女性の1.6%、全体平均で5.6%がギャンブル依存症です。シンガポールの2~3%、米国とカナダの2.8%の倍となる脅威的な数値です。これは合法的に遊べ、街中の交通至便な所にあり、身分証明書提示も求めない、パチンコ店の便利さが助長している可能性が高いです。「中華系は博打が好きだから」と他人事のように日本人は言いますが、実は日本人の方が博打好きなのです。考えてみると、日本在住の知人男性では、10人に1人程度は暇になったらパチンコに行ってる人がいます。日本ではギャンブル依存症への認知が薄く、治療が必要との認識もあまりないですが、彼らはギャンブル依存症なのです。
ですので、日本がカジノを解禁しても、ギャンブルが引き起こす社会問題の"総和"が増える可能性は現実的には小さいでしょう。従来のギャンブル依存症の人間が、他のギャンブルからカジノに"移行"すると見るのが妥当でしょう。幾らなんでも、これ以上ギャンブル依存症の人間が増えるわけがない、増えてほしくない、という願望でもありますが。

カジノは外国人対象の外資獲得手段: 自国への悪影響を抑える

韓国はパチンコを2006年に違法化し、カジノも一箇所を除き外国人専用施設です。モナコでは自国民は自国カジノでの遊行は完全に禁止です。日本も外国人のみをカジノの対象にすれば問題は相当低減されるでしょう。パチンコを含めたギャンブル全体での整理も必要でしょう。経済のためにカジノを解禁するのであれば、国民を対象にし搾取や家庭崩壊させなくてよいはずです。ギャンブルの顧客として狙うのは日本人向けの内需ではなく、外需つまり外国人観光客であるべきです。カジノ解禁は、これまでの公営ギャンブルとパチンコに単に追加されるのみでなく、日本でのギャンブル全体が検討・整理される絶好の機会ともなることを期待します。

カジノ立地

日本では都心ど真ん中の台場にカジノを作ろうという提言があるようですが、便利すぎる悪影響を考慮すべきです。ギャンブルは風俗と同様に、場末で行うものです。マカオ・モナコ・シンガポール、みな国の構造がオフショア国家です。大国がカジノを許可する場合でも、ラスベガスのような砂漠の辺境の地が開発されたものです。最近では、ロンドン中心部やワシントンDCの隣接州でも車で1時間程度といった都心部にも設立されるケースが出ていますが、都心部立地には慎重になって欲しいです。


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