今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

日本人の教育移住が少ないシンガポール ~マレーシアは教育移住に適した国か~

マレーシアでは教育移民と考えられる人が徐々にではあっても出現するようになってきました。下記記事で、日経ビジネスで一話目の自営業家族は父親のビジネス目的、二話目の母親家庭は放射能疎開ですが、日経トレンディの母親家庭は教育移民です。日経ビジネスの放射能疎開は、教育目的ではありませんが、子供を優先させてでの移住であり、教育移住の亜流と捉えることもできます。
日経トレンディ: マレーシアに移住する教育熱心な親たち!──狙いは英名門校の分校
日経ビジネス: 増える日本人の「教育移民」人材獲得のカギは教育環境にあり

教育目的でのシンガポール移住:ジム・ロジャーズ

シンガポールへの教育目的移住で最も有名なのは投資家ジム・ロジャーズ。2007年に家族とともにニューヨークからシンガポールに移住。理由は娘が中国語を習得し、アジア文化への理解を深められるように。ニューヨーク時代から中国人ベビーシッターを雇い、中国語で話しかけてバイリンガルに育てています。移住地を中国にしなかったのは、公害がひどいことが理由。娘の進学先は、インターナショナルスクールでなく、驚くことにローカル校のナンヤン・プライマリー・スクールです。名門校ですが、それでもローカル校のため、クラスで唯一のアメリカ人です。
「1807年にロンドンに移住することはbrilliant(素晴らしい、明晰なこと)だった、1907年に米国に移住することはbrilliantだった、そして2007年にアジアに移住することが次のbrilliantだろう。」とジム・ロジャーズは言っています
AsiaX: トップインタビュー: ジム・ロジャーズ
プレジデントオンライン: シンガポールで密着――ジム・ロジャーズの24時間

教育目的でのシンガポール移住:中国人スタディママ

ジム・ロジャーズ家族は極めて特異な例です。現在でも彼の後に続いて、教育目的で欧米及び日本からも、シンガポールに移住する家族はまれです。
シンガポールで「教育移住」と聞いて最も一般的に思いつかれるのが、中国人が子供をシンガポールに送り込み、母親が子供に同伴する形態です。これはスタディママと呼ばれています。
2000年あたりにシンガポール政府がビザ要件を緩和したことで、流れができました。2005年の時点で、7800人のスタディママがおり、うち6800人は中国籍です。1000人はWork Permitという単純労働の就労ビザも持っています。スタディママの滞在ビザLTVP (Long Term Visit Pass) には母親か祖母のみが対象です。父親や祖父には認められていないビザです。また、LTVPだけでは就労不可のため、就労にはWork Permitのような就労ビザの取得が別途必要になります。
シンガポールビザ: よくある質問 (FAQ):EPの私はSGでの業務が終了し、日本に本帰国することになりました。DPの妻と子が引き続きSGに滞在し、子供はSGで学業の継続可能でしょうか?
スタディママに加え、韓国人などの学生がインターナショナルスクールで、単身寮生活を過ごす、というのはまれにあります。

教育目的(?)移住での日本人

シンガポールでは物価とビザが難点

日本人で教育目的の居住者は滅多にいません。特にシンガポールでは、親のビジネスに子供を連れてくるケースが多く、子供を第一にしてることは滅多にありません。理由はビザと物価です。
そもそもシンガポールにいる日本人は駐在員が大半です。駐在員は、一般的に赴任地に希望を出せても、希望が通じるかどうかは会社都合に左右される運と社内政治です。なので、駐在は教育目的での移住になりようがないです。
最近注目されている富裕層移民でも、親がビジネスをシンガポールでするために、親の仕事に子供が付いて来るのが殆どです。その上で、「英語も中国語も勉強できて、教育水準が高いシンガポールはいいかも」、という従属的な選択が大半です。つまり、親の仕事が第一で、次に子供の教育を考えており、子供の教育を第一に考えていることはまれです。これでは、教育も移住の理由の一つとは言えても、目的とまでは言えないでしょう。
シンガポールに母子で、フラットシェア(ルームシェア)をせずに住むには、HDB(公団)を借りて、激安物件でも$2000(15万円)はどんなに安くともします。

シンガポールでは、日本人学校を含むインターナショナルスクールには、子供単独で教育を受けられるビザのStudent Passが発行されます。ここで子供のみが単独でシンガポールで生活するのであれば、ビザの問題はありません。しかし、母親と祖母が学生をする子供に同伴して滞在するためには、シンガポーリアンかシンガポール永住者(PR)が母親か祖母のスポンサー(保証人)になることが必要です。これをクリアできる日本人は多くないです。また、シンガポールのローカル校に入学には、親がシンガポールで就業しており子供がDP (Dependent Pass(扶養者ビザ)) 取得者であれば入学できますが、そうでなければこれまたシンガポーリアンかシンガポール永住者のスポンサーが必要です。これは上述のスタディママのケースになります。

物価とビザをクリアできるマレーシア

ところがマレーシアにはガーディアンビザがあります。これは学生の保護者に発給される滞在ビザです。特徴は以下。

マレーシア:ガーディアンビザ特徴
  • 対象:18歳未満の学生の保護者
  • 学生一人に付き、保護者一人のガーディアンビザが発行される
  • 子供が二人いれば、それぞれにガーディアンビザが発行されるため、両親での滞在可能
  • 滞在ビザであって、就労不可
  • 全てのインターナショナルスクールでガーディアンビザを発給可能なわけではない(発給できない学校もある)
  • 期限:1~12月までの最長一年。12月までに翌年分のビザ更新が必要。

※マレーシア政府のサイトにガーディアンビザの説明はありません。情報の真偽はご自身で判断下さい。
このガーディアンビザで滞在している日本人は、クアラルンプールやペナンにある程度増えてきました。目的の多くは放射能疎開です。特にリタイアビザとして有名なMM2H (Malaysia My Second Home) は、50歳未満では50万リンギット(約1500万円)、50歳以上でも35万リンギット(約1000万円)の預金が必要です。MM2Hでは必要な貯金額を満たせない家庭でも、ガーディアンビザは手軽に申し込み可能です。これにより安価な物価のマレーシアで放射能疎開のために母子居住が実現可能です。

PISAで日本3位、シンガポール5位、マレーシア55位

放射能疎開の場合、「日本でないこと」が最重要であるためにマレーシアが移住先として候補になるでしょう。しかし、純粋に教育目的であれば、教育水準においてマレーシアが日本より優れているかは検討が必要です。
PISAという国際学習到達度調査があります。OECD加盟国の多くで義務教育の終了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数学知識、科学知識、問題解決を調査したものです。PISA最新2012年度の結果は以下のようになっています。参加65カ国中の順位です。

数学 科学 読解
1位 上海(中国) 上海(中国) 上海(中国)
2位 シンガポール 香港 香港
3位 香港 シンガポール シンガポール
7位 日本 4位 日本 4位 日本
52位 マレーシア 53位 マレーシア 59位 マレーシア

シンガポールは日本と比べても優れた学習到達度を持ちますが、マレーシアは参加国全体の中でも低調な結果です。マレーシアは日本と比較すると、日本からわざわざ教育目的で移住するメリットを感じる学習到達度の成果ではありません。もちろん、マレーシアでも学校によって水準は異なるでしょうし、日本より良い教育というより中国語/英語をベースにした日本と異なる教育を求める選択肢もあるでしょうし、そもそもPISAという尺度への疑問がある場合もあるでしょう。しかしながら、マレーシアへの移住理由に教育を含める際には、この現状は知っておくべきとは思われます。

ダウジョーンズと世界銀行のマレーシア教育課題への指摘

ダウジョーンズ記事では、マレーシアが現在の中進国から先進国になるための、緊急の教育改革課題として、世界銀行指摘を引用し以下を指摘しています。下記は公立校中心の記述であり、インターナショナル校はまた別ですが、この環境が下敷きになっているため、知っておくべきです。

  • 高所得経済の国民一人あたり年収はUSD$12,616(S$1.6万)。2012年マレーシアでは一人あたりGDPがUSD9,928。
  • PISAが65カ国中52位しかない。
  • 教育は中央集権制度のため、生徒評価や教科書選択などで、各学校が自立性を持って改善にあたりずらい。65%の教員が政府による採用である。
  • 教員数は適切だが、質が問題。
  • 頻繁な教育方針の変更。例えば、指導言語が英語からマレーシア語になるなど。
  • マレーシアで最も高い教育を受けている20%がシンガポールのようなより豊かな国に移住してしまうこと。優秀層の逃避

Today: Malaysia’s education system in need of ‘urgent’ reform



※シンガポールでビザの状況は頻繁かつ予告なく変わります。最新状況はシンガポール政府ホームページなどの一次情報で確認下さい。
※本ブログの記述は、筆者の調査・経験に基づきます。記述が正確、最新であることは保証しません。記載に起因する、いかなる結果にも筆者は責任を持ちません。記載内容への判断は自己責任でお願いいたします。
にほんブログ村 シンガポール情報