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今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

全員が中国帰化選手のシンガポール五輪卓球~移民大国の複雑な心境~

シンガポール時事 オピニオン

シンガポール卓球チームは全員が中国からの帰化選手

リオ五輪の卓球女子団体で、日本が3位決定戦を制し銅メダルを獲得しました。3位決定戦の相手はシンガポール。シンガポールは経済国として知られていますが、都市国家であり国民が338万人と極めて少なく、スポーツには選手の母集団が薄く不利です。今回のオリンピック出場選手は、日本からは338人ですが、シンガポールは25人しかいません。
前回のロンドン五輪・前々回の北京五輪で、シンガポールがメダルをとったのは卓球でした。ロンドンでは女性個人が銅メダル、女性団体が銅メダル、北京では女性団体で銀メダルをとっています。
活躍を応援する人ももちろんいますが、国民の反応は冷ややかでした。メダリストの全員が外国籍からの帰化選手だったからです。リオ五輪では、シンガポールから男女含めて5人の卓球選手が出場していますが、全員が中国からの帰化選手です。

シンガポールの五輪卓球メダリスト
選手名 出身 大会:競技:メダル
フェン・ティアンウェイ 中国 黒竜江省 ロンドン:卓球個人:銅、ロンドン:卓球団体:銅、北京:卓球団体:銅
リ・ジャウェイ 中国 北京 ロンドン:卓球団体:銅、北京:卓球団体:銅
ワン・ユエグ 中国 遼寧省 ロンドン:卓球団体:銅、北京:卓球団体:銅

競泳バタフライ100メートル金メダリスト ジョセフ・スクーリング氏

ところが、今回のリオ五輪でシンガポール史上初の金メダリストが生まれました。競泳バタフライ100メートルのジョセフ・スクーリング選手です。米国マイケル・フェルプス選手を破っての堂々の金メダルです。
スクーリング氏は、シンガポール生まれの21歳。シンガポールの学業エリート校アングロ・チャイニーズ・スクール (インディペンデント) に学んでいましたが、14歳でトレーニングのため渡米。現在はテキサス大学の学生です。シンガポールは世界一高額金メダル報奨金S$100万 (約8千万円) を払いますが、スクーリング氏のトレーニング費用は、これまでに親が数億円を負担していると言われています。
初の金メダリストの誕生に、シンガポールは国民も政府も湧いています。例えば、こんな感じ。

すさまじい盛り上がりです。
凱旋パレードでの熱狂。


普段は僕がセルフィーをお願いされるんだけど、今回は僕がお願いしたんだ」シンガポールのリー・シェンロン首相

帰化選手への逆風

これまでも帰化選手に風当たりはありましたが、メダルを逃したこと、自国生まれの金メダリストが出きたことで、更に議論が沸き起こっています。シンガポールで野党を支持するウェブメディア等からの意見を取り上げます。

  • シンガポールが中国から買った卓球チームは、自国で育成された日本に負けた。
  • 手当や中国への帰国費用など帰化選手には良い待遇が与えられているが、自国生まれ選手は経済困窮しクラウドファンディングで遠征渡航費を捻出することもあるのは不公平だ。
  • 男子帰化選手には、自国生まれ選手に義務付けられている徴兵が免除されている。
  • 帰化選手の強化費用を、自国生まれの選手にあてるべきだ。
  • 五輪メダリストの帰化選手リ・ジャウェイ氏は、引退後中国に帰った。
  • 帰化選手がメダルをとるより、自国生まれ選手がたとえ成績は冴えなくとも正々堂々と戦うことを誇りに思う。

States Times Review: Singapore’s China Table Tennis Athletes crash out of Olympics, zero medals won
States Times Review: Olympic Gold Medalist Joseph Schooling: Singapore is “super hard” to live in and train

シンガポール居住者は3/4が中華系で中国人と親和性がある程度ありますが、人口の1/3が外国人にも増加したことで、中国人移民に対しても国民はストレスを明らかにしています。
経済であれば多くの外国人や帰化した国民が活躍し、外国人に比較的寛容な移民国家のシンガポールですが、スポーツでは一転してかたくなになるのが興味深いです。経済でも排外主義がじわじわと広まっていますが、それでも「外資が連れてくる外国人は、シンガポール人の雇用も作っている」「外国人がいるから、シンガポール人の人手が得にくい仕事を頼める」「シンガポールを好きな外国人がシンガポールに帰化する」という認識があるのが主流です。ところがスポーツになると、順位や記録といった成果への評価より、感情論の声が大きくなります

シンガポールでは、優れた外国人運動選手が国籍を取得して帰化するための特別なスキームがあります (Foreign Sports Talent Scheme: FST)。その一方で、シンガポールでは重国籍は許されていません。帰化選手は以前の国籍を放棄してシンガポール国籍を取得しており、単に出場機会や報酬のみでなく腹をくくっているはずです。

リ・ジャウェイ氏は選手でいる時に「なぜシンガポールに来たのか?あなたは自国生まれ選手の成長を窒息させている」「なぜ中国に住みつづけなかったの?」と街中で聞かれたと話しています。その時のリ・ジャウェイ氏の答えは「私はシンガポールが好きだから」とだけ答えたと言っています。国の報奨金制度でS$127万 (約1億円) を7年間で稼いでいますが、「私は傭兵じゃない」とも主張しています。
Straits Times: I'm no mercenary: Li Jiawei

なぜ帰化選手に共感できないのか

帰化選手に共感できないのは、シンガポール人としてのアイデンティティを見つけられないことが理由と、野党支持のウェブメディアが指摘しています。

これらを選手に見出した時、シンガポール人のアイデンティティとして共感するとのことです。
The Online Citizen: That mixed feeling about Foreign Talent Scheme for Olympic medals

国境がなくなる世界へ ~才能ある人から流動化~

  • シンガポールで生まれ、海外でトレーニング (スクーリング氏)
  • 海外で生まれ、シンガポールでトレーニング (シンガポール女子卓球)

シンガポールではこの2つを区別し、前者には強い共感をいだき、後者には冷ややかです。
しかしながら、この2つの違いは決定的でしょうか。スクーリング氏は中学生までをシンガポールで過ごしてから海外に移りましたが、物心が付く前に海外に転出していれば、国民の反応はどうだったでしょうか。帰化選手が、幼少期にシンガポールに渡っており、地元食を好み、シンガポールの教育制度や徴兵を経ていれば、国民の反応はどうだったでしょうか。
また、トップアスリートの帰化選手が来ることで、自国生まれ選手の出場チャンスは減りますが、才能が輸出されるとその地での競技レベルは向上します。自国育ちの選手育成の種をまいているのが帰化選手です。スクーリング氏は高度人材の流出であり、帰化選手は高度人材の導入という解釈もできます。つまり、帰化選手の方が国に貢献している面もある、と考えられます。
帰化選手が招致されず、自国生まれ選手に出場枠が渡り「自国生まれ選手が堂々と戦うことを誇りに思う」と考えてみたところで、メダルや記録をとれず成績がふるわなければ、国内で競技自体が注目されないでしょう。国の支援もスポンサーも減少し、一般国民は「誇りに思う」以前に競技が行われていることも知らなくなるでしょう。スポーツ選手の移民活用が1993年に始まって20年以上たつにもかかわらず、オリンピックに出場できる卓球選手が帰化選手のみでは、自国生まれ選手育成にどう育成しているのかという疑問はありますが、シンガポール卓球協会 (STTA) もバランスで苦渋の決断をしているはずです。

国籍問題で明らかなのは「優秀な人材から流動化していく」ということです。経済でのグローバル人材でもそうですが、それが世界ランキングで可視化されるようなスポーツ選手でも同様で、元中国籍選手が世界中にいる卓球はその最前線だ、ということです。
国籍問題がおきるのは、オリンピックの出場資格が「世界ランキング上位X位まで」ではなく国単位だからです。それによって、選手は国から強化支援を得ることができていますが、帰化では「どこの国の選手なんだ」という事態にもなります。

オリンピックは国対抗でない

国旗掲揚・国歌斉唱があるので勘違いされがちですが、オリンピックは国対抗ではないと、オリンピック委員会自身が言っています。

オリンピックは国対抗ではないの?

「オリンピック競技大会は、個人種目もしくは団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」オリンピック憲章の第9条には、こう明記されています。
オリンピック中は毎日、国別メダル獲得表が新聞に載りますが、これは読者の関心を高める一助として、メディアが勝手にやっていることで、これについても憲章は「IOCはいかなるものであっても、国別の世界ランキング表を作成してはならない」と規制しています(第71条の1)。
また、開閉会式の入場行進で使われる旗、表彰(メダル授与)で使われる旗、演奏される音楽も、規定上は国旗、国歌ではなく「各NOCの旗/歌」(第69条、70条附属細則)となっています。
要は、オリンピックは、個人の努力の成果をためし、人種・宗教・政治等の国家の枠を超えた相互理解、国際親善を推進するのが大きな目的なので、国対抗になると国家意識が過熱し、逆効果になることを戒めているわけです。

「国対抗でない」というのはオリンピックの理念ですが、オリンピック委員会がこの理念を伝える熱心さは、オリンピック商標取り締まりほどではないように見えます。しかしながら、「国対抗でない」「国家の枠を超えた相互理解」という理念が、帰化選手や重国籍選手の増加というグローバル化の進展で、オリンピック委員会が努力せずとも達成される可能性がでてきました。
現在、オリンピックは理念とは反して事実上は国対抗であるからこそ盛り上がっており、オリンピック委員会も国対抗である現状に有効な対策をうっていません。今後更にグローバル化進展で選手国籍が混沌とすることで理念を達成し、応援する感情を各国民が失いオリンピック人気が凋落すれば、皮肉な状況になります。
「母国出身選手を応援する」ではなく、「素晴らしい競技をする世界中の選手を応援する」ことでオリンピックを楽しまないといけない転換点が近づきずつあるかもしれません。


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国民の1%が参加する建国記念パレードNDPをシンガポールで見てきた

シンガポールライフハック

シンガポールで毎年8月9日はナショナルディ (National Day)。建国記念日で祝日です。「建国記念日?それがどうしたの?」と日本に住んでいると思うかもしれませんが、シンガポールのナショナルディは、ノリは米国の独立記念日に近いです。日本の建国記念の日は初代天皇の神武天皇の即位日が根拠で、「たくさんある素通りする祝日の一つ」で盛り上がりません。一方、シンガポールでは、祝賀ムードが強いです。通りのあちこちに「ハッピーバースディ、シンガポール」といった飾りが政府主導で行われます。

ナショナルディの歴史

1965年8月9日、シンガポールはマレーシアから独立しました。「独立」というと響きが良いのですが、マレーシアから独立を勝ち取ったわけでなく、マレーシアから追放されての独立という珍しいケースです。
太平洋戦争で日本がシンガポールを占領し、戦後はマレーシアの一部としてシンガポールは英国領植民地に戻りました。1959年にシンガポールは英国自治領となり、1963年にマレーシア連邦の一角を結成します。
ところが、マレー人優遇政策をしたいマレーシアと、中華系が過半数を占め、民族を平等に扱いたいシンガポールとの間で摩擦が激化。シンガポールとマレーシアの両首脳が、シンガポール独立で合意に至ることになります。独立会見演説で、当時シンガポール首脳だったリー・クアンユー氏の涙は有名です。この独立を発表し、独立した日が1965年8月9日です。
www.youtube.com

ですので、中華系が人口の3/4を占めることから、「中国人がマレー人をのっとった国がシンガポールだ」という理解をしている日本人がたまにいますが、それは間違いです。シンガポール住人はマレーシアから追い出されたのです。リー・クアンユー氏の涙は、迫り来る困難を予期した涙です。
今日もシンガポールまみれ: シンガポール あるある FAQ

ナショナルディパレード NDP

追放されて独立したシンガポールは、独立翌年の8月9日にナショナルディにパレードを初めます。これが今年まで毎年続いています。今年は建国51周年ですので、50回目のナショナルディパレード (NDP) です。現地での観覧や、テレビ中継、ネット中継があります。

国威発揚

シンガポールはマレーシアの一部だったのが政治的に切り離されたため、「シンガポール人」のアイデンティティに欠き、中華系・マレー系・インド系という民族の寄せ集めになることを、リー・クアンユー首相は当時恐れていました。国民意識を持たせるのに使われた主要なツールが、ナショナルディと、1967年に施行されたナショナルサービス (NS)です。NSでは軍隊・警察・消防救急のいずれかに配属されますが、大半は軍です。18歳の全ての男子国民と永住者が対象です。
ナショナルサービスは英国軍の撤退での戦力の空白を埋めるために始まりました。しかし現在では、兵力が整い現実的な戦争の危機が見えておらず、兵器の近代化で徴兵程度の練度の兵の活躍が疑われる中で「外国からのプレッシャーを意識し、同じ釜の飯を食って、集団生活をしつける」ことでシンガポール人としての国民意識を養成する意味合いが大きくなっています。自分達の子どもや兄弟がNSにいくことは、本人のみならず家族・親族を含め、国防や国を意識することにもなります。
ナショナルディパレードは、主催の一つが軍で、軍事色もあります。日本人が「パレード」と聞くとつまらなそうですが、行事全体を通したエンターテイメント色が強いです。オリンピックの開会式に色合いが近いかもしれません。
軍=国防やパレードへの参加・観覧に加えて、ナショナルディには国民意識を持たせる引き締めが行われてきました。有名なのは、住宅街、とくに公団であるHDBでの国旗掲揚です。政府主導で行われてきたこの国旗掲揚は壮観で、日本人に「シンガポールはやっぱり"明るい北朝鮮"なんだ」という勘違いをさせるのに十分なインパクトはあります。(シンガポールは普通秘密選挙があるので、北朝鮮とは政治制度が根本的に異なります)

冷めてきたシンガポール人

低下する国旗掲揚率

徴兵やナショナルディを使って国民意識の養成に成功したシンガポールですが、ナショナルディへの関心は薄れつつあります。これは、独立から51年がたち、世代交代で独立を前提とする層が多数になってきたことや、関心や趣味の多様化でナショナルディの日にも自分達の趣味をする人が増えてきたことです。
その現れの一つが、国旗掲揚の減少です。国旗掲揚が多く見られるのは、大通りの一部などに限られるようになっています。この現象は、シンガポールの最有力紙であり政府系でもあるストレイトタイムズ紙も記事にしています。
Straits Times: Why fewer flats seem to be flying the flag

祝日を利用して海外旅行にでるシンガポール人

ナショナルディとはいえ、通常の休日と一緒で、趣味や旅行に使う人が増えています。そのためマレーシアとの陸路国境は大混雑となり、飛行機は他の祝日同様に売り切れて価格が上昇します。強権と言われるシンガポール政府ですが、この動きを戻すことはできない状況です。
Straits Times: Expect heavy traffic, delays at Woodlands, Tuas checkpoints over the National Day period

2016年ナショナルディパレード

ナショナルディを取り巻く環境は厳しくなってきていますが、現在でもパワーコンテンツになっているのがNDPです。

チケット入手方法

建国記念行事なので基本的に国民が対象ですが、実はNDPのチケットを持っていれば、誰でも入場でできます。ですので、外国人でもシンガポールに住んでいなくても、チケットを入手できれば閲覧可能です。私が知ってるチケットの入手方法はこの4つ。
1. 国民と永住者(PR)は政府に抽選を申し込めます。人気でなかなか当たりません
2. チケットは無償譲渡可能。有償での売買はダメ
3. NDPスポンサー企業が招待
4. 国会議員は参加が義務

NDPは30億円のメガ予算

入場は無料です。公務員は兼業になり測定難しいので人件費を除いて、2011年は費用が S$1,711万 (11億円)でした。それが昨年はS$4,050万(32億円)、今年の予算はS$3,940万(31億円)となっています。昨年は建国50周年で派手にやったことが理由ですが、今年はナショナルスタジアムを会場にしたことが理由です。

爆誕、ナショナルスタジアム

ナショナルスタジアムは、昨年に完成したばかりで、5万5千人を収容可能な開閉式屋根の大競技場です。シンガポールは人口が553万人しかいない国なので、人口の1%をも収容できるおばけ施設です。そしてお値段が高い。ここを会場に選び、リハーサルを含めて長期間借りたことで費用が高騰します。もともと、政府は年に45日間無料で借りることが契約上できるのですが、リハーサルのために35日を更に借り、そのためにS$1,000万(8億円)を払ったと言われています。これは長期間に渡る交渉で散々値切った結果で、3倍弱のS$2,600万(22億円)がスタジアムが当初求めていた金額です。
NDPは本番に加えて、リハーサルやプレビューがあり、そのため27万5千人が観覧可能です。
AsiaX: 建国記念日パレードの費用、昨年は1,700万ドル
Straits Times: What price for NDP at Sports Hub?

ファンパック

会場ではお土産が配られます。今年はビニールリュックに入っていました。これを詰めるために、軍から280人もが何日も動員されています。一般公開でのリハーサルでも配布されるため、30万個も用意されました。兵隊さんの苦労を思うと、涙なしには開けられません。
入っているのは、シンガポールが誇る下水処理水の飲水NewWaterや、協賛企業からのおやつや割引クーポン、国旗のフェイスペンディング、式の進行にあわせて点灯する明かりや、SINGAPOREと書かれたタオル、もちろん国旗が含まれます。
クーポンは現地観覧者以外にもeクーポンとしてネットで公開されており、誰でも使えます。バーガーキング、サブウェイ、文東記あたりが使いやすそう。
スタジアムは売店が閉まっており、着席すると簡単に抜けられないので、助かります。国家行事に協賛企業が多数含まれるのが、とってもシンガポール。
NDP 2016: 300,000 funpacks to be given out at NDP 2016
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ポケモンGo!

シンガポールでポケモンGOは8月6日に始まったばかりで、過熱まっさかり。ナショナルスタジアムにはポケモンGOのジムが立っていました。「ナショナルディにジムで熱いバトルをしよう!」というのがFacebookで出まわって、報道される始末。
当日、ナショナルスタジアムで、ポケモンGOのジムもポケストップは消えていて、ポケモンも現れませんでした。NDPの最中に携帯で遊ばないように、政府が依頼して消したのでしょう。。。
Straits Times: Sports Hub a Pokemon Go gym; NDP organisers warn of events that encourage players to hunt Pokemon

式次第

今年のNDPを現地で閲覧できましたので、そのレポートです。
18時開始のところ、16時前に着いたのですが、最寄り駅は既に混雑開始。太鼓叩いたりしてる人がいて既にお祭りムードです。
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インドネシアのバタム島からマリーナベイサンズをロケット弾で撃つ、というなかなかにクリーンヒットしなそうなテロ計画が直前に発覚したこともあり、セキュリティチェックがあります。警察犬がいて、金属探知機が配置され空港レベルです。
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これが5万5千人で埋まったナショナルスタジアム。壮観です。欠席者をどう管理しているのかが気になりました。席はゾーンだけが決まっていて、そのゾーンのなかで自由席です。
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今年のNDPロゴ。スタジアムの巨大ディスプレイに映しだされています。
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パレード前の前座

司会がいます。シンガポールの地上波テレビ局を持つメディアコープの専属アーチストです。そのしきりで、ウェーブをします。国のイベントで5万5千人がウェーブ、楽しい!
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今年のNDPでは障害者が取り上げられており、国民の一人としてみんなで一緒に進もう、という趣旨でした。NDPが進んだ所で愛国歌の歌詞に合わせて手話をしよう、ということで聴覚障害者がステージに立ちみんなで練習。歌は1986年のナショナルディテーマソング"Count on me Singapore"から。

パレード

行進します。去年は屋外なこともあって、軍の機動部隊など最近買った兵器のパレード参加もあったのですが、今年は屋内で兵士のパレードのみ。戦闘機が空をかっ飛ぶものもなし。国会議員が入場します。そして、リー・シェンロン首相が入場。首相の車は白のレクサスLS600hlです。
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お約束になっている巨大国旗をヘリが運搬するのは実施されましたが、スタジアムからは中継のみで実物は見えませんでした。
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スタジアムでは客席を巨大国旗が動いていきます。なかなかの迫力です。
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大統領入場

トニー・タン大統領。シンガポールで大統領は直接選挙で選ばれますが、実権はなく、日本の天皇と同様に儀礼上の存在です。
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ショウ

今年のNDPのテーマは“Building our Singapore of Tomorrow”(明日のシンガポールを創る)です。過去のシンガポールの伝説上の英雄劇が演じられます。その後は、別のストーリーで、50年後のシンガポールが「空中都市になってほしい」と子どもが期待します。
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屋内ですが花火も上がります。スタジアムの外でもあがっていました。
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Pledgeと国歌斉唱

最後は、Pledgeと国歌斉唱です。Pledgeはシンガポール国民の誓いで、学校では毎日暗唱します。これを聞いて「戦前の教育勅語みたいで、全体主義だな」と思うか、「米国の忠誠の誓い(Pledge of Allegiance: 公式行事で暗唱される)と同じで、国を大事にしているな」と思うかは、あなた次第。
シンガポール遺産委員会: National Pledge

最後に大会委員長が謝意を伝えている時に話していましたが、リハーサルに半年かけたとのこと。練度では日本の紅白歌合戦に勝るとも劣らないでしょう。30億円使って、半年練習したイベントが面白く無い訳がありません。もしチケットを手に入れる機会があれば、是非見てみて下さい。テレビ観戦よりずっと面白いですから。
全編は3時間にもなりますが、ネットで動画が公開されています。
www.youtube.com

アジア1位のシンガポール国立大学、都市伝説も駆け昇る ~授業料無料?!等の虚実と奨学金制度~

シンガポール教育

THE アジア大学ランキング1位 シンガポール国立大学

イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーション (THE) が、アジア大学ランキングを発表しました。3年連続1位を維持してきた東京大学が7位に転落し、代わってシンガポール国立大学 (National University of Singapore、地元ではNUS(えぬゆぅえす)と呼ばれる) が1位になりました。
THE: Asia University Rankings 2016

3年連続1位の東大が7位に落ちたのは、他校の伸びより、ルール変更と自校の低迷

今年のランキング

今回のランキング100位の中から、1位から3位とアジア各国のトップ校を抜き出しました。
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日本より一人あたりGDPで上回るシンガポールと香港のトップ校が強いこと、国全体のGDPで日本より上回る中国が強い結果になっています。シンガポールと香港に加えて、アジア四小龍とも呼ばれていた韓国・台湾が、日本に迫ってきています。

東大の去年と今年の比較: 東大の失点

東大とシンガポール国立大学の比較

東大の去年と今年のスコア比較、また東大とシンガポール国立大学のスコア比較です。
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日本の大学の弱点として一般的に指摘される"国際観"ですが、確かにシンガポール国立大学より東大が圧倒的にスコアが低く、素点で65.9点も差をつけられています。しかし、今回の順位変動での、最も深刻な問題では実はありません。理由は傾斜配分後は、100%中で7.5%しか配分がなく、傾斜配分後ではシンガポール国立大学と4.9点の差はついています。しかしながら、東大は、1位だった去年と今年の傾斜配分後の比較では、"国際観"は0.2点しかスコアを落としていません。
東大が一位から転落した致命傷となったのは、学術論文などの"引用"で大幅にスコアを落としたことです。昨年から今年で13.8点も素点で低下しており、傾斜配分後は100%中で30%も配分があるため、シンガポール国立大学に5.6点もの差を付けられました。
同一の項目であるにもかかわらず、点数の大きな変動があったのは、素点の算出方法に変化があったためです。引用のソースが、去年のトムソンロイターから、エルゼビアのスコーパスに変わりました。また、スコーパスに変わったことで、英語刊行での引用の過大評価を減らす目的での修正が、ゆるやかになっています。
英語での引用の測定方法をゆるめたところ、東大のスコアが大幅に減少したということは、英語での引用が東大は弱かったと推定できます。
最後の指摘としては、東大は全スコア項目で、前年から素点で減点していることがあげられます。
これらが、1位から7位への凋落の原因です。
THE: Asia University Rankings 2016 methodology
THE: Asia University Rankings 2015 methodology

まとめ: 東大首位転落は"引用"スコアでの計測ルール変更が理由。
まとめ: 東大が国際観が弱いのは例年同様。配点が少ないため、これまでは他分野でカバーできていた。

シンガポール国立大学の都市伝説

日本人にとっての海外の大学は多くがそうであるように、シンガポール国立大学も日本人関係者がほとんどいません。そのため、関係者がエッジを効かせて一部分を切り取って出した記事や、二次/三次情報を切り貼りしたまとめサイトなどを経由して、摩訶不思議なイメージが日本に出回っています。そのシンガポール国立大学の都市伝説を追ってみます。
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※写真はシンガポール国立大学

シンガポール国立大学は学費や家賃がタダ?!

「シンガポール国立大学は授業料が無料」とは、一部のみが真実で大半が嘘です。対象が限定される事象なのに、無制限のような印象を与える「主語が大きい」表現です。
シンガポールは欧州の極一部の国にあるような大学学費無料の国ではないので、「大学は無料ではない」ですし、「シンガポール国立大学学生だからといって、学生全員が無料にはならない」が当たり前の結論です。特に先進国の日本人が優遇を受けるには各種条件をクリアする必要があります。

シンガポール国立大学の学費

シンガポール国立大学の1年間の授業料は、ここに記載があります。一部の学部を抜き出してみます。単位はシンガポールドルで、$1を80円 として換算します。
シンガポール国立大学 (NUS): Fees for Undergraduate Programmes

NUS学部と専攻 国民 永住者 学費減免留学生 減免なし留学生
人文社会、情報処理、工学、理学 $8,050 (64万円) $11,250 (90万円) $17,100 (137万円) $29,350 (235万円)
法律 $12,500 (100万円) $17,500 (140万円) $26,650 (213万円) $37,750 (302万円)
医学部医学科 $26,400 (211万円) $36,950 (296万円) $55,450 (444万円) $141,100 (1,128万円)

補助なし外国人の値段を、学費の"定価"と見てよいでしょう。
注目すべきは、

  • 噂は嘘っぱちで、学費はタダではない。
  • 国民と永住者と外国人とで学費が異なる
  • 外国人にも申請可能な政府の学費減免がある
  • 専攻で学費が異なる

ことです。専攻で学費が異なるのは、日本で国立大学では学費は一律ですが、私立大学で馴染みがあります。
学費は国民か永住者か外国人かで異なり、外国人は減免がなければ国民より3倍以上も高額です。これが減免を申請すれば、2倍前後にまで縮まりますが、それでも学費は外国人の方がはるかに高額です。社会福祉を提供する必要がない外国人の学費が、国民より高額になるというのは、割りと一般的に見られます。
シンガポール教育省が提供している学費減免制度は、Tuition Grant というものです。
シンガポール教育省 (MOE): TG online
Tuition Grant の受給資格は、

  • 対象校の学生
  • 永住者と外国人は、卒業後3年間のシンガポールでの就労義務があること

です。対象校は、シンガポール国立大学だけでなく、今回アジア2位にランクインしているナンヤン工科大学や、シンガポール経営大学といった国立校が対象で、大学以外でも日本の高専に相当するポリテクニク等も含まれます。シンガポールにおいて国立大 (local university) と私立大の違いは、政府が資本を出しているかどうかです(※脚注1)。資本が弱い私大と、政府が資本注入と学生補助をする国立大とへの評価は、教員・施設・学費の差に直結しており、国立大かそうでないかの格差は日本より遥かに大きいです。
Tuition Grantは対象校に在籍していると、減免額は異なりますが、申請さえすれば外国人も原則として受給できます。ハードルは対象校に入学できるかどうか、ということです。外国人受給者は、シンガポール教育省の発表(2014年)によると、ポリテクニクが6%で一学年あたり1,700人、大学では13%で2200人になります。予算規模では、外国人向けはS$2.1億 (168億円) で、高等教育予算の10%よりかは小さい程度とのことですが、相当な規模になっています。
シンガポール教育省 (MOE): International Students Receiving Tuition Grant
大学院など更に進学したいTuition Grant受領留学生は、シンガポールでの就労を延期できます。年に平均250人が就労を延期させています。
シンガポール教育省 (MOE): International Student Tuition Grant Deferments

制度としては、国民はTuition Grantを自動申請となり、学費の"定価"から減免を受けますが、就労などの義務がないので、義務がないまま権利を得られる仕組みです。
永住者と外国人には、卒業後3年間のシンガポールでの就労義務があります。就職先に政府の指定はなく、留学生が自分で就活して探す必要があります。逆に言うと、3年間シンガポールで働くだけで、学費の減免を受けられます。よって、対象大学の外国人学生も永住者学生も大半がTuition Grantを受けていると、シンガポール教育省は言っています(2011年)。途中で学業や卒業後の就労を中断すれば、受領したTuition Grantの金額から就業期間を減額した金額に10%の年間利息をつけたペナルティを払う必要があります。
シンガポール教育省 (MOE): International Students and Permanent Residents in Local Universities
シンガポール教育省 (MOE): Frequently Asked Questions on Tuition Grant Scheme for Singapore Permanent Residents and International Students Admitted To Institutions of Higher Learning

まとめ: 国立大学の学生は政府の学費減免を受けられるが、国民・永住者・外国人で額が違う。
まとめ: 外国人が学費減免を受けると、卒業後3年間のシンガポールでの就労義務がある。
医学部進学のための誓約

シンガポール国立大学医学部医学科では、学費の"定価"との差額が、国民では年900万円にもなります。5年就学のため総額で4500万円にもなることから分かるように、相当な費用をかけて医師の養成が行われています。そのため、卒業後に、国民は5年間、永住者と外国人は6年間、シンガポール政府が指示する公務に就くことが入学の前提条件です。大半が医療業務です。この義務を途中で破棄すれば、ペナルティとして支払う必要があります。
「高等教育を受けた者が専業主ふになる是非」の議論があります。シンガポールでは有名校でも通常の学部であれば国民であれば国からの指針は特にありませんが、医学部のような政府助成が膨大なものであれば、ペナルティが明確に設定されています。
NUS: ADMISSION TO THE MEDICINE UNDERGRADUATE PROGRAMME AY2016-2017

まとめ: 補助金が莫大なシンガポール国立大学医学部では、卒業後に5~6年間公務に就く義務がある。

日本では、政府が学生に直接減免する制度はなく、国民も外国人も学費は同額です。日本では、国民も外国人も学費は同額です。国籍条件が付かないような、政府から大学への交付金の構造になっている理由は不明ですが、シンガポールの学費減免の外国人は卒業後の3年間の就労義務があります。これは移民国家のシンガポールが、優秀な留学生を将来の国民候補と見ているからです。大学に4年間通い、その後3年間就労すれば、シンガポールに7年間滞在することになります。人生の1/3をシンガポールですごし、すっかり染められるわけです。しかも対象は、国立大学などに入学できる優秀な留学生ばかりですが、彼らの母国は近隣の発展途上国であることが多いです。アジアで最優秀の高等教育を受けられ、高給が稼げるシンガポールでの就労へも直結することは、近隣諸国の学生には極めて魅力的です。
シンガポールでも、最近は出生率低下から高齢化社会の進展が加速しています。これを防ぐために、移民の呼びこみを政府は決定しています。移民なら誰でも良いわけでなく、単純労働者ビザでは何年住んでも永住権の申請の権利がない国であり、社会福祉の対象になる可能性が小さく、国に貢献できると想定される人が、選別の上で歓迎されます。
uniunichan.hatenablog.com

本人の意志次第とはいえ、シンガポールの留学生は、母国に帰るより、経済的に豊かなシンガポールで永住権をとって、ゆくゆくは国民になるレールが敷かれているわけです。実際、シンガポールでの外国人奨学生は、8割以上がシンガポールに住み続けているとの国会答弁があります。
シンガポール国会: Foreign Scholars (2012年1月9日)

日本は移民国家ではないので、優秀な留学生→帰化、との一直線にはならないとは思いますが、国際関係での重要な人的リソース活用策として、シンガポールの留学生制度や米国のフルブライト奨学金から、学べることは多いと思われます。

まとめ: 移民国家シンガポールが外国人に学費減免を提供するのは、永住・帰化が狙い。

シンガポールでの国立大学留学生への奨学金

シンガポール国立大学の学費は無料ではない、ということが分かりました。また、シンガポール政府教育省の留学生用の減免を受けても、家賃タダどころか、外国人だと国民の2倍の学費です。それではネットの噂は、返還義務が無い奨学金を受けて学費負担が無くなるという意味でしょうか。
シンガポール国立大学での奨学金は、大学がここにまとめています。
シンガポール国立大学 (NUS): Scholarships
※シンガポールで返還義務があるものは、優遇条件でも、奨学金でなくローンとして扱われます。

大学や各学部や政府や企業の大学外機関が出すものも含めて、多種多様な奨学金があります。その中でも「シンガポール国立大学は無料」という噂の出処と想定される大規模なシンガポール政府奨学金があります。ASEAN学部生奨学金です。
シンガポール国立大学 (NUS): ASEAN Undergraduate Scholarship (AUS)
シンガポール国籍を除くASEAN出身フルタイム学生はこの奨学金に応募可能です。シンガポール国立大学以外にも、ナンヤン工科大学や、シンガポール経営大学といった国立大学などでも、この奨学金の対象です。

まとめ: 政府奨学金の対象はシンガポール国立大学のみでない。国立大学生が対象だ。

近隣発展途上国から優秀な学生を青田刈りするシンガポール

シンガポールはASEAN (東南アジア諸国連合) の主要加盟国です。ASEAN加盟国は、

  • ブルネイ
  • カンボジア
  • インドネシア
  • ラオス
  • マレーシア
  • ミャンマー
  • フィリピン
  • シンガポール
  • タイ
  • ベトナム

であり、大半が発展途上国です。ASEAN学部生奨学金の受領は、卒業後3年間のシンガポールでの就業が必須なTuition Grantの申請が必須です。ASEAN学部生奨学金がASEAN出身者を対象にしているということは、近隣諸国からの優秀学生をシンガポールに吸い上げている構図があります。
奨学金は大学生のみでなく、中学1年生からもシンガポールでの留学を対象にしたものもあります。大学入学前からシンガポール政府奨学金を受けていた生徒の、シンガポールでの大学進学率は65%です。大学に進学しない35%は、高齢化社会に備えたポリテクニクでの看護師ではと私は想定しています。
シンガポール教育省 (MOE): ASEAN Scholarships
勿論、送り出し国にも、優秀な学生を金銭負担無しに先進国で鍛えられる、将来的に母国への送金や貢献を期待できるメリットもあり、また最終的に進路を決めるのは学生自身とはいえ、送り出し国には両刃の剣になっている側面もあります。

まとめ: シンガポール政府の奨学金は近隣諸国出身の優秀学生の青田刈りだ。

2001年から2005年と少し古いデータですが、奨学金受領の結論としては、奨学金受領者は学部生は全体の14%、院生では30%だと、シンガポール教育省は発表しています。さすがにデータが古く、特に院生は今ではこれより高いと思いますが、確認できる公式の値はこれになります。当然、奨学金によっては、生活費や母国への航空券付きの手厚いものから、学費の一部負担のみのものまで色々です。日本よりは返還義務なし奨学生が多いとしても、「シンガポール国立大学は無料」という言葉とは大きな乖離があります。
奨学金受領の学部生の1/3が国民、つまり2/3は外国人と永住者。奨学金受領の院生は1/4が国民、つまり3/4は外国人と永住者です。
当時は学部での奨学金スポンサーは、政府が35%、企業が54%、大学が11%。大学院での奨学金スポンサーは、政府が3%、企業が12%、大学院が79%、研究機関が6%でした。
2011年になっても、外国人留学生の35%がなんらかの奨学金を受領していると発表されています。65%はTuition Grantで減免を受けたとしても、国民よりはるかに高い学費を、自腹で払っている留学生たちだということです。
※奨学金受領率は国立大学全体での平均ですが、受領者がシンガポール国立大学生に偏っており有利であることは考えにくいです。2000年にシンガポール経営大学が国立大学の3校目として開校した直後の数字であるだけでなく、国立大学の2校目は今回アジア2位であったナンヤン工科大学であり、国内評価としての優劣は専攻によるからです。
シンガポール教育省 (MOE): 国会答弁 2006年2月13日
シンガポール教育省 (MOE): International Students and Permanent Residents in Local Universities

まとめ:奨学金受領者は、国立大学学部生が14%、院生が30%。学生全員が無料ではない。
まとめ:国立大学留学生の35%は奨学金を受けており、65%は学費を自腹で払っている。留学生全員が無料ではない。

日本・シンガポール奨学金比較

日本にも外国人留学生への政府奨学金がありましたよね?

シンガポールでの留学生向け奨学金の話をすると、「日本でも外国人留学生への奨学金での大盤振る舞いがあったよね」という話になります。文部科学省の奨学金です。
日本学生支援機構: 日本政府(文部科学省)奨学金
外務省: 日本留学総合情報ガイド: 国費外国人留学生制度の種類

これとASEAN学部生奨学金を比べてみましょう。

日本とシンガポールの政府奨学金比較
文部科学省奨学金 学部留学生(日本) ASEAN学部生奨学金(シンガポール)
人数 150名 (総数11,266人) 未公表(全ての政府奨学生の新規選出900人)
学費 免除 支給
語学教育 日本語1年間 なし
奨学金 月額11万7千円(年140.4万円) 年S$5,800 (年46万円)
その他 往復航空券、宿舎 なし
奨学金継続条件 なし 3.5/5(評価B)以上の成績
義務 なし 3年間のシンガポールでの就労

日本がシンガポールより手厚いのが分かります。
日本の文科省奨学金では、学費・宿舎・往復航空券が提供されるのが共通で、奨学金によって支給期間・奨学金金額・日本語教育期間が異なります。研究留学生(院生)や高専などを含め、総数で11,266人の留学生が奨学金を受けてます。
日本の文科省奨学金では一度奨学生になると期間を通しての支給が決まりますが、シンガポールの奨学金では支給継続に成績が条件になります。母国では最優秀だった学生でも、母国語での学習から、英語での学習に切り替わり、異国での暮らしになることから、B以上のグレードは楽々とはいきません。
学部の外国人留学生に付与されるシンガポール政府奨学金は、年に900名とのことです。付与の内容は、学費・住居費・生活費等であり、一人あたりの政府支出は平均S$2.5万と発表されています。
シンガポール教育省MOE: Scholarships awarded to international students

次に、外国人留学生の政府予算を比べます。

外国人留学生向け政府予算 比較
日本政府 文部科学省 シンガポール政府 教育省
対象人数 19,336人 (*1) 推定17,500人 (*2)
予算額 242億円 推定240億円 (*3)

(*1) 11,266人(国費留学生) + 8,070人(留学生受け入れ促進) = 19,336人
(*2) {政府奨学金(900人×4学年) = 3,600人 + Tuition Grant 13,900人(ポリテク1,700人×3学年、大学2,200人×4学年)} = 17,500人 ※ポリテクには2年、大学には3年で卒業の専攻もあり、大学院の人数は不明
(*3) 168億円(Tuition Grant) + 72億円(奨学金:900人×4年×S$2.5万=S$9,000万) = 240億円
文部科学省: 平成28年度文部科学関係予算(案)主要事項

日本政府はシンガポール政府と同等の規模で、外国人留学生に支援をしています。シンガポールでは未公表の大学院留学生が加わると、シンガポールの規模が日本を上回るでしょう。GDPで日本はシンガポールの14倍(IMF 2015年)であることを考えると、シンガポールは相当積極的な予算を留学生に組んでいます。

高まる反移民感情「外国人留学生に金を使うより自国民の学費に!」

シンガポールでは、増え続ける移民に対して、2009年の経済危機(リーマンショック)以降、国民がアレルギーを示すようになってきています。シンガポールでは人口の1/3が外国人で、現在も増えています。しかし、2011年総選挙で与党は勝利しながらも得票率が低下する打撃をうけたことで、移民のビザ発給が厳格化され伸びはゆるやかになりました。このネガティブな感情は、留学生に対しても同様です。
uniunichan.hatenablog.com
留学生比率は、国立大学ごとの公式数値は不明です。シンガポール教育省によると2011年には当時3つしかない国立大学の平均として、外国人留学生が18%であり、同様に外国人ですが永住者は4%でした。外国人留学生比率が20%を超えないように調整しているとのことです。
シンガポール教育省 (MOE): International Students and Permanent Residents in Local Universities
東大の留学生比率は、学部で2.4%、インで19.4%、研究所で38.9%、総計で10.9%とのことです。
東京大学: 2016年(H28年)5月1日現在 外国人学生数

野党からの批判

非選挙区選出議員 (NCMP) を以前務めていた元野党議員は「second upper class honours以上の成績の外国人奨学生は68%、学生全体では38%なのでそれより高いと政府は言う。しかし、外国人奨学生は人数が多く、シンガポール人向け政府奨学金PSCはsecond upper class honours以上が97%と比べると、成績が十分ではない」「外国人奨学生受け入れには反対しないが、シンガポールの大学は世界水準になったにもかかわらず、奨学生受け入れ基準が低すぎる」と自身の国会質疑に基づいて主張しています。
Yee Jenn Jong: Time to review our scholarship framework for international students

シンガポールでの自国民への政府奨学金

シンガポールで国民が外国人奨学生に反発するのは、言うまでもなく、自国民の教育環境と比べているからです。シンガポールでの国民への奨学金は、人数が少数限定された、シンガポールらしいエリート主義あふれるものです。シンガポールで国民への政府奨学金と呼ばれるものは、各省庁が提供しているものや公務員局 (PSC) が提供しているものがあり、その中でも最高峰のものがPSC奨学金の一部である大統領奨学金 (President's Scholarship) です。PSCの対象になると、氏名・出身校・進学先と専攻が公表され、大統領奨学生は地元ニュースでも大きく報道されます。2015年はPSC奨学生は75名大統領奨学生は4名でした。大統領奨学生はシンガポールの各界でのトップリーダーへの登竜門です。
勿論、義務 (bond) があります。シンガポールを含めた留学国によって異なる卒業後4年から6年の官僚としての就業義務です。これは、官僚に興味があればまたとない出世コースですし、興味がなければ応募をためらわせます。公務には軍役も含まれますが、応募時にジャンルの希望があるので、軍役を希望するものしか軍役に配属になりません。外国人奨学金は周辺国の優秀生をシンガポールに吸い上げる仕組みですが、国民向け政府奨学金は自国民の優秀者を官僚に吸い上げる仕組みということです。また、永住者もPSC奨学生に応募可能ですが、支給が決まった段階で、国民に帰化することが受領の前提となります。外国人は応募不可です。

PSCに加えシンガポールの各省庁が独自で出す奨学金もあるとはいえ、国民への奨学生の人数は、外国人奨学生の900人には及びません。先ほど、紹介したように、「奨学金受領の学部生の1/3が国民、つまり2/3は外国人と永住者。奨学金受領の院生は1/4が国民、つまり3/4は外国人と永住者です」。

まとめ: 国民向け政府奨学金は自国民の優秀者を官僚に吸い上げる仕組み

外国人奨学金は社会福祉でない、国家の戦略投資だ

シンガポール政府は国会答弁で留学生向け政府奨学金の狙いとして以下をあげています。

  1. 地域の相互理解
  2. 地域の親善
  3. ダイバシティ (異文化スキル)
  4. 出生率低下での労働力確保

シンガポール国会: 国会答弁 (2012年1月9日)
地域の相互理解や親善というのは、確かにそうでしょう。その一方で、日本では正面から論じられない、移民政策であることがシンガポールでは述べられています。

シンガポール政府の留学生奨学金の狙い

ここまでの環境の差になると、国民が奨学金の違いに怒るのは一見合理的に見えるかもしれません。ところが、自国民への政府奨学金と、留学生への政府奨学金は、同じ奨学金でも趣旨が違います。自国民への政府奨学金は、将来シンガポール政府を担っていくエリート養成であり、学費減免は社会福祉です。ところが、留学生への政府奨学金や学費減免は、少子高齢化対策であり外国人タレントハントという戦略投資の位置づけが強まります。
周辺発展途上国からシンガポールに留学するには、大半が奨学金無しでは経済的に無理なことは自明です。奨学金は一般的に2つのポリシーがあります。メリットとニーズです。メリットは優秀な学生に対して給付するもの、ニーズは就学基準を満たしているが経済的支援無しでの就学が困難な学生に給付されるものです。米国ではニーズの奨学金は外国人が原則適応除外ですが、シンガポールのASEAN学部生奨学は、外国人対象でありながらニーズの意味合いが強いです。その一方、シンガポールの政府奨学金はメリットです。この理解を持つと、シンガポールの野党議員の主張は、「これまでニーズだった留学生奨学金をメリットにすべき」という趣旨だと解釈できます。恐らく彼にとっては、フルブライト奨学金のような制度が好ましいのでしょう。
奨学金議論で「同じ財源なら外国人より自国民に給付しろ」という直感的な主張は実はズレています。留学生奨学金を外国人への社会福祉と誤認しているためです。シンガポール政府が歓迎する議論と思われるのは、「移民政策としてどんな人物を歓迎するのか」「どんな留学生に対して幾らまでなら国は学費などを投資すべきか」「成人するまでに留学生として生活をすることでシンガポールに溶け込むチャンスがあるのに、それを逃して社会人からの移民のみに頼ってよいのか」ということでしょう。
同様に日本の奨学金議論に必要なのは、「続けるのであれば奨学生に何を期待するのか」、「続けないのであれば奨学生への投資無しでそれが代替できるのか、そもそも不要なのか」のはずです(シンガポールでは目的はタレントハントであり留学生の帰化なのは明確で、目的すらあいまいな日本の留学生奨学金は批難されるべきです)。

まとめ: シンガポールの留学生奨学金は社会福祉ではない。移民政策の対外戦略投資だ。
日本の外国人留学生への政府奨学金は戦後補償が原点

シンガポールが明確に優秀な移民候補のタレントハントを目標としており、実績も上げていることを考えると、日本は政府奨学金を60年間もしていますが、お金をばらまいて終了に見えてきます。日本の政府奨学金は戦後補償が出発点ですが、具体的な成果を何にしているのか、何をもって外国人奨学生への成果として測っているのかはあいまいです。文部科学省の「国費外国人留学生制度実施要項」を見ても、制度の目的が書いていません。
独立行政法人 日本学生支援機構 (JASSO) が帰国外国人留学生へのフォローアップをやっていますが、例えば日系企業が海外進出する際に元奨学生から話を聞くであるとか、日系企業の現地幹部として活躍している、海外企業が日本進出に際し在日法人幹部となり日本人を雇用している、各国政府の知日派として日本とつないでいる、という話はまれだと思われます。せめて、各国奨学生出身の政財界著名人の公開や、連絡先開示依頼のとりつぎなどは、即座にできるはずです。米国フルブライト奨学生は、一生フルブライターとして貢献し、それを誇りにしています。
インターネットを中心に、日本の政府奨学金が叩かれていることを目にすることが多くなりました。目標と成果を公開しての活動をしていかないと、反発から規模や給付内容の修正は避けられなくなるでしょう。

シンガポール国立大学 と シンガポール教育 よもやま話

実は、日本人の一部界隈で既にシンガポール国立大学ブーム

日本人の一部界隈ではシンガポール国立大学は既にブームです。大学ランキングで上位なだけでなく、シンガポールという国が最近脚光を浴びており、「シンガポール"国立大学"」という日本人にとっての学校名のとおりの良さも大きな要因でしょう。
これを分かりやすく示すのが、シンガポール国立大学のMBAでの、日本人学生数です。フルタイム学生100人中、日本人学生数は15%前後を占めています。これは地元のシンガポール人(8%)の倍近いのです。知名度がある留学先の中で、日本人占有率が最多な専攻の可能性が高いです。その一方で、同じシンガポールにあるナンヤン工科大学は、THE大学アジアランキングで今回2位、Financial TimesのMBAランキング(29位)ではシンガポール国立大学(32位)と例年接戦しながらも今年は高ランクですが、日本人MBA学生数は2名~6名前後にとどまっています。
しかしながら、交換留学生でなく、シンガポール国立大学に学部から入学する日本人が増えている、ということは私は確認していません。日本人の高校生で、シンガポール国立大学に入学できるのであれば、米英有名大に入学できるからでしょう。学部生で入学できる人達は、生まれや育ちがシンガポールである人が大半で、日本人とシンガポール人ハーフの割合が高いです。

「学費・家賃タダ」という記事はなんなのでしょう?

シンガポール国立大学で学費は無料ではありません。返還義務なしの奨学金を取る難易度は、

  • 大学名 (有名校であれば奨学金の選択肢が多い)
  • 学生の優秀さ (メリットでは優秀である必要あり、ニーズでは入学できればほぼ無関係)
  • 学生の経済事情 (メリットではほぼ無関係、ニーズでは困窮家庭であれば有利)
  • 学部か院か (企業の寄付が集まりやすく教員の手足にもなる院が有利)
  • 専攻 (企業の寄付が集まりやすい実学系が有利)
  • 出身国 (特定出身国を対象にした奨学金あり)

などによって大きく変わります。ニーズでとれるか、メリットでとれるかです。企業の寄付がつきやすい専攻の院であれば、「学費を払っている学生はほとんどいない」という状況にシンガポールではなります。
シンガポール国立大学に在籍していた人が書いた記事は、シンガポール国立大学の一般的な内容ではなく、彼が所属した大学院の専攻での、記事の筆者の身の回りに限定される話です。「留学生の半分が奨学金を受けている」のはリー・クアンユー公共政策大学院だとそうなのかもしれませんが、繰り返しですが、奨学金受領率は、国立大学の留学生は35%であって、学部生(国民と外国人)では14%です。
なにより、リー・クアンユー公共政策大学院は、シンガポールの国立大学の中でも31年間首相であったリー・クアンユー初代首相の名前を持つことからも分かるように、シンガポールの中でも特殊で恵まれた専攻です。リー・クアンユー氏の名前が付いている学校に奨学金を出す、というのはシンガポールとビジネスをする企業にとってステータスとなることは間違いありません。理系やMBAと比べると卒業後の就職が困難な公共政策大学院は、各国政府からの国費留学生(つまり卒業後の就職先と学費が確保)がいなければ、学生を集めることが大変な専攻の一つです。シンガポール国立大学はリー・クアンユー初代首相の名前をつけるという国策に即して、私費学生確保のために奨学金をまいています。
ASEANでもない先進国出身者の日本人が、シンガポールで奨学金をとるのは難易度が高いです。ニーズでの奨学金が適応外だからです。シンガポール国立大学に在籍していた記事を書いた方が奨学金をとれたのは、その方が優秀だから、というのと、メリットベースで奨学金をとるのに敷居が低い専攻の院だから、ということに尽きます。

世界遺産の中にキャンパスがあって風光明媚なんですね

嘘です。
シンガポール国立大学にはキャンパスが3つあります。ケントリッジ、ブキティマ、オートラムです。世界遺産ボタニックガーデン近くのブキティマキャンパスにあるのは法学部とリー・クアン公共政策大学院であって、シンガポール国立大学のメインキャンパス(ケントリッジ)はそこからMRT地下鉄で30分以上かかります。
また、世界遺産ボタニックガーデンと隣接です。世界遺産の中ではありません。
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※写真はケントリッジキャンパスを走る大学の無料バス。キャンパスは広大なので、バスに乗らないと移動が大変です。

シンガポールでの大学への評価は給与格差

シンガポール内での大学評価は、日本のような入学時の偏差値ではありません。評価は卒業生の給与でされています。
■国民: 新卒学生給与

教育機関名 (日本の類似教育機関) 月給の平均/中央値
ITE 商業工業高校 平均$1646 (14万円)
ポリテクニク 高専 中央値$2100 (18万円)
SIM (最大手私立大学) 平均$2500 (21万円)
国立三大学 (NUS/NTU/SMU) 平均$3468 (29万円)

シンガポール あるある FAQ - 今日もシンガポールまみれ

シンガポールの大学専攻での給与格差

日本でも文学部や社会学部の大学院に進学すると就職に困ることはよく知られていますが、シンガポールではそれが学部からになります。日本は新卒の採用にはポテンシャル専攻をするため、何を専攻し何を大学で学んだかは、それほど評価されません。しかし、シンガポールでは、専攻で専門知識を身につけ、それを活かせるインターンシップ先を探し、大学の成績で有名企業からは足切りを受け、インターンを業務経験として見せることが、新卒が仕事を得る王道です。業務に結びつかない専攻は不利なのです。
シンガポールでは教育省が、学部で各専攻の卒業生の新卒給与と就職率を公開しています。これが採用企業からの大学および専攻への評価です。日本人が初めて聞くであろう3校目の国立大学であるシンガポール経営大学が高く評価されていることが分かります。地元での評価と、グローバルの評価は異なるのです。

順位 大学 専攻 卒業者の平均月給 日本円換算($1=80円)
1位 シンガポール経営大学 法律 (Cum Laude以上) $5,313 ¥425,040
2位 シンガポール経営大学 法律 $4,997 ¥399,760
3位 シンガポール国立大学 法律 (L.L.B)(Hons) $4,910 ¥392,800
4位 シンガポール国立大学 医学部医学科 $4,729 ¥378,320
5位 ナンヤン工科大学 会計ビジネス $4,438 ¥355,040
6位 ナンヤン工科大学 ビジネスコンピューティング $4,395 ¥351,600
7位 シンガポール経営大学 経済 (Cum Laude以上) $4,380 ¥350,400
8位 シンガポール国立大学 経営管理 (Hons) $4,326 ¥346,080
9位 シンガポール国立大学 コンピューター工学 $4,252 ¥340,160
10位 シンガポール経営大学 経営管理 (Cum Laude以上) $4,130 ¥330,400

Salary.sg: Graduate Employment Survey 2015 (Published 2016)

シンガポール国立大学って「日本の東大」でエリートなんですよね
シンガポール国立大学って、東大と比べると学生の質が大したことない

どちらも印象論で的外れです。シンガポールで「NUS卒業です」と言われても「おぉ、すごいですね」とはならないです。かといって、シンガポール在住の一部日本人にいるような「NUSは大したことがない」も極端です。
まず、シンガポールで最優秀層は政府奨学金で海外に行くことが多いです。そのため、地元の国立大学には進学しません。しかし、近年では政府就職への義務を嫌って、政府奨学金を断って地元の国立大学進学も増えてきました。
ですが、往々にしてシンガポールにいる日系企業の駐在員で「NUS、大したことない」と愚痴をこぼしているのは、日系企業を優秀な学生が職場として選ばないからで、それはシンガポール国立大学の問題である以上に、職場の問題です。そのため、政府奨学生クラスの人材とは(たとえ政府奨学生クラスの人材がシンガポール国立大学に進学していても)日系企業は元から縁がないので、関係ありません。
uniunichan.hatenablog.com
政府奨学金の最上位層を除いて考えると、シンガポールでは優秀層はシンガポール国立大学に集中しておらず、大学序列化は専攻によっては多少ありますが、大学間での明確な序列化はありません。優秀層はナンヤン工科大学とシンガポール経営大学にも分かれます。日本のように大学名をきけば序列が分かる、というものでは、シンガポールはありません。
日本の学生とシンガポールの受験競争をする母集団が異なりますが、比較にはPISAがあげられます。15歳を対象にしたPISA試験結果で、数学・科学・読解の全分野で、日本はシンガポールに成績が劣っています。日本の大学序列の偏差値は、入学時の難易度に過ぎず、肝心の在学中の習得や研究等を反映していないことが致命的です。

院生は中国人ばかり

はい、ご指摘通りです。米英の院も似たような学生の構造です。
シンガポールでは日本のように「理系だったら修士までいきたい」であるとか「院に進学して学歴ロンダリング」「就活失敗したから院」というような進学動機はありません。研究者志向の人を除いて、仕事を得るためには学部の学歴で通常は十分です。
結果として、自国民より、中国やインドから院生はスカウトすることになります。

留学生や外国人教員を金で買ってる

はい、ご指摘通りです。それがクリエイティブクラスに必要なダイバシティと優秀層の流入につながっています。大学ランキングでも、国際観の上昇に直接寄与しています。

シンガポールは詰め込み教育

トップ校にガリ勉せずに入れる国があると聞いたことがないです。日本の授業より、生徒・学生と教師とでインタラクティブです。
学校の勉強など特にせずとも、好きなことをやってるだけで、受験ぐらいらくらく超えられるのは日本のトップ校の学生でも限定的です。
シンガポールでは詰め込み教育批判に対応するために、国際バカロレア (IB) を地元校に導入したところ、45点満点で世界平均が29.94点のところ、41.3点をとるACS (International)という学校があらわれました。ACSは以前からの地元のトップ校です。
uniunichan.hatenablog.com

ランキング対策してずるい

はい、シンガポールの大学はランキングは相当意識しています。
日本の大学も、系列校進学・推薦入試・科目減入試と国内基準の偏差値対策を頑張っているので、世界大学ランキングでも同じように徹底対策をとる大学があらわれることを期待します。

シンガポール国立大学からノーベル賞とってないじゃないですか

はい、シンガポールからノーベル賞受賞者はいません。THEランキングでノーベル賞の数は基準ではないので、今のような結果になっています。

※脚注1:私大のUniSIMもTuition Grant対象ですが、フルタイムで仕事を持つ(つまりパートタイム学生)か2年の社会人経験がある国民・永住者に限定されます。UniSIMへのTuition Grantでの趣旨は、社会人の学士取得支援なためです。またUniSIMは私大でありながら、政府資本を受けるシンガポールで最初の大学です。


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