今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

韓国紙『河野外相、シンガポールの英字紙にも韓国批判の寄稿文』の寄稿を全訳してみた

シンガポールウォッチャーのうにうにです。
日本のメディアは、来る日も来る日も韓国ニュースがひっきりなしで、「日本も国力が相対的に減退し、これまでのようになあなあではなく、韓国と向き合わざるをえないのだな」とシンガポールにいながらにして思います。

日本に迫る韓国経済力

経済力で比べましょう。
国民総生産GDP(名目)では、1970年には、日本は韓国の25倍でした(日本2107億米ドル、韓国82億米ドル)。
それが2016年では、3.8倍にまで詰め寄られています (日本4兆9111億米ドル、韓国1兆2847億米ドル)。

一人あたりGDP(名目)では、1970年には10倍(日本米ドル2037、韓国209米ドル)。
2016年には、1.4倍にすぎません(日本38,972米ドル、27,608米ドル)。

河野外相のシンガポール紙への寄稿

その韓国との関係で、河野太郎外務大臣が、シンガポール最有力の英字紙ストレイトタイムズに「最近の日韓紛争の背景」を寄稿しました。テーマは、徴用工補償問題が中心で、GSOMIA (日韓秘密軍事情報保護協定) にもふれています。
シンガポールの読者を対象にしていることから、日韓請求権協定に振り返り、日本政府の考え方を説明しています。日本人にとっても、おさらいに役に立つでしょう。
要点です。

  1. 日韓請求権規定により、徴用工への日本の補償は「完全かつ最終的に解決した」。
  2. 日韓請求権規定により、韓国政府に3億米ドルの補償と、2億米ドルの借款を日本は提供した。
  3. 日韓請求権規定の協議中、日本は個人への直接の補償を韓国政府に提案したが、韓国政府は「韓国政府の責任で補償する」として断っている。
  4. 日本企業への賠償を命じる韓国の裁判所判決は、日韓請求権規定に違反している。
  5. 日韓請求権規定で日本からの賠償を受けたことで、賠償を配分する責任は(日本から)韓国政府に移っており、それは2005年に韓国政府が再確認している。
  6. 韓国への輸出管理の運用の見直しは、異なる問題であり、関連付けてGSOMIA終結を判断した韓国政府は誤解をしている。

外務省が頑張っているのですが、河野外相のこの寄稿文は日本の主要メディアは取り上げていません。
本件でシンガポールは直接関係はない第三国なのですが、ストレート・タイムズ紙への外務省寄稿は、重要事項に限って時々行われます。2013年には在シンガポール日本大使館が「尖閣諸島をめぐる領土紛争は存在しない」という寄稿がありました。

河野太郎外相とシンガポール

実は、河野外相は、シンガポールに土地勘があります。
衆議院議員になる前の社会人時代に、富士ゼロックスで勤務していました。その際に、シンガポールの富士ゼロックスアジアパシフィックに赴任しています。
外相時代でも、公務でたびたびシンガポールに訪れています。



韓国紙 中央日報の報道

韓国メディアの中央日報が河野外相の寄稿を報じています。

抜粋します。
前半は寄稿の要約をしています。後半では、寄稿への論評、つまり中央日報の意見が入っています。抜粋し、意見の箇所を私が太字にします。

日本政府が韓国だけを狙って輸出規制措置を発動したことは徴用賠償判決と関係がないという強引な主張

韓日対立は韓国が1965年の韓日請求権協定の時の約束を守らずに起きたという「ごり押し主張」

特に「過去の民間労働者」という表現を使って徴用被害者に強制性がないというイメージを与え韓日対立の原因が韓国政府にあるという印象を植え付けるのに注力した。

いい時代になりました。国家間対立で論点への視点の違いを、対立国のメディアが母国語に翻訳して読めるのですから。自国メディアのバイアスを通していないというのが大事です。日本の左派メディアが「情勢はXなのだから、日本は謝罪すべきだ」、右派メディアが「情勢はYなのだから、日本は抗議すべきだ」と書いても、いつもの自社読者向け論評であって、一次ソースにさかのぼる根性がない下々にはまず参考にもなりません。参考になるのは、左派メディアが「日本は抗議すべきだ」、右派メディアが「日本は謝罪すべきだ」と言う場合です。

韓国紙は、自紙の邦訳で、結構な閲覧数があると推測されます。自国と自紙の考え方を伝えることで、経済的にも潤うのですから、(一部の日本人読者に反発されようが)本望でしょう。日本のマスコミは(誰が読者なのか謎の)英字紙を作るプライドはあるのですが、こういう「対立国の言葉で自国と自紙の考え方を伝える」アプローチの方が、実は影響力も持て、稼げるのではないかと思えます。一番コストがかかる元の記事は、自社ですでにあるのですし。どうですか、日本のマスコミさん?

それでは、全訳です。
www.straitstimes.com

最近の日韓紛争の背景

河野太郎からストレイト・タイムズ紙へ


日本と大韓民国 (ROK: 韓国) との間の協調は極めて重大である。両国が隣国からなだけではなく、地域の平和と安定への必要条件だからである。これは北朝鮮問題への取り組みも含む。しかしながら、協調関係は当然のものではない。日本と韓国が長年に渡って努力してきた、絶え間ない注意と配慮を必要とする。


長い期間を経て、両国は親しく友好的で協力的な関係を築いてきた。これは、1965年に国交正常化した時に、両国が結んだ日韓基本条約に基づいている。しかしながら、第二次世界大戦での朝鮮半島からの元・民間人労働者 (former civilian workers) の問題に関して、両国は障害に直面している。


多くの読者はこの話題に熟知していないかもしれないので、簡単な背景を説明したい。


1965年、厳しい交渉の14年間の後に、日韓請求権並びに経済協力協定を両国が締結した。


1965年の同意の条項において、3億米ドルの助成金を提供し、2億米ドルの貸与を日本は同意した(韓国の当時の国家予算の1.6倍にのぼる総額だった)。二国間とその国民との間での要求に関するすべての問題は、「完全かつ最終的に決着した」と確認されていた。


交渉において、日本に対する韓国の請求への概要を韓国は示していた。8項目が記載され、「徴用された韓国人への戦争でおきた損害への賠償」と「徴用された韓国人への未払い給与」が含まれていた。1965年合意での「完全かつ最終的に解決した」との請求には、これら8項目の領域内のあらゆる請求を含むことが、1965年合意での両国が同意した議事録で明確に述べられている。


しかも、1965年合意を交渉していた時に、韓国は全ての"徴用された"労働者への補償を求めており、物理的かつ心理的な苦痛への損害を補償は含むべきだと提示していた。それに応じて、日本側は個人への支払いを提案した。しかし、国家としての損害賠償を要求し、韓国内での支払いへの責任を韓国政府がとると韓国代表は主張した。


40年後の2005年8月、1965年合意で日本から得た3億米ドルの助成金は"強制動員"の犠牲者への"苦痛への歴史的な事実"への補償を含んでいたことを、韓国政府は再確認している。


その際、"強制動員"の犠牲者への救済手段を提供するために受け取った賠償の適切な額を配分する道義的責任を負っていると、韓国政府は明らかにしていた。


二国間政府でのそのようなやりとりにもかかわらず、韓国国民の中には、朝鮮半島が日本統治下にあった第二次世界大戦で日本企業による"強制動員"に従ったと主張し、2つの企業、日本製鐵と三菱重工業への損害賠償への支払いを求める訴訟を起こした。


昨年、韓国最高裁判所は、2つの日本企業への一連の判決を言い渡し、前民間労働者 (former civilian workers) に"損害賠償"の支払いを命じた。事実から明確なことだが、これらの判決は、1965年合意を明確に反している。


1965年合意は二国間の外交関係を正常化させた法律的な土台になっているが、50年以上もたった今になって、二国間での誓約を韓国は一方的に破棄した。


判決は極めて遺憾で全く受け入れられないとの立場を、日本政府は伝えている。日本政府は、韓国に適切な処置をとるように強く促しているが。これには、国際法違反を是正する即座の対応も含まれている。


しかしながら、韓国政府はどんな具体的な処置をとっていない。


日本政府は公式に外交会議を求めており、1965年合意の中に備えられていた、独立した客観的な裁定のために争議仲裁を呼びかけている。しかし、韓国は仲裁への参加を拒否しており、国際法違反を重ねている。


未来に向けた二国間関係を確固たるものにするステップを我々が共に再びとるために、韓国政府が1965年合意を遵守し、国家間に加えて国際法の立場からもこの問題に取り組むこと、そして国際社会の責任ある一員として具体的な行動をとることを、私は強く希望している。


最後に、ソウルが終結を決めた、日韓秘密軍事情報保護協定 (GSOMIA) にふれておきたい。これは、二国間の安全保障を高め、地域の平和と安定を確保するのに、2016年以降、貢献してきた。


北東アジアにおける安保情勢への韓国政府の完全な誤解を反映したのがこの決断だと、私は言わなければならない。韓国向け輸出管理の運用を日本が見直したことを、韓国政府は自国の決断に結びつけた。しかし、これらの2つの問題は性質が異なっており、共に関連づけるべきではない。

  • 河野太郎は日本の外務大臣

筆者への連絡方法、正誤・訂正依頼など本ブログのポリシー

にほんブログ村 シンガポール情報

世帯年収900万円,出産祝い170万円,保育所に楽々入所のシンガポールは、日本より出生率が低い

うにうに @ シンガポールウォッチャーです。
ツイートがバズりました。リツイートが数千いくと、通知が鳴り止まず、携帯が熱くなり電池がどんどん減るのは本当ですw
桜田前五輪相の「子ども最低3人産んで」というニュースから始まった話題です。
日本は政府が少子化に無策であり、国民に責任を押し付けているとの怨嗟がSNSを駆け巡ります。いつもと同じネットの風物詩です。

そんな中で、


このツイを投稿すると、建設的な指摘、感想、クソリプが次々と寄せられました。「言われたらそうかも」や、「だから、支援が十分でない日本には子育て支援が必要なんだ」というトートロジー。「都市国家と比べるな」という無効化(「その指摘はあたらない」)の反応もありました。しかしながら、日本の育児環境で強い要望(収入・補助金・保育所・育児家事アウトソース・学費・子育てへの理解)をクリアしている国で、この惨状です。

シンガポール人の言い分

日本からすると恵まれている環境への、シンガポール人の言い分です。


これ以外では、

  • 人生最大の試験が小学校卒業試験 (PSLE)。12歳と人生の早い段階で来るため、親も積極的に協力する。準備のために退職する親もいるプレッシャーの中で、子どもを2人も持てない
  • 公教育は安価でも、塾通いの負担が大きい

などです。

なぜ出生率は低下したのか

日本での出生率低下の原因として、ネット界隈でよく持ち出されるのはこのあたり。

  • 金が無い。日本は貧乏になった。
  • 金が無いから働かないといけないのに、保育園に空きがなく入れない。日本死ね。
  • 育児に疲弊しても、旦那は帰ってこない、帰ってこれない、手伝わない、手伝えない。
  • 世間は育児に冷淡。ベビーカーで外出すると、舌打ちされる、けられる。

日本でよく持ち出される課題を、かなり解決しているのがシンガポールです。

日本 シンガポール
世帯所得中央値 年427万円 年約900万円
保育所 激戦、保活 (新興住宅地以外は)すんなり入れる
育児の担い手 母親、(お手伝いで)父親 母親、まぁまぁ父親、メイド、祖父母
世間の風当たり 冷淡 子ども好き、妊婦はかなりの確率で電車で席を譲られる

シンガポールに駐在となった家庭で、子育てをしている日本人の母親は、育児への理解でシンガポールが圧倒的と口をそろえます。最近、ツイッターでバズった動画です。オジサンが電車(MRT)で子どもにトムアンドジェリーの動画を見せていて、キュートです。


ポイントは、通りすがりで、異民族間であっても、子どもには寛容ということです。バズるぐらいなので、そこまで他人の子どもをあやすことは普通はないのですが、妊婦に席を譲る、ベビーカーを運ぶのを手伝うのはよく見かけます。日本での過酷な仕打ちをうけた母親には、天国です。

日本で所得が最も低い沖縄が、出生率が最も高い

日本で最も出生率が高い県は、沖縄です (2016年)。最も低いのは東京です。合計特殊出生率は、沖縄が1.95もありますが、東京は1.24しかなく、全国では1.44です。

その沖縄は、一人あたり県民所得は全国最低で216.6万円。一方、東京は全国最高で537.8万円。全国平均は319万円です。(2016年)
ネット世論の「カネがないから子どもを産めない」とは真逆の結果です。

日本 東京 沖縄
一人あたり県民所得 319万円 537.8万円 216.6万円
合計特殊出生率 1.44 1.24 1.95

※注: 県民所得は県民雇用者報酬に加えて、財産所得と企業所得も含まれます。そのため、体感より高い数値となります。

「子育ては趣味」

上記したネット要望以外での、出生率低下の原因です。

  • 「子育ては趣味」への価値観の変化
  • 晩婚化: 女性の社会進出。女性が生殖に最も適した年齢で学校や職場を離れられない。
  • 未婚化: お見合い結婚の崩壊

私がツイった「子育ては趣味」に反響があったのは、意外でした。まだ共通認識でないことが、わかったからです。


当事者である親は、経済状況や子育て環境を、少子化の理由にしますが、本当にこれが理由でしょうか。顧客に「求めているもの」を聞くと、自分が欲しいものが何か分かっていなかったり、言語化できなかったり、利益誘導からポジショントークをすることはよくあります。
現代社会は、子どもは家計の担い手ではなくなりました。一昔前では、子育てをする主戦力は子どもであり、家の手伝いなどから始まる"児童労働"は一般的でした。現在の倫理観では受け入れられませんが、当時の子どもはそうやって、家庭内に居場所を築いていました。また、成人した後も、跡取り以外は、仕送りがあてにされ、他家から結納の形で"補償"が行われました。親が子どもを産むことは、経済的な利益でもあった時代です。

現代では、子どもはコストです。成人するまでに、長期の教育を受けて、大学卒なら22年。児童労働はありえません。また、「子どもとはいえ他人」であり、「老後の支援を期待すべきでない」、「まずは自分の年金・資産を貯めるべきだ」、との価値観がゆるやかに広まっています。
子育ての趣味化です。

趣味であるなら、子どもを持つか持たないかも本人が選択可能となります。かつては、ペットは番犬など家に機能を提供するか、子供が幼少時に引き受けて子供と一緒に大きくなる、子育てを補完する役割でした。今では、子育ての強力なコンペティターであり代替に、ペットがなっています。「子どももできなかったし、ペットを飼うか」から、「ペットがいるから、子どもはいいや」への転換です。
「趣味や楽しいことがあって忙しいから、子どもはいらない」というのは今ではすんなり理解されますが、ちょっと前までは理解されなかった価値観です。

シンガポールの人口政策は苦戦続き

経済政策などではシンガポールはよく引き合いにだされますが、人口政策ではシンガポールは苦戦続きです。リーダーシップが強力なシンガポールでこれだけ苦労しているということは、経済より人口のほうが、はるかに政府が影響を与えることは困難なのでしょう。

出生抑制政策

1965年にシンガポールがマレーシアから独立した直後は、第二次世界大戦後のベビーブームをうけ、経済回復以上に人口が増え、国民を食わせるには十分な仕事がない高失業率の時代です。出生抑制が政策でした。中国の一人っ子政策など、発展途上国で出生抑制政策はよくあります。1966年に"家族計画"教育を提供する家族計画人口局 (FPPB: Family Planning and Population Board) が作られます。1970年には「子どもは二人まで」(Stop at Two]) のキャンペーンが開始。

この出生抑制キャンペーン、成功しました。成功しすぎました。人口政策なのにわずか7年後の1977年には、人工維持が可能な水準を下回ります。当時のリー・クアンユー首相は、結婚と子どもが高学歴女性は少ないことから、各種優遇を実施 (大卒女性スキーム)。子どもの学校への入学優先や、所得税減税です。その一方、そうでない夫婦が低収入だと、第二子を持った後に避妊手術を受けると1万ドルを出すなどします。これは世論の猛反発を受けました。優生学に近い考えであり、現在のシンガポールでは実施どころか議論すら不可能でしょう。

出生奨励政策

1986年になり、やっと政府は「子どもは二人まで」(Stop at Two)を止め、出産を勧めるようになります。
出生率は上がらないままであり、2001年にベビーボーナスが導入されます。2004年の育児パッケージでは、働く母親への所得税減税の要件から学歴を抜き子どもの数にし、また出産休暇を長め、育児休暇を新設するなど、強化しています。

回復しない出生率

これ以外にも、大なり小なり様々なテコ入れをした結果、どうなったのかというと、、、回復の兆しは長期的にはありません。
例年より回復している年がありますが、これは中華系に縁起がよい辰年です。政府政策より、しきたりの方が影響が強いのです。
子育て支援への政府政策について、シンガポール政府の自己評価としては「やらなければ、今より更に悪化していた」というものです。
f:id:uniunikun:20190601170013p:plain

少子化を移民で解決するシンガポール

日本より低い出生率となっているシンガポールですが、解決策があります。移民です。シンガポールは現在でも、人口の1/3が移民です。人口の1割を永住者が占め、彼らが新国民への母体となります。
シンガポールはもともと移民国家です。ラッフルズがシンガポール島に上陸した時には、現地民はわずかに数百人でした。そこから交通の要所として発達しますが、労働力は当然移民です。シンガポール人は、移民には他国より寛容ですが、さすがに移民を入れすぎて、2011年総選挙では与党PAPが大きく議席を減らします。これを受けて、与党PAPは大きく方向転換。マイルドな移民の受け入れとなり、2015年の総選挙では地滑り的大勝利を収めました。
「現在の合計特殊出生率1.2のままでは、2060年には国民人口は2/3に減少する。これを食い止め国民人口を安定させるには、毎年2万人の移民による新国民が必要」というのが、政府の説明です。シンガポール政府は、激しい批判を受け、労働ビザ発給を厳格化し、永住権保持者の受入数は最盛期の年8万人から3万人に絞りました。しかし、新国民の数はこの長期的視野に基づき年2万人の受け入れを着々と実行させています。
uniunichan.hatenablog.com
国民はこれ以上の移民が嫌でも、「お前たちが産まないから、移民を入れるんだ」という政府のロジックと戦わなければなりません。シンガポールでは「経済発展は要らないから、移民も要らない」という考えが広範な支持を得るには、国民は踏ん切りがついていません。

子育て支援と少子化対策は別物だった?

「子どもを産む環境が整備され、経済的・肉体的・精神的な負担が減ると、子どもは増えるはず」、というのが従来の考えです。これまでは、保育所の充実や子育てへの支援を語られる時に「それが少子化対策であり、国益だから」という前提で話をされることが一般的でした。「子育ては親のエゴなだけでなく、お国のためなんだから、カネを出すのは国の義務だ」という話です。
しかしながら、所得が高く支援が充実しているシンガポールの方が少子化が進んでおり、沖縄や発展途上国の方が他産なことを考えると、経済支援や保育所の充実では少子化対策にならないのではないか、という仮説が生まれます。

「子育て支援と少子化対策は別物」というのはあくまで仮説です。複合要因がからみあっていて、それらへの対策と子育て支援が組み合わさると、改善に向かう可能性もあります。また、子どもを0人を1人、1人を2人以上にするのは別のアプローチが必要なのは、容易に思いつきます。「お金があれば、子育てが楽なら、子どもはもう一人欲しかったのに」という家庭には従来の支援がミートする可能性はあるでしょう。ですが、1人を2人以上にするアプローチでも、従来型の政策は、費用対効果が悪い可能性があります。「それをやったところで、本当に産んだ家庭はどれだけあるんだ?」ということです。「子どもはいらない」「結婚もしていないのに」という人に、保育所の定員増は心を動かさないでしょう。

国と国民の利害が一致しない

それでも子育て支援を堂々と主張しよう

子育て支援が、国益である少子化対策に直結しない、という可能性が出てきました。

ロジックとして成り立つのは2つです。

  • 少子化対策には子育て支援とは別に、見落とされてきた要素がある
  • 従来の子育て支援をしていなければ更に悪化していた。逆に言うと、子育て支援に更に突っ込むと、改善に向かい出すはずだ。

しかし、たとえ子育て支援が少子化対策になろうがなるまいが、利害関係者は今後も堂々と「子育て支援の充実」を訴えるべきです。少子化対策では費用対効果の疑問が残りますが、子育て支援が国としての未来への投資であることには変わりはありません。
日本の経済的凋落で、共稼ぎ家庭は増加します。核家族化の進行も避けられません。専業主婦や大家族の時代に戻すことはできないのだから、関係者だけでは対応ができない子育て支援を行政はすべきです。これは国民が国に期待する役割で、税金はそのために使われると信じています。ライフステージで当事者のキャパシティを超えるイベントに対して、支援を行う国で日本はあって欲しいと願います。

補足

残念ですが、はてブのシンガポールのコメントは、ファクトチェックを通らないものが多すぎです。

物価: 「シンガポールは世帯年収900万円では全然足りない」という嘘

外国人向けの「お高い」商品・サービスと、国民向けのリーズナブルなものとをごっちゃにしています。外国人と国民は、同じ職場で働きながらも、異なる世界に暮らしているのです
「暮らしていけない」と主張するシンガポール人もいますが、実際は中間層の生活は成り立ちます。
都市で最もお金がかかるのは住居です。駐在員の家族向けコンドミニアムが月50万円するのは一般的です。これより安価な所もありますが、高価な所もあります。
シンガポールで不動産は、国民・永住者のためのHDBという公団と、外国人や富裕層が中心のコンド・土地付き住居に分かれています。HDBには、国民・永住者の8割が住みます。HDBであれば、郊外に3LDK (5ルーム) で、3千万円で購入できます。
所得が日本の倍あって、不動産が日本並みの価格なので、生活の収支が合うのは自明でしょう。
例: ウッドランドでの4LDK (110平方メートル)が2,700万円 (S$336,000) ※直近の2019年5月売出し。所得等により更に政府補助が付く

食事も、和食の特に寿司・刺し身といった生鮮食品だと、日本価格比で3倍近くしますが、ローカル食は違います。ホーカーセンターというフードコートで、1食350円程度で食べられます。もちろん、値段は都心ならこれより高く、郊外ならこれより多少安いこともあります。シンガポールには世界一安いミシュランの星の店があり、一食150円と話題にもなっています。

はてブに「スクールバスで一人6万円」というコメントがありましたが、これも嘘です。スクールバスの平均は月に1万円 (S$126) という統計があります。
インター校の基準でいっても、バスに一人6万円というのは、高すぎで、月ではなく学期の可能性が高いです。例えば、アメリカンスクール(SAS)では学期単位で8万円~16万円 (S$956-1,875) です。

子沢山文化のイスラム教

イスラム教徒は出生率が高いことが知られています。シンガポールは国が認めた主要民族が3つあり、中華系、マレー系、インド系です。イスラム教徒が占めるマレー系は、最も合計特殊出生率が高いです。
ですが、マレー系も含め、全民族で出世率は低下傾向です。そのマレー系でも、人口維持率の2.1を切っています。主要民族の中で一番踏ん張っているのはマレー系ということです。
なお、マレー系は主要民族中で最も所得が少ない民族であることも指摘しておきます。また、最も所得が多いのは中華系ではありません、インド系です。
f:id:uniunikun:20190601173220p:plain

出所

シンガポールの世帯収入:

2018年の世帯所得は月9,293Sドル(約74万3千円)。これに12ヶ月をかけると、892万円です。この世帯収入は国民と永住者が対象。
単純労働者・駐在員・富裕層などの外国人も含めた数値だと、一人あたりGDPがあります。日本 $36,230、東京都 $57,572、シンガポール $56,284です。
uniunichan.hatenablog.com

シンガポールのベビーボーナス:

誕生から18ヶ月になるまで第一子にはS$16,000(約128万円)の現金、政府が用意した子どもの口座にはS$6,000(48万円)がもらえます。合計で176万円です。
第三子では更に増え、第五子より多いと現金がS$20,000(約160万円)、口座にS$18,000(約144万円)と、合計で約300万円がもらえます。

シンガポールでの学費一覧

金持ち校での寄付金などはこれとは別です。

シンガポール居住者が見た"ティラミスヒーロー商標騒動"

おもしろブランド

うにうに @ シンガポールウォッチャーです。
日本には、「面白い恋人」(「白い恋人」を販売する石屋製菓と和解)や、「フランク三浦」(フランク・ミューラーとの訴訟に勝訴)というおもしろブランドがあります。
シンガポールにも、ウンチクを語れるブランドがあります。最も有名なのは、破竹のグローバル展開を続けている、"1837"というロゴで有名な紅茶ブランドのTWGでしょう。TWGはトワイニングとは関係ありませんし、1837は創業年でもありません。
uniunichan.hatenablog.com

"ティラミスヒーロー商標騒動"

ティラミスヒーロー

TWGほどの大物ではありませんが、シンガポール発で日本に展開していた"ティラミスヒーロー"が、脚光を浴びる日がやってきました。
ティラミスヒーローは、シンガポールでは常設カフェでティラミスを販売しています。2012年にシンガポールで始まり、2013年に日本に進出、2014年に百貨店などでのスポット販売を開始しています。
シンガポールでの法人登記を取り寄せて確認しました。2012年にはパートナーシップで THE TIRAIMSU HERO 社が作られていますが、2015年に解散。2013年に非公開有限責任会社で HERO Holdings PTE. LTD. 社が作られており、これが現在の運営会社になっています。シンガポール人のみが役員をつとめ、シンガポール人のみが株式を持つ、シンガポール企業です。

ところが、ティラミスヒーローは、『オリジナルのブランドロゴがコピーされたため』に「ティラミススター」と商標を変えることを2018年末に発表しました。


HERO'S

2019年1月20日に、高田雄史氏が経営にたずさわるティラミスブランド「HERO'S」がオープン。その商品コンセプトやキャラクターが、ティラミスヒーローに酷似しているとネットで指摘を受ける騒ぎになっています。高田雄史氏はふわふわパンケーキ店「gram」の経営者でもあります。

この「HERO'S」が三浦翔平氏やインスタグラマーを使って、華やかな初出店記念イベントを行ったことで、かえってティラミスヒーローが注目を浴びました。

商標登録

ティラミスヒーローが商標登録をしていなかったため、後発の「HERO'S」が登録できたためでは、と指摘を受けています。



フランチャイズの募集広告で「HERO'S」は、商品名に「ティラミスヒーロー」との記述を用いています。

HERO'Sがプロデュースするティラミスヒーローの客単価は最低2800円。

知られていなかったことで、逆に在シンガポール日本人の知名度を得たティラミスヒーロー

そんなティラミスヒーローが2014年に日本の百貨店で販売を開始した際には、シンガポール在住の一部日本人に注目されました。

日本では現在、オンラインショップでのみ販売されているが、注文が殺到しているため3か月待ちなのだそう。今回の出店は、人気商品が手軽に買える貴重な機会となっている。

注目されたのは、

  • 『シンガポールの有名店』
  • オンラインショップでは、注文が殺到し3か月待ち。それが期間限定ショップでは即買いできる。

というモリモリな記事が理由です。期間限定店舗の出店のたびに、ティラミスヒーローの記事が、特定のウェブメディアで繰り返しでましたが、広告記事の表記はありません。
シンガポールの有名店なのに、現地在住日本人もシンガポール人も知っている人は (少なくとも当時私の周囲には) おらず、「ネット通販だと3ヶ月待ちってなに?」ということです。
あたかも「ニューヨークの有名店」のキャッチコピーのように、シンガポールが引き合いに出されていることに当時は感慨を覚えたものです。7年の営業を経て、認知度は上がってきていますが、現時点で店舗は1つのみです。「カフェ好きだと知っている人もいる」「(日本でのプロモーションのため) 地元民より日本人に知られている」程度の認知度と認識しています。シンガポール関係者で、「ティラミスヒーローがシンガポールで有名」という人に私は会ったことがありませんが、「(日本のプロモーションの経緯で知ってはいるが) シンガポールで有名でない」という人は少なからずいます。リンクを提示します。 (1), (2), (3), (4), (5)
そして、ネット通販で3ヶ月待ちだったのが4ヶ月にまでのび、いったい一日にいくつ出荷しているのかと記事中を探しましたが、見つけることはできませんでした。ネットで待っているお客様を後回しにして、期間限定店舗を優先して商品をおろし続ける理由も不明です。


君はシンガポールのティラミスヒーロー本店に行ったことがあるか
ぬこはかわいい、味はふつう

ティラミスヒーローは「在住者が知らない有名店」として逆に知名度をえて、訪問者があらわれる事態にまでなります。私もその一人でした。
私が訪れたときには、シンガポールの店には並ぶことなく入れ、キャラクターの猫のアントニオは可愛く、ティラミスの味は私には普通でした。

※ツイッターのタイムスタンプのように訪問は2014年

5年にわたってティラミスヒーローの日本でのマーケティングをウォッチしてきた身としては、同情する部分もありますし、商標とマーケティングは別件ですが、これまで御社もおもしろマーケティングをしてましたからねぇ、というのが感想です。「HERO'S」の商標取得も、ティラミスヒーローのマーケティングも、制度や法的には問題ないのでしょうが、倫理的な問題や誠実さの面ではどうでしょうか。制度をついた商標取得も、誇張した広告も、不誠実であり両者改めて欲しいと願います

追記 (2019年5月2日)

その後、被害者とみなされていたティラミスヒーローですが、そのキャラクターはGemma Correll (ジェマ・コレル)氏の模倣と指摘されました。ティラミスヒーローもインスパイアだったことを認めています。
nlab.itmedia.co.jp
日本からの取材(ねとらぼ)に対し、ティラミスヒーローは謝罪を申し出ると発言していますが、その後のシンガポールの取材(Mothership)には「類似しているイラストは2015年以降使われておらず、今後も利用しない」としながらも、賠償はしないと発言。「現在のロゴは当時のと異なる」「剽窃したと感じていない」「インスピレーションを受けたソースを明示しなかった初心者のミスに謝罪する。マスコットは我々が作ったオリジナルだ」と主張しています。

2019年6月には、HERO'Sの親会社グラムがお膝元シンガポールのビボシティに出店することがアナウンスされました。地元紙Straits Timesが出店を記事にています。記事では、すでにふわふわパンケーキには当地には競合他社がいることを指摘していますが、HERO'S騒動については言及はありませんでした。


筆者への連絡方法、正誤・訂正依頼など本ブログのポリシー

にほんブログ村 シンガポール情報