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今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

シンガポールで"生きづらい"人がどうやって生きるかを「シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす」を読んで垣間見る (フー・スウィ・チン著)

漫画の書評です。日本への強い関心と、漫画への愛を感じる、シンガポール人漫画家の作品です。
私は漫画には全くうとく、これまで買った漫画は「ねじ式」(つげ義春著)ぐらいです。今回買ったのも「シンガポール人漫画家がシンガポールについても書いてる著作だから」というシンガポールウォッチャー視点が理由ですが、「う~ん」という読後感がありました。「生きづらい人はどうやって社会で生きていくのか」ということです。

シンガポール在住者にもKindle版があるので、手軽に購入できます。Kindleは1,000円、単行本は1,080円です。

シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす<シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす> (コミックエッセイ)

シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす<シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす> (コミックエッセイ)

※紹介のためにリンクを貼っていますが、本ブログではアフィリエイトはしておらず、無収入です。


フー・スウィ・チン氏のこれまでの作品

今回の記事を書くにあたって、下記を読みました。「購入する前にどんなのか知りたい」という人は、ダ・ヴィンチニュースに話が幾つか転載されていますので、こちらをどうぞ。

他にも英語の漫画やイラストも下記からリンクを辿っていけます。

フー・スウィ・チン氏の略歴

作者のフー・スウィ・チン氏は、シンガポール人。
Twitter: FooSweeChinフー・スウィ・チン
フー・スウィ・チン氏の写真はこちらで拝見できます。

1977年 シンガポール生まれ、シンガポールで育つ
1982年 5歳。親戚の家でいとこがもっていた日本の漫画に出会う
1994年 17歳。デザイン学校の上映会でAKIRAに感動する
2000年 23歳。初めての日本。北海道に日本学校の文化交流でホームスティ
2002年 25歳。米国でコミック連載
2004年 27歳。初めての東京訪問。初めてのコミケ
2016年 39歳。日本で初めての単行本「シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす」が刊行

日本訪問歴は10回以上。
参照: シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす: Page 64, 68, 79, 141
※以下 (P.X) の表記は『シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす』のページより)

「シンガポールのオタク漫画家、日本をめざす」

作品概要

作品は全4章。146ページ。漫画なので1時間で読みきれます。
第1章は、外国人からみた日本の不思議文化で、第3章はシンガポール人のシンガポール紹介。内容は「あぁ、あるある」という切り口。
効いてくるのが、残りの章。第2章で漫画への愛が描かれ、第4章で漫画の仕事を日本で得るために持ち込みをするが挫折。2年間病んだ後に、漫画を再び書けるようになるまでが、描かれています。
『描いた漫画はシュールな暗い話ばかりでした 軽い話のほうがいいとよく言われた』(P.115)と書いていますが、本作では徹底して可愛い絵柄で描かれていて、とっつきやすいです。

現代社会で生きづらい人

現代社会では、人は経済的に「食べていく」ために、極々限られた能力に特化しています。

  • コミュニケーション (組織行動が前提のため)
  • 論理的思考 (必要な行動を自分が理解し、他人に理解させるため)
  • 時間や約束を守る (時に意図的に破る)

などなど。農業、漁業、狩猟で必要だった、筋肉の価値は圧倒的に落ちました。毎年同じタイミングで種まきや漁にでるような粘り強い反復作業は、イノベーションの逆として、成長がない行為とまでみなされています。

フー・スウィ・チン氏は、色々と生きづらいのだろうことは、以下から推測できます。

  • 猫を5匹飼っている (P.116)
  • シンガポールでは引きこもっている。自称、座敷わらし (P.3)
  • 人と目を合わせるのが苦手 (P.9)
  • 異性と会話すると固まる (P.33)
  • 知らない人に挨拶したことを失敗として、クヨクヨする (P.35)
  • 自分の行動が人に見られると気にする (P.46, 47)
  • 学校でいじめられることはなかったけど 一人の友達もいなかった (P.53)
  • 周囲に恐怖をおぼえ、評価を気にしすぎる (P.62)
  • 握手をする時に、力の入れ方、手の振り方、手を離すタイミングを思い悩む (P.92)
  • お金を払う時に困るほど数学が苦手 (P.64)

また、霊感が強いだけでなく、フー・スウィ・チン氏が好んで描く暗いキャラクターデザイン (P.115) を見ると「フーさん!明るい所に帰ってきて!」と私は余計な声をかけたくなります。ですが、その暗いキャラクターもフー・スウィ・チン氏の一部であって、うまく感情の折り合いをつけて今後も暮らしていって頂ければ、と勝手に願っています。
その一方で、講演緊張しすぎて意識がなくなると、講演では人と目をあわせなくてもよいのでうまく話せるとのことなので、経験での場数を踏めば、全然大丈夫になれそうにも思えます。

インプットとアウトプット

フー・スウィ・チン氏は、大好きな漫画に、幼少期から時間と努力を費やしてきました。
漫画を読む人(インプット)は多いですが、書く人は少ないです(アウトプット)。そこから更に、趣味ではなくプロとして収益を得られる人はもっと更に少なくなり、専業で食っていける人は本当に一握りです。

生きづらい人がどうやって生きていくか

多くの人はどんなに好きで努力をしても、スポーツ・音楽・アニメ・ゲーム・小説などなどの趣味でプロになることは困難です。その中で、フー・スウィ・チン氏はニートを自称(P.69)していますが、漫画が好きだなけでなく努力で、プロの世界にたどり着きました。

OECDのニート調査

ニートの調査をOECDがしています。OECDでは15~29歳で、就学も就職もしていない人をニートと定義しています。つまり、フー氏はパートタイムや漫画で収入がありますし、また年齢からも、OECD定義でのニートの対象外です。ニートは、OCED平均が14.6%、日本は9.5%です。
OECDの中では、日本はニートが少ない国です。該当年代の10人に1人がニートは実感より多い気がしますが、女性の家事手伝いや専業主婦も含まれるからです。日本ではニートというと内向的な趣味の男性のイメージが強いのですが、日本の女性のニート率は、男性より70%多いとOECDは指摘しています。
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日本でも、昔から職人の世界は、口数が少ない仕事として知られています。「リア充」や「社交的」でなければ、食っていくことがどんどん難しくなる一方で、フー氏のようにインターネットのテキストでの意思疎通を通して友達をつくり、徐々に仕事をすることも可能になっています。(P.68)

想像したものだけでも現実化させたい
この世界に居場所を作ってあげたい (P.60)

フー氏にとって漫画を描くことは、漫画キャラクターの居場所だけでなく、自身の居場所も作る行為だったのだろうなと思いました。


というわけで、こんなに裏読みばかりしなくても、シンガポール人やシンガポールの漫画としても面白いので、是非ご購入を。

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