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今日もシンガポールまみれ

日本のあっち、シンガポールのこっち

不動産リスク:ジョホールバル イスカンダル計画はシンガポール隣で花咲くか

シンガポール時事 マレーシア

シンガポールから国境を超え橋を渡ると隣国マレーシアのジョホール州に着きます。この地の不動産が今熱い!ということで、シンガポールで賛否両論で議論がされているばかりでなく、日本でも知れ渡るようになりました。マレーシアという国にあるジョホール州の中で、イスカンダルという地域です。
良い話は不動産業者から聞くと思いますので、今日はジョホール州での住宅用不動産投資へのリスクを検討してみます。(本記事最終更新2016年7月)

2013年当時に、ジョホール不動産投資のリスク提示を行ったのが本記事です。大半は現在でも適応可能です。2016年末時点でのアップデートとして下記の記事が参考になります。
Money Voice: マレーシア第2の都市・ジョホールバルが「廃墟化」するこれだけの理由=午堂登紀雄

なぜイスカンダル不動産投資が過熱しているのか?

現状の事実関係まとめです。

  • 【イスカンダル投資額】2013年7月までの間の累積投資額が、RM1189.3億に達した。そのうち住宅用不動産は27%を占める。

2012年までの外資の投資はRM388億。投資額一位はシンガポールでRM66億の16%、三位が日本でRM37億で9%。
f:id:uniunikun:20130913163508p:plain
IRDA (Iskandar Regional Development Authority): IM BizWatch Issue 7/2013

  • 【プロジェクト進捗】完成/運営開始した施設が増えてきており、マレーシア政府はこれまでに幾つも計画倒れのプロジェクト(例:プトラジャヤのモノレール)があったが、実現に信ぴょう性が生まれてきた: ジョホールプレミアム・アウトレット、EduCity (マルボロカレッジ、ラッフルズアメリカンスクール) 、レゴランド、ハローキティタウン、パインウッド・スタジオ、ジョホール州アドミンセンター、等など。 [2]
  • 【シンガポールからの不動産投資の流入】シンガポール政府は上昇する不動産価格の沈静化に躍起。中でも2013年1月からシンガポール国民も2件目以降の不動産所有に7%印紙税がかかるようになった。シンガポール不動産の代替として、またシンガポールより安価に買えるため、イスカンダルに不動産投資資金が流れ込んでいる。

AsiaX: 対シンガポールドル安、マレーシア経済の下支えの一つに

  • 【シンガポール政府の関わり】シンガポール政府の持株投資会社テマセク・ホールディングスの事業参画が決まり、シンガポール政府の信任がついたとみなされた。それにより、シンガポールの有力企業であるUOB Kay Hian、ビリオネアのPeter Lim、CapitaLandも参画。
  • 【マレーシア有名デベロッパーの参入】マレーシアのクアラルンプールを拠点にしている有名デベロッパーの大半もイスカンダルに参入: UEM Land, S P Setia, Gamuda Landなど。[2]
  • 【対象面積】イスカンダル計画の該当地域はシンガポール国土面積の3倍の大きさ。
  • 【通勤鉄道】2018年に開業予定の通勤鉄道計画がある。

AsiaX: マレー・シンガポールの通勤鉄道開業へ 18年、両国首相が合意

  • 【高速鉄道】2020年完成を目標としたクアラルンプール/ジョホール/シンガポールをつなぐ高速鉄道計画がある。これにより90分でKL/SG間がつながれる。イスカンダルに入国管理局が設置される。

AsiaX: 高速鉄道、シンガポールと クアラルンプール間に建設
ロイター: シンガポールとマレーシア、両国結ぶ高速鉄道整備で合意
シンガポール政府外務省: Joint Statement By Prime Minister Lee Hsien Loong and Prime Minister Dato'Sri Mohd Najib Tun Abdul Razak at the Singapore-Malaysia Leaders' Retreat in Singapore on 19 February 2013

  • - 【住宅平均価格】マレーシアでの住宅の市場価格の平均は24万2,000リンギ

マレーシアNavi: 住宅の値頃感、最も購入しやすいのはマラッカ 年収の3.0倍=カザナ調査

  • 【住宅用不動産供給数】2012年第三四半期までの累積で、イスカンダルに40万ユニットが供給。そのうち、30万ユニットが土地付き不動産、9万ユニットが高層不動産。[2]
  • 【住宅用不動産相場】2012年、二階建てテラスハウスは1psf (スクエアフィートあたり) がRM260からRM320、一戸あたりでRM50万からRM62万(1500万円から1850万円)。しかし、イスカンダル郊外で品質が落ちるものは、psfがRM200以下であった。この差分は、建物が新しいかと品質の差で説明できる。[2]
  • 【月収】マレーシア各州での平均世帯月収
平均世帯月収 リンギット(円)
マレーシア全土 RM5,000 (15.0万円)
クアラルンプール RM8,586 (25.8万円)
ペナン州 RM5,055 (15.2万円)
ジョホール州 RM4,658 (14.0万円)

マレーシア政府統計局: Findings of the household income survey (HIS) 2012

  • 【ブミプトラ政策】ブミプトラ政策により、マレー人他は不動産を7%引きで購入できる。ブミプトラ政策の優遇対象はマレー人及び土着少数民族であり、中華系やインド系であれば優遇されない。

Wikipedia: Bumiputera (Malaysia)

  • 【キャピタルゲイン課税RPGT】2014年1月1日以降、不動産売却時の利益にかかる不動産譲渡益税(RPGT: Real Property Gain Tax)が、所有期間に応じて値上げされます。RPGTはキャピタルゲイン課税です。特に外国人枠が設定され30%と高率であることから、不動産価格沈静化が予測され、マレーシア国民は歓迎しています。
現在 2014年以降:マレーシア国民
2年以内 15% 3年以内 30%
2年超5年以内 10% 3年超4年以内 20%
6年目以降 免税 4年超5年以内 15%
6年目以降 免税
2014年以降:外国人 2014年以降:企業
5年以内 30% 3年以内 30%
6年目以降 5% 3年超4年以内 20%
4年超5年以内 15%
6年目以降 5%

JETRO: マレーシア: 税制
AsiaX: ペナン州、外国人の住宅購入の最低価格を引き上げ
AsisOne: Foreigners can buy Malaysian properties worth RM1 million or more, double from now

  • 【外国人購入最低額】2014年1月1日以降は、外国人不動産購入最低額は100万RM以上に値上げされる。

AsiaX: 不動産利得税増税、投機抑制に有効と歓迎の声
マレーシア財務省によると、ジョホール州でRM100万を超える不動産は全体のわずか1.5%のみ。
RM100万超えるように、今後販売の物件は住居のサイズ変更が検討されている。
Today: Iskandar’s property investment appeal ‘likely to decline’
これまでは、外国人が購入できる不動産は50万RM(1500万円)以上(ペナン島では200万RM以上)だった。[3]ロングスティビザMM2H所持者は25万RM以上から。
Malaysia My Second Home Programme: 特典: 住宅の購入
AsiaX: ペナン州、外国人の住宅購入の最低価格を引き上げ
AsiaX: ペナン州で外国人の不動産購入、3%の課税を検討

  • 【不動産固定資産税】ジョホール州で外国人を対象に不動産固定資産税を引き上げる計画がある。

AsiaX: ジョホール州、外国人対象に不動産税率引き上げへ 業界からは懸念の声も

  • 【シンガポール経済連携への影響】ジョホール州の公休日が、イスラム教を理由に、土日から金土に。会社の公休日変更は任意だが、公立学校や役所が金土が休みに。

AsiaX: ジョホール州の公共機関、金・土曜を休日に スルタンが宣言、来年1月より実施

  • 【日本人投資】イスカンダル ヌサジャヤで高層コンド「1Medini」購入者の40%が日本人

AsiaX: イスカンダル地域の住宅物件、日本企業が強い関心

イスカンダル不動産投資のリスク

これまでは事実関係でしたが、ここからがリスクへの考察です。

実需はどこにある?

「投資家ばかりで住み手がいない」
イスカンダルのリスクはこれに尽きます。「治安が悪いため、移動は常に車になり、コンド敷地のゲートの中でしか安心して出歩けず、仕事も無いジョホールに誰が住みたいのか?」ということです。
ジョホール州の不動産を所持する外国人は13万人です。来年にも建築中のコンドが完成ラッシュを迎えます。その時に誰が入居するのか考えてみましょう。

人口動態: 人口ボーナス期だが総数が少なすぎる

多産文化のマレー系が中心なだけあり、人口ボーナス期が長い

マクロで最も重要なのは人口動態です。人口動態を考える上で、人口ボーナス期と人口オーナス期は下記のようになります。多産のマレー系が多数派の国だけあって、マレーシアの人口ボーナス期は長いです。合計特殊出生率は2.08が自然増と自然減のしきい値です。

合計特殊出生率 人口ボーナス期 人口オーナス期
日本 1.39 1955 - 1990 1995-
中国 1.55 1980 - 2015 2020-
シンガポール 0.79 1970 - 2015 2020-
マレーシア 2.61 1970-2045 2050-

人口ボーナス期、人口オーナス期は日本銀行
合計特殊出生率はCIA The World Factbook 2013

深セン/中国モデルとの比較では圧倒的に少ないジョホール/マレーシア人口

イスカンダル計画は、マレーシア政府が言うように、香港・深セン・中国をモデルにしているので、対比しましょう。

人口 (在住日本人) 人口 (在住日本人)
シンガポール 531万人 (2.4万人) 香港 702万人 (2.1万人)
ジョホール 330万人 (892人) 深セン 1322万人 (4730人)
マレーシア 2746万人 (1.0万人) 中国 13億4133万人 (14.1万人)

出展: 国・地域人口はWikipedia。在住日本人数は2011年10月1日現在の外務省海外在留邦人数調査統計。ジョホールと深センは管轄大使館の在外登録人数。

これを比率に直しましょう。

人口 (在住日本人) 人口 (在住日本人)
シンガポール 1 (1) 香港 1 (1)
ジョホール 0.6 (0.04) 深セン 1.9 (0.2)
マレーシア 5.2 (0.4) 中国 192 (6.7)

南北に長いマレーシアの面積は、日本より15%程度小さいのみです。しかし、人口で考えると「全くもってお話にならない」ことが分かります。居住、就業の自由があるのは基本的に自国民です。イスカンダルが栄えると、マレーシア各地から人が職を求めて引っ越してきて人口集積がなされることを期待しますが、イスカンダルの母体となるマレーシアの人口が2700万人と少なすぎます。勿論、中進国であるマレーシアは一人あたり名目GDPが$1万と、中国の$6千を上回っていますが、それでは埋められない差があります。これでは安価な労働力も購買力も、移民や駐在員頼りになります。つまり、イスカンダル不動産物件を担うのに、マレーシア人への大きな期待はすべきでないのです。

日本人はわずか千人未満

では、ジョホール州在住日本人の推移を見ましょう。
外務省海外在留邦人数 マレーシア ジョホール州在住

2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
1188人 1069人 970人 944人 816人 825人 892人

日本でのイスカンダル計画への期待と異なり、むしろ日本人人口がジョホール州では減っていることが分かります。しかも変化率だけでなく、絶対数も千人前後と極めて少ないです。
ジョホールに日本人向きの仕事は少ないです。子供を一人で屋外で遊ばせておけず、車移動しかできないほど治安が悪いため、好んでジョホールに滞在する日本人は少ないです。大半が駐在、たまに不動産等の自営・フリーランス・ノマドがいますがまれです。
これでは市場として日本人には全然期待できません。この記事を読まれている方の大半も、居住目的でなく投資目的だと思います。実需がなければバブルです。なぜご自身が住みたくないのか、自分が住まないものをなぜ人が借りると思うのかの理由を、もう一度考えなおすことをお勧めします。

イスカンダル計画は本当に82万人への新規雇用を生むのか?

レゴランドやプレミアム・アウトレット等の商業施設がスタートし、マルボロカレッジのような学校施設も運営を開始しています。しかし肝心のシンガポールからの工場などのビジネス移転の動きは目につきません。理由はシンガポールから工場を移転するなら、ジョホールでなくてもインドネシアやベトナムの方が土地も労働力も安価であり、金融やビジネスプロセスであれば制度が整備されているシンガポールから離れられないためです。イスカンダル投資金額のうち不動産は27%であり、残りの投資は製造・その他の産業(小売/公共事業/運輸等)・政府と公表されています(IM BizWatch Issue 7/2013)。製造の投資43%(RM434.2億)とのことですが、政府発表以外の投資の内情は不明であり、不動産利用者となる新規雇用を生んでいるのか謎です。
IRDA(イスカンダル地域開発局)は、2025年までにイスカンダルでの目標を書いています。
IRDA: What is Iskandar Malaysia : Facts & Figures
IRDA: Vision And Objective - Iskandar Malaysia

イスカンダル計画現状と目標値

2005年 2025年ターゲット
人口 135.3万人 300万人
GDP(PPP) USD200億 USD933億
一人あたりGDP(PPP) USD14,790 USD31,100
労働人口 62.4万人 146万人
雇用 61.0万人 142.8万人
失業率 3-4% 1.8%
投資 - RM3830億
職の創出 - 81.7万
GDP成長年率 - 8%

上記はジョホール州全体ではなく、イスカンダルのみの値です。
根拠としてはレゴランドやマルボロカレッジ等があげられます。政府プロジェクト実績としては、"Five Year Progress Report"[1]のPage 34以降でイスカンダルの5地域に分けて書いています。
実績には箱物や道路やインフラ整備が並びますが、これでは真に受けるには厳しい数字です。失敗/中断プロジェクトが散見されるマレーシア特有の表現に見えます。マレーシアは国家プロジェクトで「とりあえず言ってみる」「大風呂敷を広げる」のが好きな国です。マレーシアのマハティール前首相の国家アドバイザーを18年間、マッキンゼー時代の大前研一氏が務めていたのは有名です。マッキンゼーなどから世界最高峰の頭脳を買ってきてたてる計画は立派でも、いざそれをインプリするのは国内で中華系企業との競争さえからも隔離され守られたブミ(マレー系と先住民)企業です。このギャップには相当大きなものがある認識が必要です。

シンガポールへの出稼ぎ目的低所得移民にビザはでない

入国・居住するにはビザが必要です。日本は豊かで敵対国も少なく信用力があるので、ビザ免除対象国が多いですが、発展途上国からの出稼ぎ移民には重要な問題です。
マレーシアで単純労働力を提供する出稼ぎ移民は、パキスタン・バングラデシュ・インド・インドネシア・フィリピンなどです。彼らがマレーシアを勤務地として働く場合には適切な手続きを踏めば、ビザが出ます。しかし、低所得外国人がジョホール居住し、シンガポールに通勤するビザは出ません。そういう使い方ができるビザはマレーシアにはありません。デメリットが大きくメリットが小さい、外国人低所得者のベッドタウンにしたくないでしょうから、今後もマレーシア政府が政策を変える見込みは小さいでしょう。
また、低所得者移民は外国人がマレーシアに投資する物件とは別のグレードに居住します。マレーシアでは外国人が購入できる不動産は原則50万RM(1500万円)以上です。これはマレーシアではまぁまぁの住居になり、低所得者移民が居住することはありません。

シンガポール人低所得者層が買うのはSG国内のHDB公団だ

現在ジョホールバルに住むシンガポール人はわずかに5千世帯です。
イスカンダルでシンガポールと比べて不動産が安価なことからシンガポール人の低所得者層が購入すると見られている向きがあります。しかし、このように行動する低所得者シンガポール人は少数派でしょう。
理由は、シンガポールのCPFという年金政策とHDBという公団政策にあります。
低所得者が所有できる不動産は一軒のみです。投資する余裕はありません。シンガポールでは持ち家が国策であり、国民の8割強がHDBという公団に住み、その内で持ち家率は95%です。
シンガポールでは不動産が、土地付き住宅、プライベートのコンドミニアム、公団のHDBと3種類に分けられます。この内、コンドは居住していない外国人でも購入可能なグローバルマーケットで、ベラボウな値段で取引され、ニューヨークと比べても高額です。しかし国民のみが新築で買えるHDBではそんなことはなく、グローバルマーケットからある程度隔離された値付けになります。
例えば、2013年に発表された新スキームでは、世帯月収$2,000(16万円)の家庭でも、2ベッドルーム(3 room flat)の$17万(1300万円)のHDBを購入できると政府が説明しています。購入に際し、$5.5万(400万円)の政府からの補助金が交付され、900万円で購入できるのです。900万円の支払いには、CPFから充てることが出来ます。CPFからの不動産支払いはシンガポール国内での不動産であることが条件になります。CPFには月々の給与の2割を納付しますが、雇用主が16%を納付します。ここから月々の支払いに充当すれば、感覚的に自己負担ゼロでの購入になるのです。一軒しか不動産を購入できない低所得者層が、SGでのHDBではなく、イスカンダルを選ぶ可能性は小さいでしょう。
http://www.todayonline.com/sites/default/files/styles/photo_gallery_image/public/16017959.JPG
Today: More help for less well-off to buy bigger flats
シンガポール国民のイスカンダル住居は、高齢者のリタイア地や、週末休暇地としての利用があると言われていますが、これでは不動産価格を押し上げるドライバーには弱いでしょう。イスカンダルでの賃貸市場は、来年前後から始まるコンドの完成ラッシュでどう値付けがされるか見えていません。利回りが想定困難な中での投資になります。

シンガポール人がジョホールを拒否する最大の理由は治安

多くのシンガポール人はジョホールに強烈な拒否反応を示します。極めてネガティブです。理由は治安です。
【定量データ】 統計を出しても、警察での認知件数になります。警察への信用がない所では、被害届が出されないため、認知自体がされません。そのため、統計が実際の治安からかけ離れたものになることは少なくありません。同じ問題は後述の汚職でも発生します。データの限界を踏まえた上で、日本とシンガポールとジョホールとで事件件数を比べてみましょう。

犯罪認知件数: 日本、シンガポール、ジョホール州

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日本 シンガポール ジョホール州 日本(10万人あたり) シンガポール(10万人あたり) ジョホール州(10万人あたり)
人口 1.27億 531万 330万
殺人事件 1067(2010年) 23(2000年代) 60(2010年) 0.84 0.46 1.82
強盗 4029(2010年) 397(暴力犯罪と財産犯罪) 505(銃器強盗のみ) 3.17 7.48 15.3
婦女暴行 1402(2010年) 118(2006年) 383(2010年) 1.10 2.22 11.6
犯罪件数 138万(2012年) 3.1万(2012年) 2.1万(2010年) 1087 584 636

New Straits Times: Lower crime index last year
Wikipedia: Rape statistics
Singpaore Police Force: Annual Crime Brief 2012

ジョホールに悪い所を取り上げると、ジョホールでは、殺人はシンガポールの4倍、強盗は日本の5倍、婦女暴行は日本の11倍です。
人口あたりの犯罪発生率が日本がジョホールより2倍近く悪いのは明らかに実態と乖離しています。また、犯罪率はジョホールが日本・シンガポールより少ないのに、婦女暴行・強盗・殺人事件のような凶悪事件の発生率ではジョホールが多いことからも分かります。犯罪が日常的に発生し警察に届けても解決されないジョホールでは、重大事件以外では警察に届けられない事件が多いと推測できます。
婦女暴行についても、ジョホールは日本の10倍ですが、届けるかは性犯罪への認識の違いもあるので件数からの比較は困難でしょう。殺人事件は日本の2倍強ですが、殺人事件として扱われていないものが相当数ある可能性があります。
ジョホールでの移動は車になります。そのため、運転できないお子様連れだと大変です。車で移動する理由は、広大で街との間隔が離れていて、公共交通機関が発達していないからというのもありますが、車でないと物騒だからという理由も大きいです。その車移動でも、カージャックや強盗といった手荒な犯罪も珍しくありません。

【定常データ】 ジョホール日本人会が安全情報をまとめています。最新の個別事案の傾向の参考になります。
JOHOR日本人会: 安全情報
外務省の警告や、個別の事件を取り上げても、ご自身が犯罪にあうかは別物ですが、こういう事件もあります。
在シンガポール日本国大使館: シンガポールからジョホールバルを訪れ、犯罪に遭う人が増えています。
外務省: 在留邦人向け安全の手引き 在マレーシア日本国大使館
マレーシアナビ: ジョホールで日本人男性が強盗被害、耳を切られる

確かにシンガポールの治安が世界屈指で良好なため、その対比でジョホールの治安が目立っている面はありますが、それだけではありません。私の体感治安は「シンガポール>日本>>>バンコク>>>>ジョホール>ジャカルタ」です。街歩きは避けるべきで、ある程度に安全なのはショッピングモール内とコンドのゲート敷地内というジョホールは、ジャカルタに近いインパクトがあります。良く言っても、マレーシア内で治安が最悪の州です。「住んでみたけど"他の東南アジア都市と比べて"大丈夫」と言う人はいますが、比べる対象がしきい値以下なので不適切でしょう。現状の風評では「自分は住まない」という前提の人が、イスカンダル住居購入者の大半になります。

官憲腐敗、汚職、非効率な行政組織

シンガポールが今のような経済反映を遂げた理由に、「(中華系国家なのに)汚職が少ない」ことは常に挙げられる一つです。腐敗認識指数をあげてみましょう。
CPI: 腐敗認識指数

5位 シンガポール
17位 日本
54位 マレーシア
80位 中国

シンガポールが世界で評価されており、世界中から進出があるのは、箱物ではありません。ソフトであり制度です。イスカンダルで取られているのは箱物行政政策です。しかもそれを支える行政は、腐敗と汚職が珍しくなく、非効率なマレーシア政府です。シンガポールの隣接地だからといっても、中身はシンガポールでなくマレーシアです
地域の公共インフラも貧弱です。ジョホールでは、水道水は飲めず(SGでは飲料可)、停電は散発し(SGでは停電皆無に加え電線地中化)、日本食材が豊富に買えるスーパーもありません(SGでは明治屋/伊勢丹に相当、ジャスコは日本品質を目指してますがターゲットはローカル顧客で日本人の買い物には物足りない)。

シンガポールからジョホールはわずか30分!?いえ、通勤には2時間を見て下さい

30分というのは、一番空いている時間で、シンガポールのチェックポイントからマレーシアのチェックポイントまでなら、可能でしょう。確かに私も経験したことあります。しかしそれは日常ではありません。
実家のジョホールからウッドランドを経由してマイカー通勤していますマレーシア人が職場にいます。国境渋滞を避けるために朝5時前に家を出て、だいたい6時にオフィースに着きます。通勤は1時間ちょっと。たまの渋滞で遅れると、7時ぐらいに到着で、2時間ちょっと。
更なる問題は時間調整が困難な帰路です。17時にオフィースを出て、家に着くのが早くて19時。自宅まで3時間かかる日も珍しくなく、4時間かかる時もあります。
これは時差勤務ができて初めて成り立つ生活ですが、それでもこんなに負担がかかります。
最大のボトルネックは国境チェックポイント順番待ちです。シンガポールにはたまにしか行かないのであれば、通勤時間帯を避け調整可能でしょう。しかし、シンガポールへの通勤が前提だと、毎日の苦痛は相当なものになります。この交通環境では不動産価値を損なうことは明白です。
日本人でジョホールとの国境沿いの工場地帯ウッドランドに通勤する人は少数派でしょう。通勤地で多いのはやはり都心部(CBD)です。チェックポイントから都心部(CBD)までも30分なりの時間がかかります。シティでの駐車場の確保も考える必要があります。
シンガポール政府は国境のチェックポイントにカメラを置いており、渋滞状況を確認できます。携帯アプリもあります。ご自身が実際に国境を超える機会は限定されるかもですが、カメラで見るのは何度でもできます。是非確認下さい。
One Motoring: TRAFFIC CAMERAS

イスカンダルの不動産価格はここ3年で2倍になった?

世界最大手不動産会社CBREが寄稿した参考文献[2]から引用します。
『イスカンダルの不動産価格はここ3年で2倍になったというのは誤解である。これは恐らく、新しい物件は、これまでイスカンダルで提供されていなかった、以前より良い品質の物件であるため。そのため、比較されるべきは類似物件でない。不動産会社CBREのデータでは、典型的なテラスハウスは過去3年間で50%から60%値上がりしていることを示している。これは顕著な上昇ではあるが、マレーシア国内の例えばKlang Valleyの多くの場所でも同期間に同様の価値上昇を見ることができる』

未完成物件は本当に完成し引き渡されるのか?

AsiaX: ジョホールのコンドミニアム購入したシンガポール人、業者の遅延釈明に閉口

  • 契約書に小さい文字で書かれた条件を盾に開発業者が弁明
  • シンガポール同様工事は5年の遅れが認められており、今年が当初の完成予定から5年目で、問題はないという

物件が本当に完成するか、引渡し前に業者が倒産しないか、への注意が必要です。特にこれは、コンドより、テラスハウスなどで高いリスクです。
当然ですが、完成予想時期から遅れが発生すると、それだけ賃貸にまわすのが遅れるため、不利になります。その遅延期間が5年と非常に長いのです。また賃貸でのインカムゲインより、売却差益のキャピタルゲインが目的であれば、未完成物件の売買が認められていない物件や、未完成では売却に際し足元が見られる状況にもなるでしょう。
【名義書換】名義書換でこのような問題もあります。ブミプトラ制限区画のため現地マレー人の名義を借りて家を購入した所、名義人に売却されてしまい、不動産を失った話。ローンを組んだ銀行も騙しに加担。合計$1.8万を払った5人の弁護士も役に立たず。
AsiaOne: 'My house' in JB belongs to other people

車でのシンガポールへの越境規制

ジョホールに在住し、シンガポールへの通勤を考えている人はいると思います。その場合、税金の安いマレーシアで車を購入することを希望するでしょう。シンガポールで登録されていない車では、シンガポールへの入境にシンガポール政府の規制を受けます。
シンガポール人はカローラに一千万円という値段を払っており、これは税金の塊です。国土が狭く、政府が総量規制を車にひいており、オークションで税額が変わるためです。この抜け穴が、外国登録の車両です。シンガポールには、就労ビザを持っていれば車で入境できますが、今後どうなるか、またできたとしても金額がどうなるかは要注意です。
LTE: Vehicle Entry Permit (VEP) Fees & Toll Charge
また、シンガポール人及びシンガポール永住者(PR)は、マレーシア登録ナンバープレートの車でシンガポールに入国できません。車での入国にはシンガポール登録の車が必要です。PRを取得してした日本人は、高価なシンガポール登録の車も購入するかに迫られます。
Straits Times: Rail link to Iskandar gets thumbs up from Singaporeans

通勤鉄道開設でジョホールの利便性は増すのか?

まだどうなるかは見えてきていません。両政府は検討段階です。
現在、ジョホールからの通勤者は10万人いると言われています。現状で通勤に使われているバスは国境越えのボトルネックになることが稀です。バスには渋滞もありますが、チェックポイント間で優先レーンもありますし、本数もひっきりなしです。バス利用で時間がかかるのは、バスを降りた前後での人をさばくための引き回しの通路が長いことです。通勤電車によりさばける輸送人数は増えるでしょうが、シンガポールとジョホール間の移動時間が短縮されるかは別です。不動産業者のワゴンに乗っての視察ツアーでは通過しない所です。ご自身で実際にバスに乗って越境されて確認下さい。
政府の努力としては、SGとジョホールとにそれぞれ駅を設置し、どちらか一つの駅でのみ出入国と税関が済ませられる方式が可能かを現在検討中です。
CNA: Plans for Johor-S'pore rapid transit system in final stages

教育: マルボロカレッジはベストな選択ですか?

ジョホールの魅力としてマルボロカレッジやラッフルズアメリカンというインターナショナルスクールの存在を理由に上げる人がいます。しかし、イギリスでは名門校であったとしても、こちらでは開校直後で実績はありません。反面、シンガポールには、シンガポールアメリカンスクール (SAS) やユナイテッド・ワールド・カレッジ (UWC) という長年実績を出している名門校があります。つまり、SASやUWCに入学できない際に、マルボロやラッフルズアメリカンを考慮するのはまだ分かりますが、SASやUWCを考慮せずジョホールのインター校を優先させるのは、一般的な判断ではないでしょう。これは学校の質の問題ばかりでなく、ジョホールに通学する治安の問題も含めて考慮する必要があるからです。
また、たとえ子供がジョホールの学校に通うことになったとしても、親の職場がシンガポールであれば、住居はシンガポールに持ち、子供はジョホールで学校寮に入り、週末はシンガポールの親元に戻るのが有力になるでしょう。治安と通勤の苦痛が理由で、住居をジョホールに持つ人が増加するかは分かりません。
これらのジョホールのインター校は、ジョホールに職を持つ家族と寮での通学をする家族にとっての選択肢であり、その対象に含まれる家族は多くはないでしょう。

あなたの払う価格は隣の人の価格と同じ?

コンドのデベロッパーのウェブサイトを見て気づくことがあると思います。値段が記載されていないのです。
これは販売代理店の不動産業者によって、諸費用や本体価格が違う可能性があることを暗示します。
賃貸でも、日本人がマレーシアに定年後ロングスティに来て、日本人対応の移住業者に頼って賃貸契約をすると、地元民より割高な相場を払っていた、というのは珍しくない話です。
一般的に、日本語サポートに手間をかけ、日本人の細かいことにも対応している日系業者は高く、ローカル業者が相場並を提供します。新築物件であったとしても、日系業者での相見積、日系業者と地元業者での相見積により、価格を確認されることをおすすめします。
主要土地付き住宅とコンドの相場価格表を転載します。
f:id:uniunikun:20130913163806p:plain
MPI Property Quotient Issue 4 2013

参考文献

[1] イスカンダルマレーシア政府公式サイト
IRDA: Five Year Progress Report
[2] Wealth Jul 2013, The Business Times: ISKANDAR - TAKING A LONG-TERM VIEW by Nabeel Hussain (CBRE Malaysia)
[3] 国土交通省: アジア諸国の不動産取引制度及び不動産流通システム
日本語でマレーシアでの不動産売買手続きや慣習が書いています。

※本ブログの記述は、筆者の調査・経験に基づきます。記述が正確、最新であることは保証しません。記載に起因する、いかなる結果にも筆者は責任を持ちません。記載内容への判断は自己責任でお願いいたします。
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