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明るい北朝鮮?シンガ?シンガポール大学?~シンガポール理解が薄い人が使う言葉~

シンガポールに「シンガポール大学」は存在しない ~シンガポールへの理解が薄い人が使う代表的な3つの言葉~

・シンガポールは明るい北朝鮮
・シンガポール大学
・シンガ

言葉の選択が、話題へのその人の思考レベルを表すことがあります。シンガポール在住者や関係者なのに、このワードを聞くと「この人、大丈夫か?」と私の脳内で警報がなる言葉を3つあげます。

1. シンガポールは明るい北朝鮮

これはシンガポールを表現する典型的な思考停止ワードです。
確かに、「明るい北朝鮮」の側面はシンガポールにあります。1965年の建国後、これまで一党支配ですし、強権政治をとり違反や反政府行為には厳罰でいどみます。2013年の国境なき記者団「世界報道自由ランキング」では179位中149位です。
しかし、そんなのは居住者であれば、シンガポールを語る大前提で当たり前な訳です。
「シンガポールは明るい北朝鮮だから」とドヤ顔で結論にしてそこで終わってる人は、「日本は島国、日本人は農耕民族だから」と説明して終わってるのと同じです。日本在住者や観光客が、シンガポールでの説明に「シンガポールは明るい北朝鮮だから」と言うのはしょうがないでしょう。しかし、シンガポール在住者や関係者がそれではバリューがないです。「そんなの分かってるから、だから何なの?それであなたの考えは?」を提示できてない典型です。「なぜ明るい北朝鮮なのに、シンガポールの方が日本より民意を反映できているのかや、シンガポール国会議員がシンガポール国民との対話に必死なのかについて、自分の考えで説明できますか?」ということです。

2. シンガポール大学

シンガポールに「シンガポール大学」はありません。似た響きの大学には

  • National University of Singapore (シンガポール国立大学: 通称 NUS(えぬゆぅえす))
  • Singapore Management Univerisity (シンガポール経営大学: 通称 SMU(えすえむゆぅ))

があります。
「シンガポール大学」、つまり "Singaproe University" や "University of Singapore"(*編注1) 等とどちらの大学か分からない呼称を、シンガポール人は絶対に使いません。また、NUSやSMUを日本語に訳しても「シンガポール大学」にはなりません。存在しない大学を呼んだり、混乱させる呼称を使うのは、紛らわしいばかりでなく両大学に失礼です。
シンガポール人が呼ぶ時はNUSやSMUです。NUSは米国のYale大やDuke大との共同設立で、Yale NUSというリベラルアーツカレッジや、Duke NUSという学部卒業者向け大学院医学校を運営しています。これらは「エール・シンガポール(カレッジ)」や「デューク・シンガポール(大学)」と呼ばれる事は絶対にありません。エールNUSとデュークNUSです。
NUSとSMUは、シンガポール国内で評判が高い3つある国立大学の内の2つです。日本では「シンガポール"国立"大学」という国立大学信仰からNUSの評判が高いのですが、SMUも国立大学で学部への国内評価は高く、NUSより卒業生平均初任給が高い学部もあります。
http://courseware.nus.edu.sg/e-daf/rmn/Club/Clueso2005/logo_full_colour.jpg
Photo Source: http://courseware.nus.edu.sg/e-daf/rmn/Club/Clueso2005/logo_full_colour.jpg

もうひとつの国立大学はNanyang Technological University(ナンヤン工科大学)で、字面と違って文系学部や医学部も新設された総合大学です。MITと共同で設立したSingapore University of Technology and Design (通称SUTD) も国立大学としてありますが、これは2009年開設の新設校で、評価は固まっていません。
シンガポールにある大学の評価の詳細をしりたい方はこちらを参照下さい。
【シンガポールの大学で初任給が高いトップ10】1位SMU法$5000、2位NUS法$5000、3位NUS医学$4900、4位NUS歯学$4005、5位SMU情報システム管理$3831、6位NUS建築$3800、7位NUS薬学$3525、8位SMU経済$3500、9位SMUビジネス$3500、10位NTU航空宇宙工学$3500

3. シンガ

現地人が使っていない呼称を使うのは、その土地に馴染みがないことを示します。シンガポーリアンはシンガポールを「シンガ」とは言いません。書き言葉であれば、

  • S'pore
  • SG

を使いますが、何がどうなっても "Singa" にはなりません。ロス・アンジェルスを日本人は「ロス」と言いますが、現地では "LA" と言うのと類似でしょうか。
シンガポールでは特に語の頭文字や、子音をとった、略語が多いです。先ほどのNUSもそうです。他には以下のようなものがありますが、まだまだあります。

  • LKY = Lee Kuan Yew (リークアンユー元首相)
  • MOM = Ministory of Monpower (労働省)
  • PIE = Pan Island Expressway (高速道路の一つ)

などなど。人名ですら略します。日本語でするように、語の途中で切って略すのは

  • Taka = Takashimaya (高島屋)

ぐらいしか私は知りません。Takaも日系店だからなのと関係あるかもしれませんが、由来は知りません。こういう日本風の略し方は、シンガポールでは極めてマレです。
シンガポールに住んでいて、時々唖然とするのが、シンガポーリアンがJapanやJapaneseを "Jap" と略すこと。ジャップは日本人にはよく知られている蔑称ですが、シンガポーリアンは悪意なく使います。蔑称だということも知りません。東南アジアでは悪意なくJapが使われていることが多いようですが、シンガポールでは名詞を三文字略語にすることが多いため、他国より頻繁に遭遇します。メディアですら使います。
現地民が使っていない言葉を勝手に作って、誤解を招きかねないのはお互い止めたいものです。


もし、あなたがシンガポールの様子を知るのに意見を聞いている人が、これらの3つの言葉のいずれかを使ったら、本当にシンガポールと向き合っている人なのか、調べなおしてみたほうがいいかもしれません。
意識高い病を引き起こしてもしょうがないですし、ほとんど愚痴ですが、話相手に使われた瞬間に疑ってかかる言葉なので、記事にしてみました。 _(_^_)_


(*編注1) 1962年にマラヤ大学から分離して、"University of Singapore"と名乗っていたことがあります。その後1980年に、中華教育を行なっていたNanyang Universityと合併して、現在のNUSの名称になりました。当時の卒業生に「シンガポール大学」と呼んでいるのであれば素晴らしいですが、そんなことはまずないでしょう。

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