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シンガポールで扶養家族ビザDPで合法にフリーランスをする条件 ~LOCスポンサー企業で可能の真偽~

シンガポールウォッチャーのうにうにです。2012年から書き続けている違法就労についてです。手を変え品を変え、微妙にずらした話がポコポコ湧き上がるので、そのフォロー記事になります。

日本人にとりシンガポールは外国です。外国人の入国は権利ではなく入国管理局の許可に基づきますし、入国後の外国での就労には就労許可が必要です。「外国でカネを稼ぐには現地就労許可がいる」というのは海外居住者にとり常識であるべきですが、常識になっていないない人も、聞いたことはあっても気にしない人もいるのが現状です。
日本など他国で税金を払っていたとしても、税と就労許可は別物なので、シンガポールでの就労許可が必要です。
シンガポールでは、就労ビザで働く人の家族に、扶養ビザのDP (Dependent's Pass)が提供されます。DPが出る大まかな条件は下記です。
■DP発行資格

  • EPかS Passの法的な妻、未婚でかつ21歳以下の子ども
  • EPかS Passの月額固定給与が$6,000以上
  • EPかS Passの勤務先がスポンサーになること
  • MOM: Eligibility for Dependant's Pass

上記は足切りラインです。上記を満たしていても、DPが発行されないことがあります。月額給与が最低額に近い際や、勤務先のシンガポール人雇用比率が小さい際にそうなる可能性が高まります。

シンガポールでの外国人のフリーランス・自営

そのシンガポールにおいて、日本人の扶養家族でDP保持者が、"自己実現"や"お小遣い稼ぎ"のためにあの手この手でフリーランスをしようとする試みがあります。よくあるフリーランスは下記です。

  • お教室、お稽古 (音楽、料理、工芸、スポーツなど)
  • ネイルサロン
  • 旅行ガイド、旅行企画
  • 家庭教師、幼児教育、セミナー講師
  • ライター、ブロガー

セミナー講師については、ビザなし入国者はMOMへの申請だけで可能です。しかし、DPはこの規定を利用できません。

シンガポールでの労働には、就労許可が必要です。また、シンガポールでは、報酬が発生すれば確実に労働ですが、報酬が発生しなくとも労働と認定されることがあります。報酬が発生しない労働の例はインターンシップです。報酬は現金以外にも、物品・サービス・食事・試供品・旅行・交通手段などが含まれます。
その一方、趣味・ボランティアであれば、就労では当然ないので、就労許可は不要です。
uniunichan.hatenablog.com

DPの就労許可、LOC

DP所持者は就労許可が簡単におります。DPの就労許可はLOC (Letter of Consent)と呼ばれ、就労先が申請します。
シンガポールで最も取得容易な就労許可です。最低賃金の規定がありません。外国人雇用枠にもしばられません。S PassやWork Permitで必要な雇用税もありません。申請費用が無料という小さな特典もあります。それだけの自由度を持つLOCにも条件があります。LOCには雇用主が必要だということです。つまり、自営・フリーランスにはLOCは発行されません。LOCの発行資格は下記です。

■LOC発行資格

  • EPがスポンサーになっているDPのみ ※S PassがスポンサーになっているDPではLOCは対象外
  • DPの有効期限が3ヶ月以上
  • 雇用主が必要 ※MOMは"you must have a job offer with a Singapore employer"と明記。
  • 少数の職種制限あり ※MOMの説明と具体例は「ダンスホステスのような不快な職業は不可」
  • シンガポール労働省 MOM: Eligibility for Letter of Consent

10年ほど前までは、自営・フリーランスにもLOCが発行されていた時期がありました。外国人就労への国民からの風当たりが強くなり、就労資格の運用が厳格され、最近では自営・フリーランスにはLOCは発行されません。時折、「私はLOCを取得している」と主張するDPのフリーランスがいますが、実際に真っ当な方法で取得したLOCを提示できる人に私は会ったことありません。よくあるのが下記です。

  • 本当はLOCを取得していない。 (これが大半)
  • 「自分の業務に就労許可は不要だから、就労許可を持っている」と主張している。 (謎ロジックですが、います。本当はLOCを取得していない人が追求されると、こう強弁する人がいるのです)
  • LOCを虚偽申告で取得した。 (虚偽申告をした認識が有る人と、無い人がいます)

DPであったとしても、資本金を積んで会社設立し、DPからEPに切り替えるのが自営・フリーランスへの正攻法であり、事実上唯一の道です。DPだからといって、就労許可が簡単にとれる方法は、自営・フリーランスにはありません

LOCスポンサー企業を見つければ、実質フリーランス活動が可能?!という噂の真偽

しかしながら、資本金を積む体力がない自営・フリーランス希望者は多くいます。またたとえ、EPが出たとしても、少額の資本金では有効期限は1年であることが多く、最近はその間に黒字化を達成していないと、1年後のEP更新は困難です。そのため、EP取得以外の手段で、自営・フリーランスを目指す人はいまだに後を絶ちません。

自営・フリーランスを目指す人の中で、最近広まっているのは「LOCスポンサー企業を見つければ、実質フリーランス活動が可能」というものです。スポンサー企業とは、雇用主としてLOC発行を申請してくれる名前貸し企業のことです。LOCは、S PassやWork Permitと違って外国人枠の制限外のため、そこだけを見るとスポンサー企業にデメリットはなさそうなのがミソです。
実質的に雇用関係がないならLOCの不正取得なのですが、形式上でも不正申請がこの取得方法では実は避けられません。ですので脱法ですらなく、違法です。以下に抵触するためです。
(1) LOC申請時の住所で業務をする必要がある
(2) LOC申請時の基本月給を毎月満たす必要がある
(3) フリーランス活動の会計と、スポンサー企業の会計を統合するのはまず不可能

(1) LOC申請時の住所で業務をする必要がある

LOC申請にあたって幾つかの住所を届け出る必要があります。LOC所持者の住所、雇用主の住所、そして業務を行う住所です。雇用主の住所と、業務を行う住所が異なっている場合は、MOMのチェック対象です。ここでチェックされるのは、事業がアウトソースや派遣であるかどうかです。単に、シンガポールに幾つか事業所があって、本社と工場のように住所が異なる場合には、問題ありません。契約企業先に勤務になるアウトソース(請負や業務委託)も大丈夫です。ですが、シンガポールで外国人の派遣には、就労許可が原則おりません。派遣で働けるのは、国民と永住者PRです。(ごく一部の季節要因がある業態では派遣が認められていますが例外です) 外国人を雇うなら直接雇用しろ、という意味です。
※派遣とアウトソースの違いは、指揮命令が雇用主にあるか(アウトソース)、顧客企業にあるか(派遣)です。

フリーランス希望のDPは、LOCの"スポンサー企業"と同じ事業所(住所)での業務にならないはずです。自宅、教室会場、生徒宅でしょう。スポンサー企業の住所と異なる、自分の業務場所を正直に申請すると、アウトソースであるとの確認が入り、応じられないのでLOCは却下されます。"スポンサー企業"の住所を業務場所としてMOMに申告すると、虚偽申告になります。

(2) LOC申請時の基本月給を毎月満たす必要がある

シンガポール労働省MOMにLOC申請時に行った基本月給を、満たす必要が毎月あります。
ここで仮に月$2,000を基本月給として申請したとします。毎月の給与はDPのフリーランス活動から捻出します。たとえ、その月の利益がMOM申請金額を下回っていたとしてもです。DPフリーランス活動での利益が、MOM申請金額を下回っていると、"スポンサー企業"が身銭を切ってDPに申請給与を支払う必要があります。
これは、売上不調時のみでなく、日本への長期一時帰国時といった休暇時も含みます。シンガポールで外国人(EP/S Pass/WP/LOC)が休職するには、勤務先がMOM申請基本月給を支払い続ける必要があり、休職も解決策になりません。またスポンサー企業は、全従業員に労災(Work Injury Compensation Act (WICA) )の提供も必要になります。また、月給S$2,500以下で基本月給を申請すると、雇用法Employment Actの対象になります。残業代・有給・疾病休暇の支給が必要になります。
スポンサー企業はこれらの認識も覚悟もないはずです。これを理解していれば"スポンサー"を受けないはずです。

(3) フリーランス活動の会計と、スポンサー企業の会計を統合するのはまず不可能

上記(1)での基本月給を支払う、というのは具体的にはどう支払うのでしょうか?自分の事業の売上を自分に支払う、では不正確です。自分の事業の売上を、スポンサー企業の会計に取り込んで、スポンサー企業が自分に基本月給を毎月支払う必要があります。基本月給は、毎月、絶対に支払うのが義務です。

"スポンサー企業"と真っ当な会計処理は可能か?

毎月、基本月給を払う真っ当な会計処理をするには以下の方法が考えられます。
A. スポンサー企業が基本月給を払うリスクに同意する
B. フリーランスがスポンサー企業に資本金を出資する
A.は、スポンサー企業は「(好意あるいは何らかのフィーで)名義を貸している」程度の認識しかないのに、自分が損をするリスクを負うことに同意する企業はないでしょう。この時点で破綻します。
B.は、リアリティはないのですが、理論上は不可能ではないです。例えば、基本月給$2,000で申請したので、1年間分の活動費の意味で、$24,000を資本金として出資するということです。LOCはダイレクターに規定上ダイレクターになれない(ならない)ですが、出資ですのでDPは株主になります。スポンサー企業が利益を上げれば株主配当も受けます。単に名前を貸しているだけなのに、面倒な出資手続きを行い、共同出資者になることを想定しているスポンサー企業はないでしょう。また、フリーランスとしても、それだけのまとまった資金を出せないから、真っ当な企業設立での就労ビザ取得ではなく、フリーランスを取りたいのに、満たせる人は少数でしょう。

なお、出資を回避するよくある手段は「自分・親族・知人への"コンサル費用"として入金があったことにして、そこから自分の基本月給を捻出する」(自分から自分への支払いになるので、プラスマイナスゼロで負担がなく帳簿上の数字で済む)というものですが、存在しない行為での売上水増しは典型的な不正会計なので、止めましょう。

違法フリーランスの見分け方

「違法就労には関わりたくない」「違法就労の支援をしたくない」というのはもっともな感情です。違法フリーランスの見分け方です。
1. 法人を確認する
領収書から法人名を知ります。シンガポールに登記されている法人はBizFileで確認できます。
領収書に法人名がなければ、法人成りをしていない個人事業ということです。日本人で法人成りをしていない個人事業主として活動可能なのはPRです。外国人の就労許可は法人と紐付いており、法人名がなければPR以外は違法就労です。
2. 就労許可を確認する
法人名を確認できれば、次に就労許可の確認になります。PRかEPかLOCかになります。DPとS Passは役員にはなれません
PRかEPであればIC (Identity Card: シンガポールの身分証) を確認しましょう。EPには、ICの勤務先が領収書の法人名と一致しているか確認しましょう。EPは、1社目と株式関係にある関連企業の役員(director)に限っては、副業(複数社の兼業)が可能で、その場合にはLOCをMOMが発行します。
LOCはICで確認できないので、LOCの閲覧が必要になります。
3. 職業資格を確認する
例えば、旅行ガイドには就労ビザとは別の業務ライセンスが必要です。
4. URA登録
業務の提供が自宅であれば、URAに自宅への登録がされている必要があります。URA登録を請求しましょう。

上記全てをフリーランスに問い合わせ、回答を得ることは現実的ではないでしょう。できてICの確認ぐらいまででしょう。現実的な対応としては、DPで滞在している人のフリーランス・自営活動には関わらないことです。
EPを取得していないDPでのフリーランス・自営は、まず違法就労です。私は合法に就労されているフリーランス・自営のDPにお会いしたことはありません。


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シンガポールで日本人が合法リモートワークをする3条件~フリーランスは不可~

シンガポールウォッチャーのうにうにです。
最近、日本人コミュニティで急速に広まっているのが「シンガポールに住んでいる外国人が、シンガポール国外と行うリモートワークは合法」というものです。
リモートワークの調査結果をまとめました。
結論から言うと、「シンガポールに住んで、海外とのリモートワークは可能」とのDPへの就労許可特例もありますが、「国外企業の雇用主が必要」です。雇用契約国で社会保障費・年金等の支払いも発生するため、特例を利用できる日本人はまずいないでしょう。(2021年3月21日追記: パンデミックでのリモートワーク活用で、日本雇用を継続しながら、海外就労を認める雇用を少数ですが聞くようになっています)
業務委託契約のフリーランス/個人事業主/自営では、就労許可(EP/PR)が必要です。

※注意:本記事では就労ビザの扱いを中心とします。税は記述の範囲としません。税については、下記リンクの提示にとどめます。

MOMへの問合せと回答

日本人コミュニティ内で広まっているのは、
「MOM(シンガポール労働省)サイトには書いていないが、個人的にMOMに問合せた所、シンガポール人の労働を奪うものでないから、リモートワークは行って良いとの回答を得た」
というものです。これが本当なら、従来は永住権保持者PRであるか、シンガポールに法人を設立して就労ビザ(EP/S Pass)か、DP(扶養ビザ)ならLOC取得がリモートワークには必要と考えられていたのと比べると、劇的な緩和です。
「公開されていない」「個別に問合せると特例をコソッと教えてもらえる」というのがミソです。書かれていないことは証明できないために、不正確な内容が広まっています。
MOMに私が問い合わせをしました。MOMへの問合せは、下記から誰でも行えます。

MOMからの回答を訳します。

EPとS Passホルダーはシンガポール登記企業からジョブオファーが必要で、各就労ビザの基準を満たす必要があります。一般的に、EPとS Passをスポンサーする雇用主のためにのみ、働くことが許されており、収入を増やす追加での仕事は許可されていません。
一方、DPは、EPとS Pass保持者の家族が、シンガポールに同行することができるようにするものです。
DP保持者は、下記条件を全て満たせば、就労ビザ(work pass)なしにリモートワークをすることができます。

  • DP保持者は海外企業に勤務し、自宅から働くこと。かつ、
  • 海外企業はシンガポールに(現地法人などの)存在がないこと。かつ、
  • DP保持者は、シンガポールで顧客に会ってはいけないし、サービスを提供してもいけない。

MOMが提示した3条件の英語原文やさらなる問合せには、上記MOM窓口に直接問い合わせ下さい。

シンガポールで外国人が合法にリモートワークを行うDP特例3条件

EPとS Passは、副業ができません。シンガポールでの就労には、EP/S Pass/LOCなどの就労許可が勤務先ごとに必要ですが、同一人物に複数の就労許可は原則として現在は発行されていません(例外: EP所持者の関連会社でのディレクター)。ですので、EPとS Pass所持者は、就労ビザ申請時に認められた勤務先とは別に、リモートワークの副業はできません。就労許可無しにリモートワークを行えるのは、DPのみの"特例"です。

MOM回答を補足します。
リモートワークとは、「シンガポール以外の外国企業と雇用関係があり、シンガポールで業務を行うが、外国にたいしてサービス提供されるもの」ということになります。
(1) DP所持者は海外企業に勤務し、自宅から働くこと。
MOM原文では working for an overseas company であり、フリーランスや個人事業主や自営ではできませんwork forは雇用関係 (employment) を意味する言葉であり、「Xのために働く」は不正確です。在日本企業との雇用契約では、労働時間次第で各種社会保険(健康保険・年金など)を受けることになります。
なお、この「リモートワーク特例でフリーランスはできないのか」と何人もがMOMに問い合わせていますが、「できる」という回答をもらった人はいません。
また、オフィスを借りられず、知人宅・カフェなどのシンガポール内の出先で仕事ができません。自宅をオフィスとして使うことになるので、URAへの登録が必須です。

(2) 海外企業はシンガポールに(現地法人などの)存在がないこと。
リモートワークであっても、シンガポールに登記されている法人がある企業への勤務は、できません。該当シンガポール法人に正規に雇用されて就労許可をとるように、という意味です。例えば、シンガポールに現地法人があるパナソニックには、日本法人へのリモートワークであってもDP特例は適応できません。シンガポールのパナソニック現地法人から就労ビザを得て、日本法人業務をすることになります。
(3) DP所持者は、シンガポールで顧客に会ってはいけないし、サービスを提供してもいけない。
"製品"の提供はリモートワークでは不可能なので、"サービス"とのみ書かれています。自宅でしか仕事ができないのだから、国内で人に会えませんし、たとえ職場として登録した自宅への訪問を受けても業務で人に会えません。対面だけでなく、電話・スカイプなどビデオ通話も含め、シンガポール在住顧客や見込み顧客、およびシンガポール旅行中の顧客および見込み顧客と会うのは避けましょう。在シンガポールの法人・団体・個人にサービスを提供するなら、それはもはやリモートワークではない、という意味です。

具体的に可能なリモートワークには、

  • IT開発
  • マーケティング
  • デザイナー

などが想定されます。たとえば、夫がシンガポールに駐在し、妻がDPで帯同する。妻はウェブデザイナーとして日本での雇用を継続し、シンガポールから日本に対して就労ビザなしでサービス提供することが許されるということになります。
つまり、フリーランスや個人事業主や自営にDP特例適応が認められておらず、雇用契約が必要になるため、実際に利用可能な人は少数、ということです。現実的に、海外在住者にリモートワークでの雇用を認める勤務先を探すのは大変ですが、以前からの勤務先が認める例を聞いています。
ランサーズ、クラウドワークス、oDeskなどで見つけたリモートワークは、まずDP特例3条件を満たしません。業務委託契約であり、雇用契約が無いからです。

違法就労は止めましょう

リモートワークでの違法就労例

今回、調査して、この記事を書いた2つの理由は、「リモートワークは合法」と主張する人が出てきたことと、「リモートワークは合法と主張した上で、MOMが認めている範囲を超えて、違法就労をしている人がいること」です。下記はDPリモートワークでの違法就労例です。

  • 有償オンラインサロンや、広告収入があるブログなどのネット運営は、できません。 (雇用関係が必要)
  • 雇用契約がないウェブメディア・雑誌への記事提供はできません。(例:PVに比例した報酬を受け取る「Yahoo!ニュース 個人」、原稿料を支払う東洋経済オンラインなど)
  • シンガポールに現地法人がある日経への記事提供はできません。(現地法人から就労ビザの取得が必要)
  • シンガポールのセミナーにパネリスト等として参加することはできません。 (顧客対面の禁止)
  • DPでないEPやS Passが、ビザ取得勤務先以外の業務をリモートワークで行うことはできません。(副業禁止)

「リモートワークの可否をMOMに問合せた所、問題ないと言われた」と主張している人であれば、私と同じ3条件の回答を得ているはずです。それにもかかわらず、違法就労を行っているのであれば、MOMから得たDP特例3条件を誤解しているか、MOM見解が非公開であるために強弁しているかの、どちらかでしょう。

DP特例3条件を丹念に読む

DP特例3条件を読むと「こうすれば合法リモートワークとしてできるのではないか」と気づくことがあります。例えば、

  • 顧客をシンガポール国外居住者に限定すれば、有償オンラインサロンや有償購読サイト運営は可能では?

などです。
上記をMOMに追加で問い合わせました。結論は「(リモートワークではなく)個人事業主にあたり、不可。就労許可をとれ」というものでした。これは、DP特例3条件の(1)での「リモートワークには海外雇用主が必要(フリーランスは不可)」という内容にも合致します。MOMからの回答を訳します。

ビジネスオーナーとして自営を希望するDP所持者にとって、申請すべき正規の就労パスはアントレパスです。アントレパスは、シンガポールでビジネスを運営することを希望する外国人のためにデザインされています。
ビジネスの登記の前に、DP所持者はアントレパスを申請することをアドバイスします。ビジネスの登記ができても、アントレパスの付与を保証するものではないからだ。
アントレパスの情報には、下記リンクを参照して下さい。 http://www.mom.gov.sg/passes-and-permits/entrepass

MOMに新規企業設立でのビザを問い合わせると、EPではなくアントレパス取得を回答されることがあります。「政府認定ベンチャーキャピタルから投資を受けていること」などアントレパスのほうが、大半の人にはEPより条件が厳しいです。現在、アントレパスで滞在している日本人を私は知りません。いずれにせよ、EPやLOC取得ができないのが理由で、DP特例利用を検討している人の選択肢にはならないです。
以上から、趣味の範囲を超えて、アフィリエイト報酬や顧客からの食事・試供品など物品・サービス提供があり就労とみなされるブロガーも、リモートワークではなく個人事業主のため、DP特例3条件ではできません

他の合法化には、誰もが思いつくであろう、フリーランスの業務委託契約ではなく、「実際は案件単位でも、契約社員としてこまめに有期契約を繰り返す」ことで雇用契約に見せかけることは、止めましょう。たとえこういうリスク有る雇用契約を受け入れる企業があったとしても、契約社員との主張に必要な勤怠管理の証明が困難だからです。勤怠管理を整えてまで契約社員と主張するのであれば、MOMとの紛争を覚悟して下さい。
また、日本などで自分・家族・親族・知人名義で法人を設立して、そことの雇用関係を主張するのも、実態がフリーランスなので、MOMとの紛争を覚悟して下さい。MOMが「面倒だからこの件から手を引こう」と思うか「悪質だから再発防止のために一罰百戒で取り上げてプレスリリースを出そう」と思うかは、分かりません。シンガポールの就労許可で、最終判断はMOMです

シンガポールでは報酬なしでも労働にあたる

シンガポールでは、報酬がなくても、趣味・ボランティアではなく、労働と判断される行為があります。代表例は、インターンシップです。シンガポールではインターンシップを含む無償労働にも、外国人は就労ビザ取得が必要です。就労でなく趣味とみなされるためには、報酬が無いことが最低限必要になります。
報酬があれば労働と判断されます。報酬には、金銭以外でも、食事・物品(試供品)提供・サービス(タダ券・割引券・旅行・移動手段)供与が含まれます。
詳細は下記を参照下さい。
uniunichan.hatenablog.com

非公開のDP特例3条件

最後に、念の為ですが付記します。
リモートワークのDP特例3条件はMOMサイトに提示されていません。利用可能者があまりに少ないとしても、情報公開が徹底しているシンガポールでは異例です。
非開示ということは、MOMが予告なく改変・撤廃する可能性があるということです。
リモートワークを検討しているDP保持者は、開始前と、開始後も定期的にMOMにご自身で確認して下さい。


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検証記事:花輪陽子氏「シンガポール人は老後資産に1億円以上が当たり前」は本当か (東洋経済)

シンガポールウォッチャーのうにうにです。
東洋経済オンラインにて「シンガポール人が日本人より超金持ちの理由 老後資産の目標額は1億円以上が当たり前!」という花輪陽子氏の記事が掲載されました。
今回は東洋経済という大きな媒体で、更にアクセスランキングでも1位をとったとのことです。本記事はニューズウィーク日本版ヤフーMSNへの配信もされています。シンガポールへの誤解が定着することを避けるため、東洋経済記事を引用しながら、内容を検証します。

toyokeizai.net

東洋経済記事の検証

花輪陽子氏はシンガポール在住のファイナンシャルプランナーとのことです。名称独占資格の1級ファイナンシャル・プランニング技能士であり、日本の職業能力開発促進法に基づくものなので、海外では資格の影響はありません。シンガポールでは、FPASというNPO団体が行っているCFPというファイナンシャルプランナー資格がありますが、花輪陽子氏はこちらへの言及はありません。なお、業務資格の有無にかかわらず、外国人が当地でビジネスをするのには、ビザ(EPやLOC)など就労資格が必要になります。

シンガポールに公的年金はないのですか?

シンガポールは、 (略) 小さな政府であるため、先進国にかかわらず公的年金がありません

シンガポールに公的年金はあります。
該当記事でも後述されているCPF (Central Provident Fund=中央積立基金) がそれです。国民と永住者は強制加入です。永住権を持たない外国人は、現在は新規加入できません。CPFはシンガポール労働省管轄の公的機関です。CPFには多彩な機能がありますが、

  • 本人と雇用主からの強制貯金
  • 住宅購入等、医療、年金の3つの口座

が特徴です。納付には所得税からの控除もうけられます。CPF自身が「CPFは定年に備えて、安心と信用をもって、多くの働くシンガポール人に包括的な社会保障の貯蓄計画を提供するもの」と説明しています。

記事でも「厚生年金のように」とCPFを表現されているのに、なぜ公的年金でないと判断されたのか理解に苦しみます。

シンガポールの老後には1億2千万円が必要なのですか?

「老後に1億2000万円必要だから」シンガポールの知識層からたびたび聞くフレーズ

シンガポールの"知識層"の定義が本文中で示されていないのですが、記事のタイトルが「老後資産の目標額は1億円以上が当たり前!」と書かれているので、過半数と捉えて良いでしょう。
老後資金の統計は、私が調べた限りでは見当たらなかったのですが、シンガポール政府が示した必要資金のモデルがありました。
シンガポール政府は金融知識の普及のために「マネーセンス」というウェブサイトを作っています。そこでは62歳で、3,500万円(S$43万)の金融資産がモデルとして示されていました。

  • 現在の物価価値で、年140万円 (S$1.8万) を老後に使いたい。
  • 今後のインフレを考慮すると、現在の200万円 (S$2.52万) に該当する。
  • シンガポール人男性の平均余命が83歳。62歳に引退するとする。83-62=21年間にわたって、毎年140万円相当を使うためには、引退時に3,500万円 (S$437,245)が必要になる。
  • MoneySENSE: The MoneySense Guide to Planning for your family's financial future (22ページ)

国民一般が対象の文書ですから、62歳で3,500万円は中間か平均に近い数字と考えて良いでしょう。その根拠となる「一人月額12万円」の妥当性については、後述します。

シンガポールの年金生活者は月に30万円も使うのですか?

シンガポールの老齢者の月間平均支出は、30万円

間違いです。これには政府統計があります。統計での最大支出額の範囲となっている、月間支出が16万円($S2千)以上は、65~74歳でわずか8.0%です(2011年)。統計分類上で最も多いグループは月額4万円~8万円を使う人で37.4%を占めます。
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2011年と若干データが古いのですが、2011年から2016年の物価上昇率は累積でも6%にすぎないので、今でも月間支出が16万円(S$2千)以上の人は1割前後でしょう。これが、マネーセンスの金額の「なぜ老後は月額12万円(S$1,500)でよいのか」という根拠になります。

この金額で十分なのは、シンガポールの持ち家率の高さが貢献しています。日本の持ち家率は全国平均で61.7%(2013年)ですが、シンガポールの国民・永住者の持家率は90.3% (2014年) にもなります。CPFで強制貯金されており、CPFの限られた使用用途の一つが住宅購入であり、シンガポール人は自国に不動産を持つように動機づけがされています。
高齢者は更に持ち家率が高いです。65歳から74歳は、98.2%が持ち家です。住宅ローンが終わっていれば、衣食への費用は大したことがなく、不安は医療費程度になります。

シンガポールでは収入の1/3を積み立てても老後資金に不足するのですか?

若いときから収入の1/3を積み立てていれば、有事のおカネをすべてまかなえるかというとそうではありません。
「インフレに負けない」3%以上で運用する

記事の説明では不正確です。若いときから収入の1/3を積み立てていても、老後資金に困るって、どんな修羅の国なんですか。

CPF以外に老後資金を準備するのが望ましい理由は、CPFは年金以外にも住宅購入・医療に使われることと、積み立て金額に上限があるためです。
CPFは住宅購入・医療・年金の3つの口座があり、口座の積み立て比率は年齢によって異なります。35歳以下では、約6割が住宅購入口座に入り、年金には16%しか入りません。35歳以下では、収入の5%程度しか年金積み立て用の口座に入れていないのです。60歳~65歳になると、住宅口座には約2割しか入らず、年金に15%、約6割は医療口座になります。

CPFの強制貯金は、月収S$6,000以上の収入で打ち止めです(別途ボーナスなどでの積み立てはあり)。つまり、$6,000を超えた収入の人は、老後も類似の生活水準を維持するには、CPF以外での老後資金運用を考える必要があります。日本でも「年金だけで老後資金の大半がまかなえる人」は、限られているのと似た状況です。

余談ですが、シンガポールは税が安い国として知られていますが、国民はそうだとはさほど感じていません。これは月給S$6千(約50万円)までは、雇用主負担分を含めて収入の1/3をCPFに納付するからです。これが、CPF上限の月給S$6千を超えると、一気に負担が楽になります。

おいしいCPF

シンガポールでは昨年のインフレは0.6%でした。2006年から2016年の十年間では、年あたり2.4%です。

CPFは非常にオイシイ制度です。世代間格差を生む日本の賦課方式の年金とは異なり、積立方式です。自分が貯めたものを、老後などのタイミングで自分が受け取るのです。その間は、複利運用が当然されます。ポイントは

  • そこそこ高い金利
  • 政府の元本保証

です。目的によって異なる口座種類や、口座額によって違いますが、利息が2.5%~5%にもなります。私は元本保証でこれよりオイシイ金融商品を世界中に知りません。知っている人がいれば教えてください。
: 住宅購入等に使える普通口座は2.5%、医療口座と年金口座は4%。しかもS$6万までは、プラス1%のボーナス利息があるのです。利息は市場に応じて定期的に見直されていますが、最近はずっとこの値です。

インフレを考慮しても、普通口座であれば元本価値キープ、医療口座と年金口座は貯蓄を増やすことができます。日本の現役世代からは垂涎の制度に見えますが、これでも不満があるシンガポール人がいるのが、驚きです。

シンガポール人はそんなに金融知識が高く、運用益を得ているのですか?

元本保証CPFを止めて投資運用にでたシンガポーリアンの末路

シンガポールのように、自助努力でおカネを準備しなければならない

記事を通して、いかにシンガポール人(知識層)が金融リテラシーに高く、自助努力で老後の運用益を抜け目なく得ているかのように、印象づけられています。これは必ずしも事実ではありません。

CPF運用の王道は元本保証での政府への一任ですが、CPF口座残高が一定額を超えると、認定された金融商品に、リスクを取って個人の判断で投資をできる制度があります。CPFインベストメント・スキーム (CPFIS) といいます。

ところが、政府発表(2016年)では、CPFISでリスクをわざわざとりにいった人は過去10年で45%が損失を出しています。マイナスです。35%の人は、利益を上げていても、CPFであれば保証されていた2.5%未満でした。つまり、8割の人は不要な積極投資をしてCPFであれば得られた収益を逃しています

なお、2015年の単年では、CPFISを2.5%以上の利益が27%、2.5%未満の利益が15%、損失が58%です。2016年の単年では、市場上昇を受けて、78%が2.5%以上、2.5%未満の利益は10%、損失が12%となっています。年金なので上述の長期の10年スパンという発表で判断するのが適切でしょう。



なぜこんな惨状になってしまったのかについて、シンガポール政府は2点を指摘しています。

  1. CPFISの投資に必要な投資マネージャーへの手数料
  2. 市場に熱がある高い時に買い、価格が弱気になると売る平均的な投資家の行動をとるため

ファイナンシャルリテラシー以前の話として、営業のコストはまわりまわって消費者の支払いに含まれるという原理原則があります。シンガポールにおいても、金融商品の街頭キャッチセールスや、営業員との喫茶店での会話を見る機会は多く、この理解は徹底されていると思えません。営業に時間をかけて「説明」され「相談」して買う商品やサービスには、直接的なコンサル費としてではなくても、販売奨励金などで結局は買い手がコストを払っています。キャッチセールスや訪問販売が避けられるのは、それだけの営業コストを買い手が払う必要がある割高商品だからです。
特に金融商品では、投資益を販売会社・運用会社と投資家とで、分割する構造があり、消費者が利益を高めるためには販売会社や運用会社の手数料が少ない商品を選ぶことが有利になる大きな条件です。
日本の金融庁では、「販売手数料等の高低のみで、その商品の良し悪しを評価するものではないが、販売会社においては、販売手数料等の水準が顧客に提供されるサービスの対価として見合ったものか否か、同種の金融商品においてより販売手数料等が低い商品が存在するにもかかわらず販売手数料等が高い方を販売・推奨等していないか」という率直な提言をレポートしています。

CPFは用途が限られているため、個人が自由には使えません。なので、「どうせ年とるまで使えないなら、積極投資にまわすか」という選択なのですが、元本保証で2.5%~5%がとれるのに、わざわざリスクを取りにいってCPFISをしている時点で、ファイナンシャル・リテラシーは本当に大丈夫な人なのか、ということがあるように私には見えます。積極投資をする原資は、CPF納付とは別の所から出せばいいのに、ということです。

投資型の保険に加入(所得控除あり)

間違いです。所得税控除がある保険は、投資型でない生命保険のみです。

CPFISに投資型保険 (ILP) の投資もあり、それへの誤認と思われます。

医療費の自己負担が6割程度

私立病院には政府補助はありません。そのため、請求金額が公立病院より高いこともあり、ミドルクラスで私立病院にかかるには、健康保険への支出を増やす必要があります。家計への負担は大きくなるため、公立病院とその保険を前提にするミドルクラスも一般的です。
公立病院外来では、専門医にかかるのに、補助が50%からです。公立病院入院では、国の補助金が1人部屋なし、4人部屋20%、6人部屋50~65%、8人部屋65~80%。日帰り手術では最大65%の補助を受けられます。
一般医での医療費補助に必要なCHAS加入資格は、世帯員の平均収入が月$1800(14万円)以下という所得制限があります。
いずれも国民の場合です。

つみたてNISAは、定期・定額での積立投資に限定した制度で、年間40万円までの投資枠に対し、その利益が20年間非課税となります。
シンガポール人も、税制の優遇を受けられる口座で運用をして、老後資金を作っています。

そもそも、シンガポールはキャピタルゲイン(資本利得)が非課税の国です。ですので、全ての口座が日本と比べると税制優遇です。
そのシンガポールの環境で、改めて「税制の優遇を受けられる口座」というと、記事にも記載があるSRS (Supplementary Retirement Scheme) があります。SRSでの優遇税制は、SRSで投資した額への所得税からの控除で、利益への税金が非課税になる日本の"積立NISA"とは違います。
また、税のメリットに制限が色々あるため、SRS口座開設数は2016年末でわずかに13万です。「シンガポール人も税制の優遇を受けられる口座で運用をして、老後資金を作っています」と言える数には程遠いです。

なぜシンガポール人は豊かなのか

記事のタイトルは「シンガポール人が日本人より超金持ちの理由」ですが、肝心の超金持ちの理由は記事では明示されていません。「世界一豊か」とも記載がありますが、一人当りGDPで、シンガポールはカタールやルクセンブルグなどに劣っていますが、なぜ「世界一」なのかも明示ありません。
私が過去に、シンガポールと日本の豊かさをGDPで比較した際に、シンガポールは日本に圧勝でも、シンガポールと東京都だとほぼ同じ一人あたりGDPとの結論でした。
uniunichan.hatenablog.com

私からは、シンガポールが豊かである理由として、フローとストックのそれぞれで

  • 共働き
  • 資産インフレ

の2つを指摘します。

フロー: 共稼ぎ

共稼ぎ率
日本 47.6% (2015年)
シンガポール 53.8% (2015年)

シンガポールは日本より7%ぐらいしか数字上では共働き率は高くありません。ところが、シンガポールでは特に出産後もフルタイムで働く女性の比率が高いのです。これが、日本との家計の決定的な差になります。共稼ぎでないと食っていけない経済事情や、外国人住み込みメイドなどが早期職場復帰と共稼ぎを支えています。
uniunichan.hatenablog.com

その結果、

世帯収入中央値 世帯収入平均
日本 428万円 545万8千円 (2016年)
シンガポール 864万円 (月S$9,023) 1152万円 (月S$12,027) (2017年)

と世帯収入が、中央値と平均値で倍以上、シンガポールに突き放されています。
※成人した子どもの親との同居率が高いことと、核家族化の進行が日本よりゆるやかなのが、シンガポールの世帯収入を押し上げる要因になっているのは留意事項です。
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  • シンガポール統計局: Key Household Income Trends, 2017

ストック: 資産インフレ

もう一つが資産インフレです。シンガポール人は働きだして、結婚となると、真っ先に住宅(HDBと呼ばれる公団)の購入を予約します。シンガポールは、社会人になっても、結婚までは親と同居が一般的です。理由は、国土が小さすぎるので交通の便を理由に引っ越す理由がないことと、賃貸が高すぎることです。
家を買うのは、新しい家族のプライバシー確保に加えて、(少なくとも中長期では)不動産は絶対に上昇するという確信がシンガポールにはあるためです。不動産を買うと、買った値段より中古なのに高く売れるのが常識なのです。「新築の家は買った瞬間に、2割値下がりする」と言われる日本とは大違いです。これがシンガポールの持ち家率の高さを支えています。日本のバブル時代のような考えが当地では一般的で、「持ち家 VS 賃貸」論争がある日本人の私からすると「大丈夫か」と不安になります。
シンガポールの不動産指数を掲載します。近年は、政府が過熱防止の為に印紙税を導入し上昇を無理矢理抑えていますが、時々ある経済クラッシュとアジア通貨危機後の低迷を除くと、基本的には右肩上がりです。
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かくして、シンガポールでは、収入を上げ、資産も貯まっていくのです。

海外記事の質と、その向上には

メディアは状況と異なる印象を与えることができます。中途半端に知っている現地関係者も加担することで、「一部真実」なキャッチーでもっともらしい話になり、日本の記事では通用しないような質の海外記事が流通します。事実ならともかく、事実ではないので迷惑です。

フェイクニュースが取りざたされる昨今です。残念ですが、海外在住者から見ると、日本での海外記事には、分析や主張以前であるファクトへの真偽に疑問がつく記事を少なからず見かけます。私がこれまで検証してきた記事にも「シンガポール国立大学の学費は無料」や「日本が戦ってくれて感謝しています」というものがあります。「シンガポール国立大学の学費は無料」の記事も、東洋経済オンラインでした。
uniunichan.hatenablog.com
uniunichan.hatenablog.com

しかし残念ながら、検証記事は、そのきっかけとなった派手な記事と比べると、読まれる件数はわずかです。
シンガポール在住者が書いた今回の記事は、シンガポール関係者を驚かせています。「その国に住んでいるから」だけで記述が正しいとの根拠にならないのは、日本人が日本について書いても正しいとは限らないのと同様です。
今回の東洋経済の記事は事実誤認があります。また、花輪陽子氏の過去の他誌でのシンガポール記事でも、事実誤認を含み関係者を驚かせた記事はあります(日経DUAL)(ダイヤモンド・ザイ)。

改善には、

  • 同業者も認める信頼できる専門家を著者にする
  • それができなければ、せめて情報の出所を編集部が確認する

が有効です。花輪陽子氏のファイナンシャルプランナーとしての著述には私の専門外なのでコメントしませんが、これまでのシンガポール記事は商業媒体のライターとしての適格性を欠いているものがあります。花輪陽子氏の記事にはデータの出所記載がありません。現地の英語文献にあたっている様子も見えません。「シンガポールの老齢者の月間平均支出は、30万円」と記事に書いてあれば、「ソースは?」と赤を入れて筆者につき返すのが編集の仕事のはずですが、本当に東洋経済オンラインは校閲を行っているのか、という疑問も起きます。日本の編集部が海外事情が分からず内容を精査できないのは(百歩譲って)しょうがないとしても、せめて、記事の根拠となる出所は筆者に提出させる、でかなり改善できるはずです。
東洋経済オンラインがメディアの良心として、今回の記事への訂正・削除を行うことを、願っています。

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